見出し画像

Outer Wilds Mods The Outsiderの感想※ネタばれあり

The Outsiderをクリアした。こんなにも強い主張を通し切ったMODは久しぶりだったと思う。ともかくどうにか最後まで遊ばせていただいた。

※文章を書く上で、FriendやDaturaを便宜上「彼」と呼ぶことがあります。
※ネタばれあり、クリアした方向けです。

01

 The Outsiderは、本編の隙間からこぼれ落ちた物語だ。ループを知り、過去を追いかけ、Nomaiの意思を引き継ぐ、正当な主人公の物語。22分の裏側で私たちが知ることになるのは、何もできない無力な彼とその友人の足跡である。

 実は、途中までプレイしたものの少し時間があいてしまった。探査艇を壊すのが嫌だったからだ。自分の不器用さで何度も探査艇を墜落させてきたにもかかわらず、赤くけたたましいサイレンが鳴り響くたびに、急いで緊急ポッドから脱出しては心にもやの壁を作り、縮こまって爆風を防ぐ。慣れ親しんだ探査艇を壊すことは、物語を壊すことに似ていた。

02

 思えば昔、モンスターハンターというゲームで、草食動物を殺すことを迫られた時に似ている。倒れた動物から「剥ぎ取り」を行い、お肉を「上手に焼けました」とする。この一連の動作は最初のチュートリアルに存在した。まるで「こんな簡単な所作ができなければ、あなたはこの先やっていけませんよ」と扉の前で門主に言われている気がしたのだ。

 しかし、時間がたつにつれこの気持ちは薄らぐ。数々のハンティングを経験していくうちに、草食動物はモンスターになり、肉となる。彼らは最初から、毎回同じ時間、同じ場所に存在し、そっと景観の一部となり、誰かの冒険のために、殺されるための自然なタイミングを待っているのである。ゲームとはそういうものだ。

 一連の流れを受け入れるまでに、ある程度の時間が必要だったし、いつか慣れることも私は知っていた。幸いにも手順化された破壊が用意されていたことを教えてもらい、私はその自動装置にのるだけでよかった。つまり、そうまでしないと、臆病な私は探査艇を壊せないのだ。

03

 しかし、そればかりでは話は進まない。「これはゲームなので、どうしてもこの作業が必要で……」と自分に言い聞かせてどうにか先へと進む。今まで何度も通り過ぎた死骸と共に、馴染みの手順で瞼を閉じる。 目線の高さまで埋め尽くされたスクロールの間を抜けると、先にいたのはシカフクロウことFriendである。彼もほかの者と同じく模擬現実の中にいたのだ。

 Friendは私の知らない一人称で話し始めた。今まで、囚人とそれ以外という区分で私たちはやってきた。表情や言語など、種族を語る記号は必要がなかったからだ。Daturaと過ごした年月が、新たなコミュニケーションの手段を獲得させたのだった。翻訳機からあふれるような言葉によって、あやふやだった物事の輪郭が次々とはっきりしていく。
「入るときは扉を見てはいけないんだ」
与えられた個性に向かい合い、何度も話を聞く。地表の建物、反響、観測所……その手つきはSolanumを思い出させた。

 Friendに教えられた通り観測所に入り、私たちはことの顛末を知る。願いも叶わず、Daturaは星系からの脱出は出来なかった。星の危機を知り、友人たちに連絡をとりはしたものの、彼の想像以上に関係は悪化していた。自分の夢を追い続ける身勝手さが、失ったものの大きさに気付かせることを遅らせた。ホールの一番奥で壁際にもたれかかるような一組の骨を見る。無力さに押しつぶされかけているようにも見えた。

04

 Friendという名を受け入れたシカフクロウ、後悔ばかりの観測所、そして月の子どもの存在が、制作者の意図を浮き彫りにさせる。私にとってThe Outsiderは刺激が強い。作り手の意志が端々から漏れ出てくる。異種族に出会わなければ、南極に家をたてなければ、違和感に気付かなければ……闇のイバラを超えて、彼らの追想を知っても、彗星は止まらないし、どうすることもできない。結局、誰にとっても知らなくていい話は、プレイヤーだけが知ることのできる、もう一つの希望になったのだ。

 世界の最期を知るということは、なんて恐ろしいことだろう。観測所の最奥でひとり、後悔に向き合いながら必死に言葉を残そうとする彼の姿を想像する。いつだって私たちは、誰かと分かち合いたくて文章を書くのだ。
 小さな死を迎えた部外者を思い出しながら、手元に書かれた自分の文章を眺めた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?