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和裁職人の仕立て代について

着物を仕立てる時に、呉服屋さんや悉皆屋さんに
払っている仕立て代のうち、
どれくらいが職人さんの手元にわたると思いますか?

これは、職人である私も、長年の疑問でした。
今でこそ、ネットで仕立て代を表記している呉服屋さんや
和裁学校(仕立て所)さんがありますが
昔々は、表記するのはタブーかのように
【仕立て代についてはお問合せください】というところが多かったのです。
今でも、そのようなところは存在しますね。

表記しないのがなぜなのか分かりませんが
職人に上代がわかるのを嫌っているのか
取引先によって仕立て代を変えているのか。
後者は、まぁ、あるかと思います。
多数の仕事をいただけるところは割引したりするのでね。

そこで、呉服屋さんや、卒業した学校から
仕立て物をいただいている職人仲間に
自分がもらっている仕立て代が
上代のどれくらいか知っているかを聞いてみました。

驚くことに、半数以上が上代を知らないのです。

その理由として、仕立て物をいただく時に
契約書のような物を交わしていないからだと思われます。
初めてのお店に、自分が仕立てた物を持って行って、
じゃ、仕事をしてもらおうかな、となった時に
特に細かな契約書を交わすことなく、反物をもらい、仕事を始めます。
出来上がった仕事を持っていくと、仕立て代をいただけて
結果、上代はわからず、自分が仕立てたことのある着物の
職人に支払われる仕立て代だけを知っている、という状況になるのかと。

百貨店直営の呉服屋さんは、しっかりしていて
契約書をちゃんと交わしているようです。

さて、職人さんに渡る仕立て代が
上代のどれくらいかというと、本当にまちまちで
6割というのが一番多かったです。
7〜9割もいます。
5割以下というのも存在するし
なんと、1/3以下というところもあるんです…

だから、職人は、契約しているところの上代を知るべきだし
教えてくれないところの仕事は、この先考えていかないとダメだと思います。
呉服屋さんや学校の仕立て所も、職人にはきちんと上代を伝えてください。

職人が、きちんと上代を知って、交渉する力を持ち
独立して食べていける収入を得ることができれば
これから先、和裁職人が消えていなくなることを
少しは防げるにではないかと考えています。

私が、仕立て代を大幅に値上げした時に思ったことは
私より若い職人さんの迷惑にならない値段にしなければならないということでした。
若い職人さんが、食べていけなければ、この仕事は続けられません。
仕立て代を上げた時
「訪問着などは25,000円が妥当。それ以上だと、仕立てに出せないよね」
というようなことを
着物ユーザーが集うクローズの場で書かれたこともあります。
確かに、高いと仕立てに出せなくなるという気持ちもわかります。
だけど、その人たちの楽しい着物の趣味のために
職人が食べていけない金額で仕事をしないといけないのか…
着物を売って笑っている人、着て笑っている人たちの下で
実は泣いている職人がいるのではないか…
そんなことを考えて悶々とした日々を過ごしました。
訪問着25,000円くらいの値段で良いだろうと思う人は
職人は女性であって、内職程度に仕事をしているんだろう
という、少なからず偏見の目があるのではないかと思います。

事実、呉服屋の店主さんの中にも
家で仕事をして1ヶ月10万くらいになったらパートより良いよね〜
という発言をする方もいらっしゃいました。
和裁学校のホームページにも
内職としては高額です‥なんて紹介するところもあります。
確かに、内職としては高額かもしれませんが
安い仕立て代のところだと、パートよりも収入は低くなります。

好きなことが縫うことなので、安くても良いとか
外に働きに出るのは嫌なので、安くても良いとか
そういう職人さんがいても、構いませんが
そこから一歩飛び出したいと思っている職人さんがいるとしたら
ぜひ、呉服屋さんと交渉する勇気、安い仕事を断る勇気を持ってください。

変わりたい!と思っている職人さんは、
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