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【アニラジ今昔3】「ラジオドラマ」と「アニラジ」と(前編)

ラジオドラマといえば、ラジオの黎明期から存在する歴史のあるコンテンツです。1925年のNHK開局から始まり、民間放送でもラジオ東京(現在のTBSラジオ)が1951年から「ウッカリ夫人とチャッカリ夫人」を放送と、話し始めればきりがありません。なので、アニメなどのコンテンツを題材にした1991年以降のラジオドラマを中心に触れていたいと思います。

■ラジオ関西「熱血電波倶楽部」

前回話題にした「魔神英雄伝ワタル3」とほぼ同時期に、兵庫県の県域AM放送局・ラジオ関西で日曜夜10時半からラジオドラマ専門番組「熱血電波倶楽部」が開始します。こちらはキングレコード・スターチャイルドレーベルが関わった作品を原作とし「NG騎士&ラムネ40EX2」「万能文化猫娘」「ふぁんたじあ」「GS美神」どういった作品が1話15分のラジオドラマとして放送されていきました。ラジオドラマが一作品完結した後には担当声優による DJスペシャルも設けられ、比較的関東地方からも聴きやすい放送局であったため、日曜夜が楽しみだったアニメファンは多かったのではないかと思います。

当時はアニメ雑誌の裏表紙にスターチャイルドレーベルの広告があり、その隅に関連するラジオ番組の紹介があって存在を知ることができました。「NG騎士ラムネ&40」はワタルと同じく異世界召喚モノのアニメながらも、メカニックやコミカルさ、そしてラブコメに注力していて、続編のOVA「NG騎士ラムネ&40EX」では日本へ舞台を移し、そのラブコメ方面を強化したことで人気を博し、自分もラブコメが大好きだったことからこちらの番組も追いかけたものでした。

「熱血電波倶楽部」は、後に1992年からTBSラジオで始まった「林原めぐみのTokyo Boogie Night」でも後半のラジオドラマパートとして放送され関東地方で聴くことができましたが、当時は土曜日の深夜26時という時間もあって、少し時間帯の早いラジオ関西のほうを遠距離リスナーとして聴くことが多かったです。埼玉から兵庫という距離もあり雑音混じりではありましたが、その合間から聴こえてくる「アニメのようなラジオドラマ」は大変魅力的だったのです。

■NHK-FM「青春アドベンチャー」

その1992年からはNHK FMで、同じくラジオドラマの専門番組「青春アドベンチャー」が、前身の「サウンド夢工房」からリニューアルして月曜日から金曜日までの帯番組として始まります。こちらは日本の文学作品や海外小説などを題材にすることが多いものの、時折アニメや漫画・ライトノベルを原作としたラジオドラマも放送されています。

よしもとよしともさんの「東京防衛軍」を皮切りに、樹なつみさんの「OZ」、吉田秋生さんの「BANANA・FISH」などなど。中でもインパクトが大きかったのは、1994年放送の永井豪原作「バイオレンス・ジャック」で、天災が原因で崩壊した関東地方を舞台に弱肉強食の世界が展開されるという、今振り返ってみれば「本当にNHKで放送していたのか!?」と思えるような作品でした。まあ、その後原作を読んでそれ以上の過激さにひっくり返ることになるのですが……悪の親玉・スラムキングとして松重豊さんがキャスティングされているのも、今となっては感慨深いです。

「青春アドベンチャー」は、どちらかと言うと俳優さんや劇団員の方々がキャスキャスティングされることが多く、専業の声優さんがキャスティングされる頻度はそれほどは多くなかったりします。しかし、2000年に放送された萩原規子さん原作の児童文学作品「これは王国のかぎ」(※1)では、主人公に池澤春菜さんをはじめとして、佐々木望さん、坂本真綾さん、千葉繁さん、白鳥由里さん、菅原祥子さん、立木文彦さんといった方々が参加し、さらに小川一水さんのSF作品「イカロスの誕生日」(※2)では桑島法子さん、檜山修之さん、久川綾さん、倉田雅世さん、古谷徹さんがキャスティングされたり、田村ゆかりさん主演で「タイムスリップシリーズ(※3)が展開されたりと、時々これでもかといった具合に豪華なキャスティングが見られることがあります。

残念なことに、その音源は本放送と数回の再放送以外で販売・公開されることはほぼほぼない(※4)ため、今となっては上記の音源をほとんど耳にすることはできません。できることなら、有償でいいので過去は公開されていたNHKアーカイブスや、有料配信サイトで公開してほしいところはあるのですが。

■展開が広がる「ラジメーション」

さて、時間と話を戻して1993年。前回紹介したラジメーションも、新たな展開を見せていきます。「魔神英雄伝ワタル3 虎王伝説」が終わり、続く作品は「ここはグリーン・ウッド」。少女漫画雑誌「花とゆめ」で連載されていた、男子高校の学生寮を舞台にした群像劇で、前回とは全く違った方向性に面食らったことをよく覚えています。男子高校が舞台ということもあって、パーソナリティーは岩田光央さんと関俊彦さんの男性二人。番組のカラーは一変しつつも、逆に男性ばかりということもあって聴き馴染みのしやすい番組でもありました。ラジオドラマは当時OVAシリーズが発売されていたこともあり、そちらを補完する形で原作を題材にしたり、オリジナルのストーリーを用意したりとかなり自由に展開していました。こちらも毎週の楽しみになっていき、それをきっかけとして自分も作品のファンとなって原作を全巻集め、さらには少女漫画のファンになっていくのでした。

ラジメーションはその後、同じく「花とゆめ」から前世と現代が複雑に絡み合ったサイキックファンタジー「ぼくの地球を守って」や、TRPG作品「クリスタニア」を題材とした「レジェンド・オブ・クリスタニア はじまりの冒険者たち」と展開が広がり、ライトノベルからは中村うさぎさん原作の「極道くん漫遊記外伝 生き血をすする聖女たち」、少年漫画の名作「きまぐれオレンジロード」、往年の作品を平成に復活させた「平成タイムボカン」など、文化放送やラジオ大阪だけではなく、埼玉県の県域FM放送局・NACK5や神奈川県のAM 放送局・ラジオ日本など多くの放送局へ広がっていきました。

(後編へ続きます)


※1 萩原規子さんによる、現実に嫌気がさした女の子が千夜一夜物語の世界へランプの魔神として召喚される児童文学作品。

※2 小川一水さんによる、日本に住まう翼をもった人々「イカロス」と、それを管理しようとする人間との対峙を描いたファンタジー作品。

※3 シリーズのうち「タイムスリップ明治維新」は、女子高生が幕末へ飛ばされて歪められつつある歴史を取り戻そうとする、鯨統一郎さんによるファンタジー作品。後の「源平合戦」「戦国時代」「川中島」「大坂の陣」は、テレビのほうで放送されていた大河ドラマとのタイアップ的なオリジナル展開となっています。

※4 「BANANA・FISH」「夏の魔術』など数作品だけCD化されていました。

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