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心がしなない生き方

数年ぶりに渋谷へ行って「この環境にずっといたらお金ないと心がしぬな」と思った。

知り合いの都内に家がある学生のコが「遊ぶお金が全然足りない」と言っていた意味がやっとわかった。ここで遊ぶことに慣れてしまったらお金は足りなくなる。
田舎育ちの私は少しコワイと思ってしまった。若いうちからお金を使う遊びに慣れていたら大人になったらどうなってしまうのだ。この考え方に私もトシをとったなと感じるがほんとうにそう思う。

学生でも遊ぶのにお金が必要なのは理解できるが、課金すればするほど刺激的で楽しいことが簡単にできるのが都会のいいところでもありコワイところでもあると思うのだ。
服、靴、化粧品、タピオカやスイーツなど話題のおいしいもの、キャラクターやアイドルなど様々なグッズ、ライブやイベントなど盛りだくさんで、その快楽を知ったらもうやめられないだろう。
たくさんバイトできるくらい体力があるか家が裕福で外交的なコだったら楽しく過ごせるかもしれないが、私のように体力がなく中流家庭のヲタク気質の人間には生きづらい環境なのかもしれない。

私は書店に行くのにも車かバスに乗らないといけないような千葉県内の田舎で育ったので家での娯楽に親しんできた。漫画、本、音楽、インターネットがあればいくらでも時間が溶けていったし、偏頭痛持ちなのでよく昼寝もした。

県内の大学に進学して電車通学になり定期もあるので都内へも行きやすくなったが結局ほとんど行かずに終わった。楽しいことは好きだが、人混みと騒音が苦手で朝の通勤ラッシュの電車に乗るとストレスのせいかよくお腹を壊した。疲れがたまると頭痛も出るので学生時代もよく家で過ごし、バイト前に少しでも時間があれば一度家に帰って昼寝をした。地味な学生時代だったが私の体質にも性格にも合った過ごし方だったと思う。

こんな私だが絵画や写真を見るのが好きなので1、2ヶ月に1度は都内へ展示を見に行く。先日、渋谷へ行ったのは幡野広志さんの写真展を見るためだった。
スクランブルスクエアができてから初めて行ったのであの建物をちらっと見上げてしまったし、展示があった渋谷パルコもきれいになっていて驚いたが冷静さを装った。ここで田舎者だとバレたら何かの勧誘の人や占いたい人が寄ってきて面倒なことになるのは知っている。

展示は素晴らしく、幡野さんご本人にお会いすることもできて著書を買ってサインもいただいた。
実は渋谷に向かっている時は「久々に都内まで出てきたし展示をもうひとつくらい見るか大型書店をぶらぶらしようかな」と思っていたのだが、写真展を見終わったらなんだか疲れてしまって好きなパン屋さんでクロワッサンなどを買ってさっさと帰ってきてしまった。渋谷にいたのは1時間半くらいだろうか。
東京駅まで出て始発の総武線快速を待ち、座って千葉まで帰った。もっと疲れていたらグリーン車に乗っていたかもしれない。

都会は便利で楽しいことがたくさんあるが、私はちょっと疲れてしまう。近頃、都内へ行こうと思えばいつでも行ける千葉に住んでいてよかったなと思うことがよくある。

田舎に住んでいてもお金がないと暮らせないのは事実だが、まわりに何もないので娯楽のためにあまりお金を使わなくてもいいのは利点だ。
私は静かに家で過ごすことが好きでコーヒーを飲みながらTwitterを見たり本を読むだけで楽しめてしまうタイプなので田舎暮らしが向いている。好きな本を読んでいると脳内で映像化できるので家にいながら国境も時空も飛び越えてどこへでも行けてしまうので読書も立派な娯楽だ。好きな映画を見ていると自然と作品に入り込んで傍観者になったり脇役になってしまうこともある。想像力が豊かな方なのだと思う。

遊ぶお金が足りないと言っていた学生のコも本を読むと言っていたが、私が好きな本はほとんど読んでいなかった。たくさん読んでいておすすめの本も教えてもらったが題名も内容もひとつも覚えていない。びっくりするくらい本の趣味が合わなかったみたいだし、たぶん彼女も私が読んでいる本とか趣味に興味なかったのだろうな。
一回り以上年が離れていて育った環境も違うし体質や価値観、好きなものも違うのだから合わなくても仕方ないよな。

渋谷に行ってきた翌日、買ってきたクロワッサンを軽くトーストして朝食にした。このクロワッサンは家の近くでは買えないし、ゴッホの絵も気になる展示もここでは見られないが私はこの「適度な田舎」の暮らしが気に入っている。
都会での暮らしに憧れていた時期もあるが、もし実現していたらストレスで毎日お腹を下したり頭痛で寝込んでいたかもしれない。

私はたぶん、たまに都会で遊べる程度のお金があれば心はしなない。頻繁に都会に行く方がしんでしまいそうだ。
生き方は人それぞれだな。

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真
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