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不妊治療という人生経験


本日は不妊治療についてお話していこうと思います。

私は2015年に入籍して2021年に妊娠が発覚し、2022年に双子を出産しました。

当時は妊活を積極的には行っておらず、自然に出来るまで待とうと思っていました。

だって、自然に出来ると思っていたから。

誰もが思うことですよね、まずは自然に任せる。
でも、まさか妊娠という奇跡が自分にとって立ちはだかる壁となり
こんなにも子どもについて悩んで自分のことを嫌いになってしまうなんて思いもしませんでした。


1.不妊治療への第一歩


そもそも不妊症とは何か?どんな状況のことを言うのか?

「生殖年令の男女が妊娠を希望し、ある期間避妊事すること無く性交渉をおこなっているのにもかかわらず、妊娠の成立を見ない場合を不妊といい、妊娠を希望し医学的治療を必要とする場合」と定義づけている。

日本産科婦人科学会編集の産科婦人科用語集では不妊症を、このように定義づけているそうです。

このある期間とは、1年程度と私はクリニックで教わり、不妊症の現実を突きつけられました。

当時、不妊治療という言葉は知っていたけれど、私もまだ20代ということもあり周りに不妊治療を経験している友達は1人もいませんでした。

そもそも結婚している友達が少なかったと思います。

まず、自分を不妊症と認めるのも時間がかかるし信じたくない現実なんですよね。それに、たまたまタイミングが悪いだけかもしれないし、本当に何か原因があっての不妊症なのかもしれないし。

そう考え出してからクリニックに行くまでに時間がかかる人がほとんどだと思いますが、ここは割り切って少しでも早くクリニックに行くべきだったと後々思いました。

でもね、なかなか踏み出せないんですよねぇ。

2.不妊治療と仕事の両立


そんな状況でも自分を突き動かす思いはただ一つ
「大好きな人との子どもが欲しい」ただそれだけなんです。

いろんな思いが交差しても、一周回って辿り着くのはいつもこの思いでした。

心に決めてクリニックに通い始めるも、当時は会社員として働きながらクリニックへ通っていました。

経験者の方は分かると思いますが、自分の体の状態によって来院する日が決まるので必ず仕事が休みの日にクリニックに行けるとは限らないんですよね。

例えば、排卵チェックの為の来院で、「23日に来院して下さい。」と言われ
「24日が仕事が休みなので24日でもいいですか?」と言うと
「それだと既に排卵している可能性があるのでそれでもよければ。」と言われてしまいます。

始めはほとんどタイミング法から始めるので、来院する日にちは指定されることが多いのです。

タイミング法は、クリニックで行う最初の不妊治療。「妊娠しやすい性交のタイミングを医師が指導する」方法です。

そんなこと言われたら、「じゃあ23日に来ます…」と言うしかない。
だって、もしかしたら今週期で妊娠するかもしれないし、そのチャンスを逃したくないから。

私が働いていた会社はある程度理解のある会社で、女性がもっと活躍できるようにといろんな制度が設けられていたので、クリニックに行く為に早退や有休を使って仕事を抜け出してクリニックへ行くこともありました。

でも、私は当時役職をいただいていて責任者の立場だったので、仕事を抜ける度に押し寄せる罪悪感と常に戦っていました。

1人人員が抜けたところで会社は回ります。けれど、忙しくて休憩にも入れない後輩を差し置いて早退する自分を許せなくなることもありました。

結果、私は8年間務めた会社を退職し、妊活に専念しようと決断したのです。

3.運命の出会いがご縁をもたらす


会社を退職してからはしばらくお休みをいただき、改めて就職先を探しましたが今まで通勤時間に1時間半かかっていたので、今後は時間と心に余裕を持たせる為に家の近くでパートとして働くことを決めました。

そんな時に奇跡が訪れたのです。


自宅から車で20分の距離にあるご夫婦で営む街のでんきやさん。
本当に直感だったんです。写真で見ると、お店もやっていることもでんきやさんらしくない。(誉め言葉です)

応募内容や仕事内容を見ていくうちにどんどん引き込まれていき、家電量販店に勤めていた私は、ここで今までの経験や知識を活かしたい!と思い、すぐ応募ボタンを押していました。

話は急速に進み、迎えた面接当日。
久々の面接で緊張して汗が止まらなくなり、ティッシュを箱ごと渡されたのを今でも覚えています(笑)

そこで聞かれたのが
「差し支えなければ前職を辞めた理由を聞かせてほしい。」という言葉。

迷ったけれど素直に「妊活です」と、ありのまま伝えました。

妊活なんて言っちゃったし引かれるかな。
ずっとそういう目で見られちゃうかな。

一瞬いろんなことが頭をよぎりましたが、思いもしなかった言葉が返ってきたんです。

「私達夫婦は不妊治療を経験してね。養子縁組をして子どもを授かったんだよ。だから、妊活の面でも何かサポートやアドバイス出来ることがあると思うから何でも聞いてね。」と。

思いもよらぬ言葉が返ってきたので、私は思考が追い付かず、頭の中はフリーズして言葉を失ってしまいました。

同じ経験をした人達がこんなにも近くにいたことは今までありませんでした。
そう、でんきやさんのご夫婦は不妊治療を経験した結果子どもはできなかったけれど、養子縁組をして子どもを授かったという。

この時は思っていなかったけれど、不妊治療を始めてなかなか妊娠に至らなかった時、この素敵な家族を知っているからこそ最終的には養子縁組をしてでも子どもを授かりたいと強く思いました。

血の繋がりなんてなくても、家族になれる。

私がパート先で過ごした時間は、その言葉の本当の意味を深く実感できた大切な時間になりました。

4.4つのステップとポイント


私は、パート先のご夫婦の後押しもあって一度休んでいた不妊治療を改めて本格的に再開することになり、クリニックは以前奥様が通っていて奥様のお知り合いも通っていたと評判の浅田レディースクリニックでお世話になりました。

通い始めてからの正直な感想は…凄い、の一言。
今まで通ったクリニックといい意味で全く違う!

これまでに私は転院を2度繰り返していますが、転院後の浅田はクリニック側が、「全体妊娠させるぞ!」という思いが強く伝わってくる環境だったし、何より患者さんのことを第一に考えて運営しているんだと実感しました。

勿論無茶な治療を提案してくるようなことはなかったけど、培養士さんとの個別面談などもあり、一人一人の体や状態に合った治療法を提案してくれていると感じました。

そして、ここからポイントになるのが治療の費用

当時は保険が効かなかったのですべて自費です。
なんと、初診に検査や内診で6万円もかかりました。

高額になると予め聞いていたが明細を見た時はつい笑ってしまった…

この先は治療内容によって費用は変わってくるけれど、不妊治療は主に4つのステップに分かれています。

浅田レディースクリニックのウェブサイトを参考に図解を作成しています。

私はここに書いてあるステップを全て経験しました。

ステップが上がるにつれて費用も高くなり、より精度が高い生殖医療になります。

そして、まさか自分が体外・顕微受精まで経験するとは思ってもいなかったです。

タイミング法


【費用】数万円以内程度

このステップは、正直クリニックへ行かずに自己流でもチャレンジ出来ます。

今はおりものシートについたおりものに反応してシートが検査薬のような仕組みになっていて、反応が出たらタイミングを取る時期だよ!と教えてくれるものもあります。

あと、市販で売っている排卵検査薬もあります。妊娠検査薬と一緒で尿をかけて反応の濃さでタイミングを取る時期を判断するものです。

自己流のこれらの方法で上手くいかなければ、クリニックで内診をして貰いいつ頃排卵するのかをエコーで確実に見定めたり、排卵に合わせて排卵誘発剤を注射したりします。

あとは、基礎体温を測るのも一つの方法ですが、私はかなりのストレスになってしまったので途中で辞めましたが、転院後の浅田レディースクリニックでは基礎体温は測らなくていいと言われたので、とても気が楽になりました。

人工受精


【費用】2万円~3万円程度 ※処置内容で変動します

人工受精も自己流でチャレンジすることも出来ますが、自己流と大きく違うのは精子の状態です。

クリニックで行う場合は、持ち込んだ精子の処理を行い状態を見て子宮内に入れるので、精子の状態によっては妊娠が見込めないと判断し、人工授精を延期することもあります。

ただ処理をすることで、運動率などが良くなることもあるので、処理後の結果を踏まえて人工受精を予定通り行うかどうかが医師の判断で決まります。

私も1度だけありました。主人の精子の状態があまりよろしくないと言われましたが、男性もデリケートなので精子の状態はその都度変わったりします。

自己流だとそのような状態をみて判断することは出来ないので、回数を重ねるという点ではタイミング法と変わらないのですが、自己流だと確実に妊娠へ繋げる為の手段ではないかもしれません。

しかし、私生活が忙しくタイミングを取れないという夫婦にはいい方法かもしれません。

体外受精と顕微受精


どちらも採卵→受精→移植という過程は変わりません。
ここの過程の中の受精方法に違いがあります。

・体外の場合
卵子1つに対して複数の精子をふりかけ自然と受精するのを待つ方法。
・顕微の場合
卵子1つに対して状態の良い精子1つをガラス管を用いて直接注入して受精させる方法。

この違いになります。

どちらがいいかと言われると決めれませんが、より確実な受精方法としては顕微授精をおすすめするそうです。

私は採卵後に、体外と顕微の両方法を試したとのことでした。
(受精方法については培養士さんの判断で決められている)

ただ、このステップにあがると費用が比べ物にならないくらい増えます。

・採卵 40万~60万程度
・受精 10万~20万程度
・移植 20万程度

あくまで概算ですので参考程度に。
上記は自費の場合なので、保険適用される場合はもう少し低くなると思います。

私は原因不明の不妊症でしたが、体外・顕微受精は、原因があったとしてもなかったとしても最終的に辿り着くステップになります。

そして私は不妊に繋がる原因はなかったものの、AMHというホルモンの数値が低かったのを理由に人工受精をスキップして体外・顕微授精へのステップアップを提案されました。

AMHとは?
アンチ・ミューラリアン・ホルモンは、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、血液中にあるこの値を調べることで、卵巣内にどれくらいの卵子が残っているかの卵巣予備能の目安になります。卵子が残り少ないようであれば、早めに体外受精や顕微授精などをする決断の判断材料になります。

不妊症の基本検査でわかること|コラム|浅田レディースクリニック|愛知県名古屋市・春日井市の不妊治療・体外受精

この数値は年々減っていくそうで、私は当時20代後半でAMHの数値は40代の基準値と変わらないくらいでした。

よってこれが決め手となり、残りの少ない卵子を確実に受精させる為に人工受精をスキップしてのステップアップとなりました。

ただ、ここで注意したいのは、このAMHの数値は直接不妊に繋がる原因ではなく要因であるということです。

5. 長い旅路の結末


結論、私は採卵1回、受精卵7個(採卵11個のうち正常受精卵が7個全て初期杯で凍結)、移植4回の過程を終えて、双子を妊娠、出産することが出来ました。

3回の移植を終えて妊娠に至らず、4回目に向けての診察時に医師から「次は2個戻してみますか?」と提案がありました。

要は確立を上げる為の手段なのですが、結果双子を妊娠する可能性も高くなります。

多胎となると妊娠時は母体への負担が大きく、出産後は育児もかなりの負担になると聞かされていたので、始めは原則1個戻しという説明を受けていました。

急な提案に私は驚き、一旦回答は自宅へ持ち帰り主人に相談しました。
主人は迷う暇もなく、「2個戻そう!」と(笑)

さすがに移植4回目となり、わたしも慣れてきたせいか
「次ダメだったら養子縁組について考えなきゃな~」とお気楽に考えていて、保健所にも養子縁組の面談をしに行っていたんですよね。

やっぱり金銭面でかなりの負担になっていたので、残っている受精卵を全部戻してダメだったら一旦妊活はお休みしようと決めていたんです。

なので4回目の移植は半分諦めモードで、あまり気負いせずクリニックに行ったせいなのか…
妊娠するために行動していたものの、今まで1度も反応が出た妊娠検査薬を見たことがなかったので…

陽性の検査薬を見たときは喜びよりも驚きが勝ってしまいました。

内診でやっと双子かどうかが分かるのですが、エコーには素人が見てもハッキリ分かる2つの胎嚢が映っていて、その時初めて喜びを嚙み締めました。

咄嗟に手を胸に当て、私の体、妊娠出来たんだ…と。

そして、一時は切迫早産が20週前後の時に一週間程入院したこともあったのですが、出産前の管理入院はせず予定日まで安静に過ごすことができ、37周1日で計画帝王切開にて無事双子を出産しました。

今でもハッキリ思い出せるし、忘れたくない出産の瞬間。

最初に息子が出てきて、健康状態も良好だったのですぐ私の隣に来てくれたあの時を今でも鮮明に思い出せます。

「やっと会えたね…」と息子に対して初めての言葉をかけ、奇跡の出会いに涙が止まらなかったです。

次に出てきた娘は羊水が少し多く、一過性多呼吸の症状があった為少し処置に時間がかかりましたが、娘も私の隣に来てくれました。

本当に、2人いたんだ…
双子を出産した人って、ほとんどの人がこう思うみたいです。

その後双子は別室で待つ主人とご対面して、娘だけNICUに入り息子は一般産科へ移動しました。

そしてその間、助産師さんは私の涙を拭いてくれることもなく、私は涙を流しながら競馬実況を聴くというカオスな状態でした。

事前に手術室で音楽が流せると聞いていたので、入院前日に大きいおなかを抱えながら大好きな競馬実況をせっせとCDに焼いて持参していたんです。

実際、生まれるまではすぐなんですけど、生まれた後の処置に時間がかかるのでその間のお楽しみとして用意していたんです。

普通は誕生日関連の音楽を流す人が多いみたいなんですけど、執刀してくれた先生や助産師さん達には、「競馬実況流す人はなかなかいないよねぇ~」と言われ、新たに伝説を残せたことに達成感を得られた様な気分になり、私の貴重な双子出産は幕を閉じました。

6.不妊治療を終えた今、心に残るもの


不妊治療を始めるタイミングは人それぞれです。

多くの方が、まずは自然な妊娠を目指すと思います。その後さまざまな情報を得ながら治療の選択肢を考え始めます。

不妊治療は、妊娠を望む人にとって大切な手段の一つですが、必ずしも唯一の選択肢ではありません。自然に妊娠するという道もあれば、パート先のご家族のように養子縁組で我が子を迎えるなどの選択肢もあります。

それぞれの家族が、自分たちの望む形に向かって最善の選択をすることが大切です。

治療には時間と努力とお金が必要であり、頑張ったからといって必ずしも良い結果が伴うものではありません。しかし、自分の気持ちを見つめ直し、時間をかけてパートナーと話し合い、自分達の気持ちに素直になりながら自分達のペースで進むことが大切です。

そして、パートナーと話し合う点で大事な論点は、「いつまで治療を行うのか」だと思っています。

私も、一旦凍結受精卵がなくなるまで、と決めてから気持ちがだいぶ楽になりました。

終わりのないゴールについてとても悩んでいましたが、
一旦ここまででいい、ここまで頑張ってみよう!と気持ちを切り替えることで少しだけポジティブになれた気がします。

妊娠出来るまでは終わりのないトンネルをずっと歩き続けなければなりません。それだけでもストレスを感じ、体に影響してしまうものです。

もちろん中には「出来るまでやる」と言う人もいます。
それはそれで間違っているとは思いませんが、先ほども書いたように時間と努力とお金が必要になってきます。

一時的なゴールについては、個々の家庭の事情や思いによって様々なので、しっかりパートナーと話し合うこともおすすめします。


別に悪いことじゃないんです、不妊治療って。
どうしても悪く捉えてしまう人の方が多いと思うんですけど…

子どもを作る為に、正しい手段を選んで何が悪いんでしょうか?
出来にくいなら仕方ない。何事でもそうですが、ダメだったなら違う手段を探してみてもいいと思います。

最後に、私が不妊治療を通して一番感動したことがあります。
それは、生殖医療の素晴らしさです。

私は治療を通して、生殖医療の進歩と可能性を学ぶことができました。

医療の力によって、妊娠の可能性が広がるということは不妊症である私達の大きな希望に繋がっていました。
同時に、医師や培養士さんの専門的なサポートがどれほど支えになるかも実感しました。

生殖医療は、不妊症である私に夢と希望を与えてくれた一つの選択肢だと改めて感じました。

この事に関しては、結果的に妊娠出来なかったとしても同じことが言えると胸を張って言えます。

本当に治療中に感じた私の素直な気持ちです。


どうか、一人でも多くの方が治療をして妊娠出産できますように。
不妊症で悩んでいる方が、不妊治療という選択肢を知ってくれますように。

心の底から願っております。



7.あとがき


かなり長くなってしまい気づけば7,000文字突入していました。

誰かに読んでほしい、という気持ちももちろんありますが、何より不妊治療についての気持ちや経験をどこかに書き記しておきたかったという思いが強くありました。

自分にとっては今までの人生経験でとても大切なことを学んだ期間だったし、何より不妊治療をただ辛いだけの思い出として自分の中で残しておきたくなかったです。

そういう気持ちで書いていました。

出産をした後に、プライベートのInstagramアカウントで不妊治療をしていたことを打ち明けてみたんです。

あまり関心がないかなと思ったものの、思いの外友達から連絡が来て、逆に嬉しい言葉を沢山いただいてしまいました。

中には、
「生理不順だし妊娠出来るか不安だったけど、治療のこと聞いて勇気貰った」
「自分も実は不妊治療をしていた」
などの連絡を貰って、言っていないだけでみんな悩んでいるんだと改めて実感しました。

だから、私の経験を知って貰い誰かの選択肢が増えるのなら、それはこの上ない喜びです。

できればこの先、不妊治療関係でサポートできるお仕事があれば…と思っていますが、なかなか難しいですね。

でもいつか実現させてみたいです。


もしかしたら、この記事の中には誰かを傷付けてしまう文章や言葉があったかもしれません。そのように捉えてしまった方がいらっしゃったら、申し訳ございません。

でも、これが私の経験した不妊治療の全てであり思いです。


私が全身全霊を捧げ経験した不妊治療が、誰かの役に立ちますように。


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