注目されるインド経済、トランプ氏再選はポジティブ?(インドJBIC国際協力銀行 今堀晋一良氏/Morning satellite Nov.2024)
インドは、アメリカのトランプ次期大統領によって米中対立の激化が懸念される中、一段と存在感を高め、注目されている。
トランプの勝利により、アメリカの対中国政策が強化され、中国以外での生産の多角化が進めば、インドはIT、製薬、製造業等のセクター等で有利になると考えられる。
また、インドは人口ボーナスによる経済成長が期待されている。平均年齢28歳、豊富なIT人材、増加する中間所得層の消費拡大から魅力的な投資先である。
日本から見ても、JBICが実施した2023年度の投資有望国地域ランキングのアンケートでは、インドが2年連続で日本企業にとって最も有望な進出先に選ばれている。
インドは輸入に依存する経済構造を変えるために、2014年に“Make in India” インド国内の製造業を強化し、インドを世界の製造業の中心に発展させることを発表した。
そして、この動きをさらに進める形で、2020年に“Self reliant India”中国からの輸入依存を減らすことを意識した重要な取り組みが行われた。
そんな中、インドで急成長しているのは、半導体産業となる。ただ、インドで使われている半導体の約7割が中国からの輸入であり、その依存脱却のためインド政府は重点的に支援している。
中でも、インドの財閥TATAグループと台湾の半導体企業PSMCが半導体製造拠点の設立を進めている。この製造は半導体の前工程と呼ばれ、特に高度な技術やインフラが求められ莫大な費用がかかる。インド国産の半導体製造を進めるために、特別投資地域では中央政府と州政府は合わせて事業費の約7割を補助する見通しである。
また、石油天然ガスの輸入依存を減らし、貿易収支を改善するために再生可能エネルギーにより水を電気分解して製造するグリーン水素の製造に力を入れている。2021年に国家水素ミッションを発表し、2030年までにグリーン水素の年間生産量500万トンまでに増やすことを目標としている。
インド政府は、補助金制度や州をまたぐ再エネ電力の託送料金免除などの優遇制度を通じて、グリーン水素プロジェクトを後押ししており、今後は海外輸出目指している。
ただし、自立したインドの実現に向けた課題として、インフラ整備と法制度の曖昧さが挙げられる。特に、貨物鉄道や道路インフラの基盤が十分ではなく、製造業や新興産業の成長を支えるには更なる投資が必要である。
また、税関職員の解釈の違いにより税率が変わること、行政手続きの煩雑さを解決することで、海外からの製造業分野の投資が広がり、インド経済の持続可能な成長につながるだろう。