杉本正毅

私は糖尿病臨床を専門とする内科医です。ナラティヴ・アプローチと出会い、病い体験や病いの意味を尊重した糖尿病診療をめざし研鑽中です。主な著書「医師と栄養士と患者のためのカーボカウンティング実践ガイド」「2型糖尿病のためのカーボカウント実践ガイド」「糖尿病でもおいしく食べる」など。

杉本正毅

私は糖尿病臨床を専門とする内科医です。ナラティヴ・アプローチと出会い、病い体験や病いの意味を尊重した糖尿病診療をめざし研鑽中です。主な著書「医師と栄養士と患者のためのカーボカウンティング実践ガイド」「2型糖尿病のためのカーボカウント実践ガイド」「糖尿病でもおいしく食べる」など。

最近の記事

誤った自己責任論について

11/09に開催された「市民公開シンポジウム2024」の中から「第3部:総合討論」部分の1時間の動画を皆さんと共有したいと思います。文章の最後に動画共有のURLを記載しています。 今回のシンポジウムの内容は非常に素晴らしかったので、ひとりでも多くの医療専門職、糖尿病当事者に視聴していただきたいと思います。とても味わい深い議論が展開されていますので、通勤途中の電車の中でも良いので繰り返し、ご視聴頂けたら幸いです。 ■誤った自己責任論について 僕は「糖尿病関連スティグマの本

    • シンポジウムのリハーサルを行いました!

      今日は3連休の2日目。 今日はパネリスト6人が顔を合わせて、リハーサルを行いました。この1ヶ月間、忙しく準備に追われてきましたが、あと数日で解放されます。もうひと頑張りです。 ルーテル教会の牧師であると同時にグリーフケアの指導者でもある大柴譲治さんには、我々専門家がどのような姿勢で病いをもって生きる方に相対していけば良いのかについてお話し頂きます。この他、東京医科大学で医療人類学や倫理学の教鞭を執っておられる倉田 誠さん、1型当事者であると同時に臨床心理学の准教授で、臨床心

      • 市民公開シンポジウム2週間前の心境

        Peatixのグループフォロワーへ向けたメッセージを共有させて頂きます。 「生活習慣病を死語にする会」のフォロワーの皆さまへ MBLのポストシーズンが盛り上がっていますね。リーグ優勝をかけて行われたLAドジャース対NYメッツの第5戦は追い詰められたメッツ打線が奮起して勝利しました。大量失点を許したドジャースですが、終始メッツ打線に押されながらも6点取ったことは次の試合に繋がる闘いとなりました。なんとか次戦で決めて欲しいと思います。 前回の投稿からちょうど3週間が経ちましたの

        • 市民公開シンポジウムの進捗状況について

          Peatixの「生活習慣病を死語にする会」のグループフォロワーさんたちに以下のメッセージを送りましたので、Noteの読者さんとも共有させて頂きたいと思います。 「生活習慣病を死語にする会」のフォロワーの皆さま イベント告知ページを立ち上げてから3週間経ちましたので、今回の企画が生まれるまでの経緯を振り返ってみたいと思います。 今回の企画は当初、著書を読んで、今回のシンポジウムにおいて中心的な役割を担って頂こうと思っていた方(若い文化系教授)に「僕は研究者なので、文字で表

          健康における自己責任論について考えてみよう!

          ■市民公開シンポジウム2024のイベント告知ページを公開しました 私たち「生活習慣病を死語にする会」は毎年市民公開シンポジウムを開催してきました。そして今年もようやく11月9日に6人のパネリストが集って、開催する準備が整いました。メインテーマは「不健康をスティグマ化する自己責任論を乗り越えるための声を結集する」としました。年初からパネリストの人選を始め、良い本と出会ったら、その著者の連絡先を調べて、シンポジウムへの協力を働きかけてみる。そんなことの繰り返しです。中には「私は

          健康における自己責任論について考えてみよう!

          プレ告知:市民公開シンポジウム2024

          「生活習慣病を死語にする会」の代表をしている杉本正毅です。今年も11月9日(土)に市民公開シンポジウムを開催する準備が整いましたので、今日はごく手短に今回のシンポジウムの狙いや意義についてご紹介したいと思います。 今年のシンポジウムのテーマは以下のようにちょっと責めたテーマとしました。 「不健康をスティグマ化する自己責任論を乗り越えるための声を結集する」 ■シンポジウムがめざすもの 2023年9月、日本糖尿病協会および糖尿病学会アドボカシー委員会は糖尿病呼称変更として“ダ

          プレ告知:市民公開シンポジウム2024

          こんな糖尿病の診察があってもイイ!?

          日本看護協会出版会の連載 あそび に掲載された細野知子さんとのインタビュー記事(糖尿病に練り込まれた「日常」)をご紹介します。私の診療スタイル、診療風景を大変巧みに表現して下さいました。こんな糖尿病診療があったら良いな?と思って下さる方もおられると思います。 皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思います。

          こんな糖尿病の診察があってもイイ!?

          あなたにとって診察室(主治医)はホームですか?それともアウェイ?

          ■患者さんにとって、ホームの診察室とは?アウェイの診察室とは? 第67回日本糖尿病学会が5月17〜19日まで開催された。今回初めての試みとして、会長特別企画「糖尿病と共に生きる人々の声を聞く」(https://site2.convention.co.jp/67jds/special.html)が が開催された。専門医や糖尿病ケアのエキスパートたちに混ざって、糖尿病をもつ人たちの参加が認められ、糖尿病を持ちながら生活している当事者がその体験を語り、多くの医療専門職はそれに聴

          あなたにとって診察室(主治医)はホームですか?それともアウェイ?

          患者さんとの『ダイアベティス』についての対話

          昨日の外来で出会った75才の女性患者さんとの会話です。 Pt「DM患者は偏見や差別を受けるそうですね」 Dr「どこかにそんな記事がありましたか?」 Pt「昨日の読売新聞にそんな記事が出ていました」 Dr「Aさんは偏見や差別を感じていないんでしょう?」 Pt「あたしもそういう経験ありますヨ」 Dr「ほゥ、どんな経験ですか?」 Pt「うちは主人がDMでインスリンを打ってるでしょ。だから、そんな主人の話を誰かにするでしょう。そうすると、贅沢病に罹ったんだね」って言われますヨ。世間

          患者さんとの『ダイアベティス』についての対話

          ”存在自体がスティグマ”をどう伝える

          日記のように今日の出来事を伝えるポストがあってもイイかなということで、今日は思いつくまま書きます。 ■ミーティングで感じた事 18:00から来春開催予定のスティグマ関連ウェビナーについてY先生とメーカー担当者とzoomミーティングをしました。いつもながらメーカー色が一切ないウェビナーを企画してくださる由、感謝に耐えませんね。 僕が想うことはスティグマの理解が医療専門職の間にまだまだ浸透していないこと。どうやって多くの医療専門職にスティグマ理解してもらうか?ということです。

          ”存在自体がスティグマ”をどう伝える

          健康格差の現実と雑談外来

          ■健康管理は自己責任という考え方に対する疑問 近年、健康の社会的決定要因(SDH)の重要性が叫ばれている。政府が健康増進の施策を行っても、頑張れる人もいれば、頑張れない人もいる。政府はどうしても自助努力(インセンティブ)を誘導する施策を行いがちだ。でもそうした呼びかけに積極的に応える人たちはみんな自主的な健康行動に積極的な人たちばかりで、その結果、ますます健康格差は広がってしまう。 ■不健康をスティグマ化する社会 「不健康をスティグマ化する社会」の実例は沢山あるけれど、

          健康格差の現実と雑談外来

          減量治療中の患者さんとの診察室での哲学的な対話

          減量治療中の女性との対話は「食欲をどう考えるか」「お腹がすいたときの間食をどう受け止めるか」といった、とても認識論的な対話が展開されることが多い。僕の場合、そうした禅問答のような対話は50才前後の女性に多いような気がする。 事例紹介 事例1:空腹時の間食に罪悪感を感じてしまう女性 昼食と夕食の間隔が長いある女性はお腹が空いても間食することにはある種の罪悪感があり、ずっと我慢していた。栄養士から臨床経過も良いのだから、そういうときには軽くスナックを摂った方が良いと勧められ、

          減量治療中の患者さんとの診察室での哲学的な対話

          血糖管理目標値をめぐる患者さんとの対話

          ■はじめに 患者さんからA1c目標値について質問されたらどう答えますか? クリニカル・イナーシャ(clinical inertia)に陥らず、患者さんとタイムリーに適切な治療強化を行っていくための対話方法について、ある事例を通して考えたいと思います。 対話の内容、患者背景は事実を損なわない程度にデフォルメしています。 ■症例 症例:60代男性、会社経営 家族歴:親族にインスリン使用者が2人おられる 診断から12年目。当初はA1c6%台であったが、4年目以降から7%台。

          血糖管理目標値をめぐる患者さんとの対話

          対話を促進する外来カルテの書き方

          ■「否定的な体験」を「肯定的な体験」に書き換えること〜 ナラティヴな診療において、患者さんの語りをどのように聴き、それを患者さんの目の前でどのように言語化して書き記すかということはとても重要です。このテーマについて、きちんと話そうとすると30分くらい、文字で説明するとかなりの長文となりそうですが、今日はなるべく短くエッセンスだけ書いてみます。 ■ポイントは ・患者さんになるべく自由に語ってもらう。 ・医師はあなたの話を、こんな風に聞きましたよということを、患者さんの目の

          対話を促進する外来カルテの書き方

          書評『病いと暮らす』2型糖尿病である人々との経験、著者 細野知子

          書評『病いと暮らす』2型糖尿病である人々との経験、著者 細野知子 このたびは細野さんからご著書を献本頂くという幸運に恵まれました。本日読了したので、本書を読んだ感想を思いつくまま書いてみたいと思います。 細野さんの病棟看護師体験から始まり、修士課程におけるご研究、その後10年近くを経た後の博士課程におけるご研究をまとめた本著は、細野さんがDM当事者と向き合い、恩師からの指導を受けながら、1歩1歩DMケアに対する考えを深めていかれた過程が丁寧に描かれていて、読み応えのある内容

          書評『病いと暮らす』2型糖尿病である人々との経験、著者 細野知子

          パネリストたちの自己紹介が素晴らしかった

          市民公開シンポジウム当日まであと6日間。 本日、市民公開シンポジウム2023のリハーサルを行いました。 パネリストたちの自己紹介が素晴らしかった 専門家パネリスト6名、当事者パネリスト3名、それに座長を引き受けていただく予定の鈴木先生が加わり、計10名がZoom画面上に集まりました。今日はすべてのパネリストにとって初対面であったにもかかわらず、それぞれがとても心のこもった自己紹介をして下さいました。 そこで、各パネリストの自己紹介をまとめてみました(不正確な聴き取りによ

          パネリストたちの自己紹介が素晴らしかった