不完全さの魅力/村上春樹作品より
本を音声として読んでくれるサービスに『Audible』というものがある。月額1,500円で12万冊以上の電子本がある。読み放題だ。というか聞き放題。
音声で読本してくれるものは、これまでAmazonの電子本をスマホの音声読み上げ機能でヘッドホンから聞くというスタイルをとっていたけど、スマホの音声読み上げ機能は機械音であり、音読と訓読が判別出来ない箇所もあり、聴き難かった。
この『Audible』は声優が音読してくれるので、誤読もなく自然に聞ける。
そしてこのサービスに、今年から僕の好きな作家の村上春樹作品がリリースされ出したので大いに利用している。
20代の頃最も影響を受けた作家であり、とくに彼が描く長編作品はどれも素晴らしいと思う。今読み返したり、このオーディブルで聞いても色褪せていない。
僕が移動の際にヘッドホンを付けているのは、音読書をしていると思って貰えばいい。
僕がこの村上作品から一番影響を受けたのは「不完全さの魅力」だ。
村上作品を読んだ人は、どっぷり村上ワールドにハマるか、もしくは「全然わかんない」と二度と彼の本を手に取らないかにはっきり分かれる。
例えるならインドへ旅行に行った人が、インドという土地にハマり何度となく訪れるか、二度と行きたくないと分かれるのに似ている。
「全然分からない」という人は、おそらく村上作品の一番の特徴である不完全さ満載ゆえだろうと思う。ストーリーも勧善懲悪みたいなはっきりした結末も少ないからだろうと思う。村上作品は読み方により、そのストーリーがどのようにも捉えることが出来るように仕上がっている。
村上春樹自身も自分の作品解説を全くしないで、「受け取り方は読者の自由です」と言い切っている。
そこが村上ワールドの魅力でもあり、分からない人には理解出来ない部分なのだと思う。
そして村上作品に登場する人物も、ほとんどが不完全なキャラクターが多い。幼少期のトラウマを抱えて病んでいる。父親母親からの抑圧で屈折している。セックス依存。身体障害者。狂気を常に抱いている。
それらが高じて、すぐ自殺する登場人物もやたら多い。
キャラクターだけでなく、ストーリーもミステリー的に引き込んで、その謎を置きっぱなしにする。謎解きが全くない。などなど。
そういう不完全さがあるので、作品自体の質が落ちているか言えば、発行部数が示すように圧倒的に売れている。『ノルウェーの森』などは1000万部も売れている。
こういう人物設定とストーリーテリングにより、僕は「不完全さ」が魅力となる、ということを大いに学んだ。
こういうストーリーテリングをする作家に庵野秀明氏がいる。
彼の作品群からも、ファンを「裏切る魅力」というものを学んだ。
庵野秀明氏の表作である「エバンゲリオン」なども、ファンを最初から終わりまでその不完全さで裏切り続けた。彼の作品は新作が出る度に、その謎の解明がされていない結末でネットは大炎上する。毎回そうだった。
それで人気が落ちるかといえば、全く逆だった。
次に謎が分かるのではないかと、当初のファンは最後の最後までついてきた。そして最終的には感動した。
完全な人間など誰もいないのだけど、この「不完全さ」が出て魅力的な人物となる人もいる。
僕は仕事で女性をプロデュースする事も多いのだけど、そういう時すべていい処だけを表現するのではなく、その人の一見マイナスと思えるところもクローズアップして表現するように演出する。
そうする事で、その人の「不完全さ」が表現される。人間の不完全さは上手く表現すれば、その人の魅力を増幅させる効果がある。
あの人、凄く仕事が出来るように見えるけどこんな所で失敗するなんて、なんかお茶目だね。みたいに愛嬌と捉えられたりすれば、その人がグッと身近に感じるという効果を成す。
自分の欠点を感じ、その欠点をなんとか修正しようとする人は多い。そして出来ないことに悩む。僕から言わせれば、そんなことはナンセンスだ。時間の無駄だ。
欠点などは分かっても気にすることなく、自分の長所だけを伸ばすことを考えればいい。それが人生において成功する一番の近道だ。
女性だけど料理が下手と思い、料理教室に嫌々通っている。それも全く無駄なので、すぐに止めるべきだ。自分は料理が出来ないので、料理が得意な彼氏を見つければいいだけの話だ。(現に勝部美穂ちゃんがそうしている。正しい選択だ)
学生の頃から周囲に気の付かないウェイトレスだと言われ、今も一つ事しか出来ずよく周囲をイラっとさせる、と申し訳なさそうに言うちはるちゃんだけど、それも少しも気にすることはない。
逆を言えば、誰よりも集中して物事に当たることが出来る能力があるということだ。それを今後も活かせばいい。
彼女が何かを始めても習得するのが結構早いのは、その持ち合わせている集中力の効果だと僕は思っている。
「不完全さの魅力」は、完全さと不完全さのブレ幅が大きければ大きいほど魅力となる。
だからただ「不完全さ」だけがあってもいけない。その不完全さを有無を言わさず凌駕する「完全さ」を備えなければ「不完全さの魅力」は出てこない。
つまり、自分の長所と思える箇所を圧倒的に伸ばすことだ。
何か一つの知識、技能、能力にかけては他を圧倒する「何か」を持っていなくてはいけない。
それが「不完全さの魅力」の本質だ。
ではそれを得る為に何をすればいいかと言えば、簡単だ。
ただただ自分の好きな事を、とことん追求することだ。
その自分が好きなことを圧倒的に突き詰めた時、人生は大変楽しくなる。
GOOD LUCK!(^。^)y-.。o○