カンラバ2019

2019.09.22_KANSAI LOVERS 2019(アルカラ)

台風が来ると思っていた。直撃ではなくともレインコート着用で多雨の中、参戦するのだと。昨年はじめてロックフェスに参戦した私は、早くも野外の洗礼を浴びようとしていた。
新幹線の中からどっちつかずの空模様を眺める。大阪はきっと雨だ。そう思い込んでいた。
しかし会場に着くと驚きの日差し。長袖Tシャツにブーツ着用の私は、唖然としながら行き交う色とりどりのバンドTシャツ姿の群衆に紛れた。瞬間、確信した。

「今日はアツい!」

お目当てのアルカラまでは、ほとんどがはじめましてのバンドたち。ロックビギナーの私はこのバンドたちが気になりました。

「近所迷惑」という意味のNEIGHBORS COMPLAIN。確かにこのオシャレサウンドは家事の手が止まってしまうかも?きっといい意味で迷惑なバンド。
続いてドラマストア。とてつもなく甘酸っぱくて青春メロ。音に導かれるがまま天気の良好さも増し、日照りの最高潮は彼らの手に。
DENIMS登場時には陽も頃合い。横揺れの楽曲たちとゆったりモード。台風に振り回されるのはもうごめんだ。ご機嫌な空模様と過ごせた1日。会場は安堵感で包まれていた。

さて、会場後方ではJOYSOUNDとコラボした『カラオケブース』が設けられており、さながら観客たちの小さなライブステージ。転換中に歌声を披露するので、一時も耳が音楽から離れない。
アルカラのリハ中には<癇癪玉のお宮ちゃん>が歌われる場面があり、稲村さん(Vo)が手にしていた電子バイオリンを弾き出す。他メンバーたちも一斉に加わり、1度限りのオリジナル生音源演奏に湧く観客。粋な計らいと瞬発力に脱帽した。
ライブ本編は<アブノーマルが足りない><チクショー>。12月リリースのアルバムより<誘惑メヌエット><瞬間 瞬間 瞬間>。これぞ!と、これから!の期待を同時に満たす楽曲をたたみかけ、スピーディーに会場の熱気を煽る。
そして、ツイッターで話題に上っていたが「あなたたちが前へ進む勇気があるから、音楽が背中を押す役割を果たせます(意訳)」というMC。この言葉を聞いて「だから音楽が嫌になったのか」と気づいた。そして音楽は人々にとってそういう存在だということを思い出し、1年間のモヤモヤが吹き飛んだ。
私は音楽に関わるのが嫌になった時期に、最後の思い出作りにと出かけたフェスでアルカラに出会っている。今日のこの瞬間のために出会ったのかと思うと、胸が熱くなった。
ラストの1曲、奇行師は何を仕掛けるのか。稲村さんは「明日はお彼岸だから」とポツリつぶやき<秘密基地>を歌い始めた。意外すぎたが、思い当たった。
今年4月、音楽プロデューサーの松原裕さんが旅立った。彼の為に歌っているのだろうか、先ほどまでギラギラしていた稲村さんの視線はいつの間に訪れた暗夜を静かに見つめていた。その隣には大きく体を反らし天に歌う下上さん(Ba)
いつなくなるかわからない大切な人との瞬間に感謝し続けること。そんなことを言われた気がした。今の自分にとって、すべてのシーンに大事なものが詰まった鮮やかなステージだった。

イベントは次のバンドでラストを迎えるが、今の感情を噛みしめたく会場を後にした。ベンチに座って一呼吸。歩みを止めた意味はあった。
関西に育てられたバンドたちの演奏を聴き、シンプルに「やっぱり音楽がいいな」と思えたのは大きな収穫だった。大阪へ来た甲斐があった。
「前に進めるのは、前を向いて音を鳴らしてくれるバンドがいるからだ」。
この1年を肯定できるきっかけをくれた『KANSAI LOVERS』、そしてアルカラに大きな感謝と拍手を送りたい。

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■SET LIST(アルカラ)
―リハ―
・夢見る少女でいたい
・癇癪玉のお宮ちゃん(Violin JOYSOUND mix←勝手に命名)
~SE<箱>~
1.アブノーマルが足りない
2.チクショー
3.誘惑メヌエット
4.瞬間 瞬間 瞬間
5.キャッチーを科学する
6.秘密基地

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