散り行けない者たち
明日は箱根駅伝予選会。
新型コロナウイルスの影響で開催が危惧されていたが、開催が決定したのは本当に良かった。関係者の皆様には頭が上がらない。
箱根駅伝予選会(以下予選会)は、文字通りお正月に開催される箱根駅伝の出場校を決定する試合である。
残酷だが、
出場する46校のうち本戦に進めるのは僅か10校。
これは、
予選会出場校の4年生のうち、7割以上は一般的に明日引退を迎えることを意味している。
例年は実業団で競技を続ける選手を除き、この試合で引退する4年生が多い。今年もその傾向はさほど変わらないだろう。
出場する4年生の選手は悔いの残らない走りをしてほしい限りだ。
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ところで、私も1年次には予選会に出場したが、昨年末に部を離れて現在は学生ながらいわゆる市民ランナーとして活動している。
もし昨年末に部活を辞めず、かつ所属してた大学か明日の予選会で破れていたら明日私は引退していただろう。
しかし、
市民ランナーである私には「引退」は存在しない。
なぜかというと、客観的な節目となるレースがないからだ。
多くの学生陸上競技者は、一つの大きな大会を境に引退する傾向がある(短距離やフィールドはインカレ等)が、早期退部をして「一般的な体育会系部活動所属の陸上選手」というレールを外れた私には、永久に区切りとなる「引退試合」はやってこないのだ。
いや、そもそも、私は明日走ることを辞めようと思えばその時点でランナーとしてのキャリアは終了するし、部を去った時点で引退とみなされている。
それはわかっているのだが、部を辞めても走り続けているという特殊ケースの私も、できれば学生としてのラストランとなるレースを走りたいと思っていた。それが贅沢な願いであることは重々承知しているが。
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明日の予選会は多くの箱根駅伝ファンがテレビ越しに声援を送ることだろう。
ここで、皆様に勘違いしないで頂きたいことがある。
それは、
予選会はともかく、競技生活最後のレースで、テレビに映り「華々しい引退」を遂げることができるのは極めて少数の選手であり、大多数は悔いや憎しみ、不甲斐なさを抱えて散っていくということである。
完全に私の主観だが、一定レベル以上(箱根駅伝出場を目指し、部活動に力を入れている「強化校」程度のチーム)では、
毎年15~20人程度は新入部員が入部するが、4年間チームに在籍する選手はその半分程度である。
つまり、箱根駅伝出場を夢見て関東の大学に入学した約半分の選手はなんらかの事情で部を去っていることになる。
その理由は極限まで努力をしても結果が出ずに気持ちが折れた、指導者との対立、相次ぐ怪我など事情は様々だろう。
ただ、約半分もの選手が挫折することは紛れもない事実だ。
また、4年間チームに在籍しても、思うような走りができなかったり、注目度の高い試合に一度も出場できない選手も少なくない。
明日はどうか、華々しく快走する選手に注目するのはもちろん、走れなかった選手・道半ばで挫折した選手の存在を少しでも想像し、テレビ観戦して頂ければ幸いである。
サッポロビールが今年の箱根駅伝の際に打った広告。これが全てだと思います。
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