山での出会い
姉と甥っ子と息子を連れていざ登山へ!
甥っ子は初挑戦にもかかわらず、どんどん先に進んでいく。
1つ年上の息子は登山と人生の先輩として
「荷物持っててあげようか?」なんて余裕を出そうとしていた。
すれ違う登山上級者たちは足取りも軽く、私たちをどんどん追い抜かしていく。
たまに家族連れもいたが、ほとんどが高齢者だ。
山はすれ違う時に必ず挨拶をするというマナーがあるから、知らない人に話しかけられたら即通報という今の時代の子供たちには良い勉強になるはずだ!
下山途中の元気なおばあちゃんが
「ご褒美ないと大変でしょ!頑張ってね!!」
とアメを子供たちに渡してくれた。
また4合目を過ぎたあたりで、
今度は後ろから来たおじいちゃんに
「おぉ!偉いな!家でゲームなんかしてるより山の方がいいよな!!」
なんて話かけられたりした。
凄い勢いで登っていくおじいちゃんの後を追うように甥っ子がペースを上げだした。
姉と私はついていけず、どんどん甥っ子とおじいちゃんが遠のいていく。
このままでは見失うので息子に甥っ子を追いかけてと頼んだ。
ヨロヨロしながら進むと5合目の休憩スペースでみんな待っていてくれた。
おじいちゃんが
「俺に着いて来れたらご褒美にお菓子あげるって言ったんだ!大したもんだ!お母さんたちにはあげないからな!」
とガハハと笑い、子供たちに羊かんを1本ずつくれた。
おじいちゃんは80歳でこの山に100回登ったことがあるらしい。
息子はあんこが嫌いだから羊かんは食べられないけど、頂上で食べるんだと一丁前におじいちゃんに気をつかっていた。
おじいちゃんは軽快な足取りで先に進んでいったけど、山のレジェンドに出会えた喜びと、そのレジェンドから貰った羊かんがよほど嬉しかったのか大切に握りしめ、お守りにするんだ!と下山の時もずっと手放さなかった。
知らない人からのお菓子あげるから着いておいでというフレーズと着いていくという行動は本来完全にアウトだ。
山で出会ったおじいちゃんは年齢からは想像もできないほどの鍛え抜かれた脚力を持ち、その長年継続して努力しなければ手に入れられない健康と素敵な人柄は、尊敬と信頼に値するという圧倒的な説得力があった。
「それにしても、この山で1番体力ないの私たちじゃない?」
という姉の発言には笑うしかなかった。