49:グラインドハウス
「モナ王」
仕事帰り、コンビニに寄って帰ることにした。先にレジに並ぶのは、モナ王を1つの持っている同年代の男性。会計を済ませて店を出ると、彼が自転車のハンドル付近で何かしているのが目についた。
どうやら近年のデリバリーの増加に伴い普及した、スマホを固定する器具で何やらしている。
その器具は僕も近しいのを持っているのだがスマホの四隅を固定する際にリンクが伸び縮みする物で、様々な形状に対応できるというものであった。
地図を見ながら走行するのには便利な代物なのだが、彼はここにスマホではなく購入したてのモナ王をなんとか取り付けようとしていた。
その発想があったか、、、。
スマホケースにスマホしか取り付けない自分の発想の貧困さが悲しい。
古来よりスマホケースに固定する器具は自由だ。
何を固定しても良い、しなくても良い。
1番自由なヤツが、スマホケース固定器具なんだ。
そんなことを思い出させてくれた彼は、固定器具と四苦八苦し、
結果、モナ王を固定することが出来なかった。
スマホサイズより大きいと、器具の伸び代が足りなかったみたいだ。
すると、彼がこちらを見てきて
「ああ、やっちままいましたねぇ」
みたいな顔でニッコリ。
まさしく王たる所以の柔和な笑顔であった。
固定できないモナ王を咥えて、ブレーキ音が悲鳴みたいな高音ノイズで駆け抜けていった。
「PayPay」
疲れたので晩御飯はテイクアウトしよう思い、ガラガラの電車で座って揺られていた。
その日は雨が強く、持ちたくない傘の柄を左手で上から抑えて、右手はその上に乗せてスマホで検索する両手を前に出すスタイルであった。
帰路が進むにつれ車内も混み、目の前にガタイの良く布袋のギターみたいな柄のパンツを履いた少し年齢が上の男性が立つことになった。
揺れるたびにその男性の股間が僕の両手に近づくのが気になったが、そのまま料理を検索していた。
しばらく検索し、好みを見つけて決済することにした。支払いは専用ページからPayPayに飛んで行うことが出来るである。
PayPayで支払いをしたことがある人はご存知だと思うが、支払い完了音として「PayPay🎵」と鳴る。レジ前だとコードを読み取りとることが多いのでなんの違和感もないのだが、こういった出先のテイウクアウトで鳴ることにまだ市民権はないと感じている。
案の定、決済したので音が鳴ってしまった。
そのタイミングも悪く、男性の股間が近づいた際に鳴ってしまう。
なにより、布袋のギター柄のパンツが、QRコードに見えなくもない。
「男性の股間を読み込んで決済する」
そんな構図が図らずしも浮かんでしまったのだ。
驚く男性と、はにかむ僕。
冷静と、情熱の間。
何も無かったように電車から降りて、受け取りに向かう。
相変わらず1人なのは不満だが、いつもと違う晩御飯になりそうだ。
「ニキビが治らない」
2023年も半年が過ぎたが、年始に出来たコメカミのニキビがずっと治らない。
何回も薬など塗ったが効果はない。
他にもニキビは出来るが、このコメカミのだけは一向に治る兆しを見せない。
あまりにも治らないので
もう、ウルトラマンのカラータイマーなんじゃないかと思うことにした。
そうすると、少しのトラブルなんて何も思わない。
「ここで変身すれば、スペシウム光線でイチコロよ」
このマインドを得ることが出来たのは大きい。
ただ、道具として置いとくのは嫌なので、恋人みたいなものとして接することにした。
そんなカラータイマーとの同棲から3ヶ月ほど経った際に、2人の仲を切り裂くニューカマーの到来を迎える。
眉間ニキビだ。
ここにできると、ガネーシャとイジられた位置に、よい歳こいてお迎えしてしまった。
同棲のマンネリからか、次の展開を見せたい製作陣からすると、三角関係という展開へのカンフル剤なのだろう。
そして、3人での生活を楽しもうとした際に、ニキビを見た先輩から一言言われた。
「ニキビってできる位置に意味があるのよ。ちなみに眉間の中心にニキビが出来ると、死ぬらしいよ」
とんでもない一言だった。
この科学が発達した令和の時代にも、呪術的な即死ワザがあるなんて。
認めたく無かったので、本当に中心にあるか互いの眉間の頂点を結び、中心を出しノギスという測定器具で計測した。
ちゃんと測ると、0.5mmほど中心からズレている!
業界によってはとんでなく大きい寸法交差だ。
ノギスは暴力的な形状から連想される殴る道具ではなく、ちゃんと測定器具だったんだと再認識し、生きて良いんだという喜びに満ち溢れる。
そして、帰宅していつもより贅沢な食事を取って寝る。至福の時間だ。
爽やかな朝で目覚めて、
3人での共同生活の確認として鏡をを見ると、
眉間ニキビの斜め下にまたニキビができていた。
これは、、、、
どんな意味があるのか、、、?
位置的に、少し下なので散歩してる犬みたいな感覚である。
なにより、柴犬は可愛い。
3人と柴犬との共同生活はまだ続く、
僕のビタミンB2が不足する限り。
はてさて、
グラインドハウスとは、米国で低予算のB級作品を数本する映画館のことである。
敬愛するタランティーノの「デス・プルーフ in グラインドハウス」という作品は、このスタイルを模して作品を製作したらしいが、今回は僕も倣ってここに数話書き落としました。
つまり
普段より1個の話題が弱い、
という予防線なんです。
もうここまで読んだ人は、
読み切ってるはずだから遅いけどね!!おほほほほほは!!!!!!!
〜完〜