ウォーレン・バフェット氏が過去最大の現金保有高を持つ理由について(大和証券 谷栄一郎氏/Morning satellite Feb,2024)
バフェット氏が指摘した射幸心の真意について、解説する。
バフェット氏が、株式株主への手紙の中で、株価の高騰はカジノと表現し、警笛を鳴らした。ここで、重要なのは、バフェット氏がカジノ(ギャンブル)という言葉を使ったことである。
ギャンブルであれば、射幸心に関して、抑制する規制が公的に導入されている。例えば、ギャンブルの代表的な遊技機業界パチンコスロットでは、1分間400円を超えて消費する、もしくは出玉率が400回転で220%を超えることに対して規制がある。
一方で、株式市場には当然そういった規制なく、射幸心が上がれば上がるだけ、人々が誘惑されることになってしまうことに、バフェット氏がカジノレベルに上がってきてしまってるんじゃないですか?と米株式に警鐘している。
例えば、NVIDIAは、予想を超えて超えて上昇し、素晴らしい利益を投資家にもたらすと風潮がある。
FOMOという言葉はご存知だろうか?
Fear of Missing Outを意味し、NVIDIAを買えなかった人は、今チャンスを逃すことの恐れに打ちひしがれており、まだ行くんだったら、もう今しかこの値段で買えるチャンスないかもしれないと。こんな気持ちになってくると、市場で射幸心が高まると言うことになる。
利益がついている株価上昇は、全くバブルではないが、射幸心に煽られて人々が誘惑されて集まると、バブルと言うことになる。
そうなると、インフレ抑止の施策を取っているFRBの試みを阻害する恐れがある。理由として、資産価格が上昇すると、資産効果で消費が増え、インフレが再燃する恐れが強まるからである。
そのため、FRBとしては、インフレ下がってきたから、利下げしようかなと思っていたが出来ない、これがずっとできないとなると、追加利上げが必要になる可能性もある。こうなるとバブルに近づく恐れが強まる。
アメリカ株式で、ITバブルが2000-2001年にあったが、S&P500の益回りが4% 10年国債利回りが6%となり、射幸心が急激に薄れるという状態となり、バブル崩壊に繋がった。
足元を見ていくと、株価の益回り5%台前半、米金利は4%台前半におり、ギリギリ健全な状態にいる。もし、ここから射幸心が高まり、S&P 500の益周りが4%台に突入し、FRBが利下げできないと言う話になり、米長期金利が5%台まで上昇し、国債と株の利回りが逆転するようなことが起きてくると、その後のバリエーション調整、バブルの崩壊の可能性が大きくなる。
FRBは、慎重かつ解凍的な利下げを考えているが、例えば、利下げ出来ない状態続き、その後バブル崩壊で大幅利下げとなると、想定外の結果となる。これに対し、バフェット氏が警鐘鳴らしたと考えられる。
現在、バフェット氏は現金保有高1676億ドルと過去最大となっており、射幸心に高まりすぎている現在の市場が投資において適切じゃないと判断している考えられる。