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38:カッチコッチステーション

タイトル通り、冬の寒さでカチカチの指をなんとか動かしながらこの文を書いている。


3時間は走っただろうか。
昼間を自宅で自堕落に過ごした罪悪感で、自転車で街に出ねばと思ってしまう。
だが気温はマイナスにもなる寒い日なので、手袋をつけることにした。

この手袋は、少し思い出深い。



伊勢丹メンズ館で、「いちばん短いのを下さい」と言って出してもらったものだ。腕時計を見やすくとの狙いもあるが、ただ長いのが億劫なのだ。

いくつか候補を出してもらったが、決め手にかけて悩んでしまった。

散々店員と話し合って試着を繰り返し、小さい空気穴の点在しているものを選んだ。蒸れたときに救うであろうと信じて。


いざ購入する際に、店員に「実はこれ、ジェームスボンドが映画で使ってたやつなんですよ!」と言われた。

なんで早く言ってくれないのだろう。

それを言ってくれれば即決したのに。男は皆んな、007が好きなんだから。



そして、ボンドガールがいないまま僕は店を後にした。




こんな思い出が浮かぶ手袋を付けて、
いざ夜の帷に消えることにした。





寒い

けど、楽しい。

見るたびに変わる景色と人に、住んで良かったと感じる。


そして、どこか笑顔が街に増えた気がする。


けど、やっぱり寒い。


寒い。


どこが寒いかというと、手だ。


ジェームスボンドの手が寒く痛い。


あのジェームスボンドだぞ。
数々のミッションをこなすエリートと同じ手袋なのに手が寒い。

いやはや、俺の手を温めるというミッションには失敗したのか。






けど、良いんだ。




「いつかこの手で、アッツアツのほっかほかのボンドガールを掴んでみせろ。」


そう、ジェームスボンドは言っているんだ。








もし、どうしても叶わないなら、




木工用ボンドをレンジでチンしますので、何卒宜しくお願いします。