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国策である10兆円大学ファンドの利益で大学の研究費をサポートする運用成果は?(科学技術振興機構 喜田昌和氏/Morning satellite Oct.2023)

世界トップレベルの研究を目指す大学を国が支援する国際卓越研究大学のはじめての候補に東北大学が選ばれた。

この制度は政府が創設した10兆円大学ファンドの運用益で、大学の研究基盤を強化を後押しするものである。

欧米の大学と比べても巨額の規模のファンドであり、毎年4.5%程度の運用利回りを目指し、得た3000億円を選ばれた大学に配分する。

しかし、初年度の運用実績は、604億円の赤字となり、ファンド運用を担う科学技術振興機構 運用担当理事である喜田氏に意見を頂いた。

2022年度から運用が始まり、2023年度が10兆円規模としては初年度であったが、トータルリターンとしては、600億円のマイナスであった。

内訳として、その実現利益としてインカムも積み上げながら、配当や確定した損益が740億円程度のプラスであった。一方、含み損(評価損益)として1,260億円のマイナスを出した。

この剰余金の実現部分を着実に積み上げながら、今後トータルパフォーマンスを上げていくことがミッションと理解している。

目標リターンは、大学への支援(配分)が3%、そこに長期の物価上昇率の見通しを加味し、合計で4.5%程度が求められている。

運用ポートフォリオの初年度は、55%は債券、株式は約17%に抑えている。理由としては自己資金の割合が低く、リスクを過剰に取らない運用を心がけているためである。

しかし、そのリスクを抑えた資産配分が、昨年の運用実績のマイナスにつながったとの指摘がある。最終的に、2031年度までに国が定めたグローバル株式65%、グローバル債券35%と言う基本ポートフォリオに近づけていくとしている。

さらに、日本株式への投資、企業への貸付、不動産などオルタナティブへの投資も増やしていく方向性である。理由としては、組入効果として、資産収益の源泉が分散されること、そして一定程度の高いリターンを得られることを期待している。

しかし、流動性がないアセットとなり、上場株や債券のようにすぐに売却できない流動性の無さがあるため、キャッシュフロー面を考慮しながらやっていく必要性がある。

2023年9月に、運用益を配分する国際卓越研究大学の最終候補として、東北大学を選んだ。

理由として、研究面で世界と肩を並べる成果を出し、経済社会に対して変化をもたらす高いポテンシャルを持っているためである。

我々は一校あたりに、最長25年、資金面での支援をする。つまり、3000億円を中期的に毎年提供する。

そのために、2つの目標を置いている。
⑴ 5年以内に3,000億円の運用益を達成する
⑵ 10年以内に、基本ポートフォリオの構成の作成

最後に、科学技術立国としての輝きを取り戻す重要な国策と考えているため、リスクをコントロールし、安定的にリターンを上げ、最終的には目標リターン4.5%を達成し、長期にわたり、大学を資金面から支援していきたい。

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