仕事服の制服化で変わったこと | #69_*終活Days
就活と終活はどこか似ているところがあると思う。
就活は学生から社会人へ、終活は社会人から一個人へ大きな変化の時だ。
オタマジャクシが蛙になるように大きく変身したり、さなぎが蝶になるように、変化には痛みや停滞も必要になるかもしれない。
終活においても、その前後で価値観や考え方を変える必要が生じることもある。幸せの物差しも選びなおす必要があるかもしれない。
例えば、時間の使い方について。
残された時間が限りあるものだと気が付くと、急に時間がもったいなく感じることがある。無駄なことをしている場合じゃないわ、なんて焦る気持ちも出てくる。
私の場合、まずターゲットになったは、朝のお着換えタイムだった。
出勤前の洋服選びに時間がかかるのは私だけではないはず。夫は「ファッションショー」と笑うのだけれど、季節や気分によって組み合わせを変えたり、あの人とこの前会ったときは何を着ていたかなと考えたりして、洋服選びに迷う時間は女性にとって必要な時間だと考えていた。それは、面倒と楽しみがちょうど半分ずつというところだろうか。
最近は体形もずいぶんと中年女性らしくなってきたので、数年前の洋服でも似合わないと感じることも多くなった。
以前にも増してファッションショーの時間は長くなってきた。 夫にせかされることが増えて、ふと、この時間はもったいないのではないか、と考えるようになったのだ。
一体どれくらいの時間を費やしているのか、試しに計算してみた。
70際まで働くと仮定して、毎朝8分ほど(服に迷う時間で着替えの時間は含まない)のお着換えタイムに時間をかけると考えると、
1か月を平均で20日出社すると考えて、8分×20日で1か月に160分。1年で1920分。70歳までは12年なので23040分。日にちで言うと16日分の損失ということになる。
この計算がナンセンスだということは重々承知しているけれど、毎朝8分迷うのはやめることにした。
そういうわけで、今夏、以前からやってみたかった仕事服の制服化に取り組んでみた。
私は、仕事着に使えそうな無難なトップス2種類を色違いで2セット、そしてプリーツの入ったパンツを3本、色違いで購入した。
これを基本の仕事服として制服化。ときどき手持ちの洋服を交えながら、この夏を乗り切った。
どの組み合わせでもたいていうまくいくように、黒、グレー、ベージュ、カーキ、そして、顔映りいいくすんだラベンダーという無難な色のラインナップ。
それに加えて靴も、黒、グレー、ベージュ、シルバーというカラーなので、何を組み合わせても無難にまとまるようにした。
これで「バスに間に合わない」と慌てることがなくなった。
私たち夫婦は同じバスに乗って出勤するので、遅刻しそうになると夫の機嫌が悪くなる。お互いに朝のストレスが減るということは、とても大きなメリットだった。
おかげで今年の夏は一度も「ほーら、ファッションショーが始まった」とからかわれずに済んでほっとしている。やがて来る秋も仕事服を制服化して、気持ちよく出かける毎日を過ごしたい。
ただし、仕事服の制服化にはデメリットもある。それは(あの人、昨日も同じ服だったんじゃない?)とか(いつも同じ洋服よね、あれしか持ってないのかな)なんていう陰口をたたかれる可能性が無きにしも非ず、ということ。気にしなければ問題ないし、言いたい人には言わせておけばいいと個人的には思っている。
もしもこれが10年前だったら、仕事服の制服化の便利さや時短に魅力は感じても実行しなかっただろうし、実行しても「毎朝の楽しみがなくなる」と考えたに違いない。
価値観は変えようと思っていなくても変化していた。行動が伴っていないだけだった。そういうこともあるのだと考えさせられた。
また、ちょっとした工夫で無理のないおしゃれを楽しむことが出来ることもわかって来た。
洋服に個性がない分、小物での演出が効くのも楽しい。私は黄色いバッグやテラコッタカラーなどの個性的な色のバッグを使っている。
夏に愛用した白い折り畳み傘を仕舞う頃には、個性的な色柄のステキな折り畳み傘を買おうかと思っている。
職場では無難に、でも、行き帰りはちょっとした色使いで遊んでみる、というのが今の私にはちょうどいいおしゃれなのかもしれない。
最後に、私が仕事服の制服化がすごくいいと思っているもう一つの理由をお話したい。
仕事服を制服化したあとで、洋服をネットで見ていた時のこと。私は自分が見ている洋服がいつも選んでいるものとは明らかに違うことに気が付いた。仕事で着ることが出来るかな、と考えなくなっていたのだ。
自由に洋服を選んでいいんだ、と気が付いた時の解放感といったら。最高だった。
好きなアーティストのコンサートに行くためだけの洋服。お友達とカフェに行くためだけの洋服。夫と旅行へ行くときのためだけの洋服。目的が限られた洋服を、自分の好みで選んでもいいんだ。そう思ったらなんだかとても嬉しくなった。
本当に好きなものだけを選んだら、私のワードローブはどうなるんだろう。好きな洋服を着るためにダイエットに励むのかな。もしかしたら、髪型だって変えたくなるかもしれない。
時間を節約するために始めた制服化で、日々の仕事服の選択の時間とストレスから解放され、新しい自分に出会えたのは新鮮な驚きだった。
おしゃれは自分に自信を持つための魔法の力なのかもしれない。
年齢を重ねたからこそ、使いたくなる魔法。自分を大切にするからこそ、使いたい魔法。時にはネットの買い物で予想外のサイズに驚いたり、画面と実物の色の相違にひっくり返りそうになったりすることもあるけれど、それはそれで、魔法の修行ということで温かいご理解を賜りたい。
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