ジャンパー膝を経験して
武術太極拳には跳躍動作が多く、その着地の衝撃も大きいため膝に多くの負荷がかかります。
そのため多くの選手が膝に故障を抱え、パフォーマンスに支障をきたしてしまいます。
自分も17歳~21歳くらいまでジャンパー膝に悩まされていました。
今回は自分が過去にジャンパー膝を経験して感じたことやどうやって克服したかを述べていきます。
ジャンパー膝になった経緯
自分がジャンパー膝になったのは17歳の頃、自選難度競技という種目に移行して直ぐのときです。
難度動作の練習をしていく中で慢性的に発症していきました。
難度動作には跳躍動作やバランスを重視する平衡動作があり、特に跳躍動作は踏み切りや着地の際に大きく足に負荷がかかります。
自分は気づいたときには、右膝を少し曲げて体重をかけるだけで痛みが出て歩くのも不自由になることがよくありました。
ジャンパー膝の痛みを緩和するサポーターもつけて練習していましたが、一時的な気休めでしかなく、練習後に激しい痛みを感じることも多かったです。
そのようにサポーターをつけることが当たり前になる練習を続けていくうちに、それを付けていた右足が左足よりも明らかに細くなっていました。おそらく筋肉ではなくサポーターに頼って動いていた影響です。
当然そのようなコンディションでは大会も上手くいくはずがなく、散々な成績を残してしまいました。
その大会での失敗から、先ずはジャンパー膝を克服することを決めました。
ジャンパー膝の克服
結果から述べると、ジャンパー膝はトレーニングによって足の筋肉を取り戻すことで克服しました。
その具体的な内容は片足スクワットやバーベルスクワットなどです。
しかし今思えばリスクのある治し方をしていたと思います。
当時は特にトレーニングや身体の知識があったわけではなく、多少がむしゃらにやっていました。
たまにトレーニング中に痛みがあっても続けてやっていましたが、そのような方法は決して推奨できません。
実際にそのような慢性的なケガを治す過程では、専門のトレーナーや医師などと相談しながら治していくことをお勧めします。
後に自分もトレーニングを見直す際には、先輩選手が通っていた専門のトレーナーから正しいフォームなどを教わりました。
そのように半年間~一年間ほどトレーニングを続けていくうちにしだいに膝の痛みが減ってきて、サポーターを全くしなくても動けるようになりました。
25歳の現在は、大会前にオーバーワークをして身体に疲労がたまると、たまに膝などが痛むこともありますが、コンディションを整えられれば比較的すぐに治ります。
やり直せるなら
ジャンパー膝で苦しむ選手は多くいると思います。
自分のそういった過去を振り返って、当時どうすれば最適だったかといくつか思うことがあります。
先ず初めから正しいトレーニングの知識を身に着けて跳躍練習にのぞむべきでした。怪我をする前からもトレーニングはやっていましたが、見よう見まねでやっていたにすぎず、跳躍練習に必要な筋力などを補うことはできてなかったです。
次に跳躍の着地のフォームを正しく身に着けて練習を行うべきでした。
跳躍の着地にはある程度決まった形があります。それを初めから知り、身に着けていれば下手な着地でケガを悪化させず、また着地の成功率も初めからあがっていたと思います。
先輩の選手や専門のトレーナーにもっと早くからそのようなことを聞いておけばよかったです。
ジャンパー膝を経て
ジャンパー膝になった経験は色々なことを教えてくれました。
失敗した大会の悔しさ、先輩に助けを求める勇気、専門トレーナーの知識の偉大さ、身体の仕組み、跳躍の着地の重要性など、本当に多くのことを学びました。
特に失敗した大会では大きな悔しさを抱え、武術太極拳でのキャリアにも影響し取り戻しのきかないものでした。
ただ自分は単純に負けず嫌いなので目標に向き直ることで、怪我を克服できました。
自分はこのジャンパー膝以降、特に大きな怪我をしていませんが、今現在もそうした怪我で悩んでいる人は多くいると思います。
しかし、よく言われることですが、怪我などを経験してからその人の真価が発揮されるのではないでしょうか。
陸上競技で有名な為末大さんは自身の著書の中で以下のように述べています。
怪我は本当に辛いが、一段階上のステージに上がる機会でもある。好調時に自分と向き合うことは難しいが、怪我の時期は自分の弱さに正面から向き合うことができ、自己理解の素晴らしい助けになる。怪我の時期に、選手の本当の力は試されるし、また鍛えられる。競技者の真贋はこのときに分かれるのだと思う。
ー 為末大『ウィニング・アローン 自己理解のパフォーマンス論』プレジデント社 ー
自分もこの怪我で色々と悔しい思いをするまでは、辛いことに対して「何とかなるだろう」と甘い考えを持っていました。しかしそういった楽な考え方に逃げていた自分の弱さを怪我を通して痛感し、向き合うことができたと思います。
そうした経験に意義を無理矢理にでも見出すことで将来につながり、前に進んでいけると思います。
今この文章を書き残すことが出来るのも、その経験があったからこそです。
武術太極拳のような演武種目では、自己理解が技術向上に必要な要素の一つでもあるのではないでしょうか。
まさにピンチはチャンス。そういう思いで怪我に向き合っていきたいし、皆にもそう思ってほしいです。