和裁職人の時給について考える。
安易に、時給計算する仕事ではないのです。
ですが、そうでもしないと
内職扱いされている現実が分からない気がするので
あくまでも、それを知ってもらうため、です。
田舎では特に、女の内職扱いにされている感じがします。
和裁の仕事の時給について。
⬇️YouTubeで単衣綿麻の着物が出来上がるまでを撮っているのですが
縫っているところの動画だけで23時間くらいあります。
説明しながら縫っているので、地直しや仕上げ含めず
1枚縫うのに23時間かかるとします。
香川県の最低賃金918円で計算すると21,114円!
単衣綿麻で、この金額で仕事をしている職人さんはどれくらいかな。
この金額を職人に支払っている呉服屋さんはどれくらいかな。
この発言は、おそらく
お客様にも呉服屋さんにも目障りな発言だと思います。
それでも発言するのは
呉服屋さん、お客様、職人の意識改革になればなぁという勝手な思いからです。
例えば、美容院でカットすると1時間弱で4,000円くらい。
浴衣23時間で23,000円だとして
高いから安くしてって言われたら顔では笑ってますが…ねぇ。
早く縫えば良いのでは?と言われますが
早く縫えるのは若いうちで、年々集中力が落ちて時間がかかるようになります。
家庭や子供を持てば夜中しか集中できる時間が取れないということもあります。
技術や技能が評価される仕事なのに
歳を重ねるにつれてその技術が意味を持たない仕事ってなんなんだろうと
最近よく思います…ただの愚痴です。
別の問題ですが
和裁職人の子供がなかなか保育園に入れてもらえない話もありますが
これはまた今度。
職人にわたる金額がどれくらい?
今、浴衣や綿麻着物を10,000〜15,000円くらいで受けている
呉服屋さんや仕立て所、悉皆屋さんがあるとします。
その中から、職人にわたる金額がどれくらいかご存知ですか?
身近な和裁職人さんに聞いてみたところ
職人自身も知らないというのが最も多く6割。
つまり、お客様がお店に支払っている金額を知らないということです。
お客様の支払う金額のおおよそ60%をもらっている職人が2割。
中には半分以下の職人もいます。
きちんとしたところは、お店と契約書を交わし
上代の何割支払いますという取り決めや
お店がお客様に請求している金額を職人に提示しているところもあります。
しかし、そういう呉服屋、仕立て所、悉皆屋は
ごくごくわずかで、珍しいかもしれません。
実は、曖昧なやり取りで仕事を受けている職人さんが多いということです。
「私がお願いしているお店は、比較的安い値段だわ〜」
という方もいるかと思います。
実際に、田舎の方は安く、国内の職人さんに支払われている額も少ないです。
ただ、カラクリが存在している場合もあります。
海外に仕立てをお願いしている場合です。
これも致し方なしの時代なので、問題ないですし、
それどころか、日本の着物を仕立ててくれるなんて
かえってありがたいと思います。
お客様は、国内の職人が仕立ててると思っていて
お店の人も「国内の仕立て所に出してる」といいます。
確かに国内の仕立て所に出しています。
でも、出した仕立て所がその先国内の職人のところへお願いするか
海外かは、お店の人も知らないというわけです。
セールなどで、込み込み価格!という時に
あまりにも安い場合はおそらく海外仕立てです。
浴衣や木綿、綿麻に対して、高額な仕立ては請求しにくいので
今後も海外やミシン仕立てが増えてくる(きている)と思います。
年金をもらいながら、安い仕立て代で構わない
という高齢の職人さんが引退し始めたら
国内の職人さんはどっと減るかもしれないです。
今後、海外仕立ての料金も上がってくる可能性があるので
そうなった時に、この業界は、どうしていくのかが、気になるところです。
中国からベトナムに工場を移したように、他の国に移していくのかなぁ。
どうして辞めないの?
そんなに安い仕立て代なら、和裁職人辞めれば?
というのが一番多い意見ですよね。
私もそう思います。
みんな文句言いながら、なんで続けてるんだろう、とも思います。
おそらく、やってられないわ!と思った子たちは
早々に道を変えています。
残り続けているのは
根気がある人か
この仕事が好きでたまらないか
他の仕事が向いていないか
事情があって今の働き方がベスト
そんな理由かな。
私は25年前に和裁学校の仕立て部門から独立し
呉服屋さんから仕事をいただくようになり
18年前には呉服屋さんからも完全独立し
HPを作り個人のお客様からの依頼を受け始めました。
なので、私自身が決めたお仕立て代です。
歳を重ねるにつれ
下に続く若い職人の迷惑にならないような金額にしなければならない
と考えるようになりました。
昨年、50歳を目前に、自分のことや若い職人のことをさらに考えるようになり
現状を知ってもらいたくなりました。
そして、職人1本の人生をやめる決意をしました。
和裁の道、和裁を広めるための教室の道
人としての生き直しの道として別の仕事を初めています。
やるなら50歳がタイムリミットだろうということで。
別の仕事といっても、派遣社員です。
和裁の仕事があるので
そういうところも、派遣元、派遣先ともに理解してくれています。
一方、月に縫える枚数が減ってしまったので
お客様には長くお待たせして申し訳ないのですが
それでも依頼してくださる方々には、感謝でいっぱいです🙇♀️
職人さんに向けて
お店と交渉する時は、上代の2〜3割引で交渉している職人が多いです。
お店に対してどうして割り引くかというと
お店側がお客様とやりとりして細かな寸法を決めてくれたり
お渡し前の梱包など様々なことをしていただけるからです。
とはいえ、上代を知らない場合、そういう交渉もできないわけです。
そして、上代を知らない職人が、意外に多いのが残念なところです。
上代を知っていて、半額以下という職人もいるのが悲しい現実…
ちなみに、頑なに上代を教えてくれない店もあるそうです。
そういう時には、断る勇気を持ってください。
それは、自分の後ろに続く若い職人のためでもあります。
あなたの技術は、身につけるまでに何年かかりましたか?
その仕事を続けることにプライドを持つことは大切ですが
間違ったプライドになっていませんか?
外でバイトをした方が稼げる仕立て代にしていませんか?
今現在、海外縫製の金額よりも、
下の値段で仕事を受けている職人さんが、すでにいます。
これを読んでくださっているあなたかもしれません。
今は、ネットで仕立て代を提示しているお店もあるので
職人は、海外縫製の仕立て代、国内の仕立て代を自分で調べて
お店と交渉する勇気を持って欲しいと思います。
鼻で笑われたり、何様?という態度を取られることもあるんです…
色々聞いて知っています。
だけど、どうか頑張って!!!
以下もご一読いただけると嬉しいです!