ミケーレの手帳

「あ、待って、忘れてるよ。ミケーレのでしょ」

「ああ――ありがとうございます」

 ミケーレは受け取った手帳をぱらぱらめくった。

「では都、12月をさしあげますよ」

「え」

「年間ぶんの、一割でしょう」

 マンスリースケジュール、の頁をひらいて言う。「拾ってくれた者には一割」。

「…それじゃ…ひと月じゃ足りないんじゃない? 1.2か月ぶん貰わないと」

「何月がいいですか」

「…そうだなあ」

 ミケーレがくれる1.2か月ぶん。

「12月はあなたの誕生日があるので、ちょうどいいかと思ったのですが…。この月を押さえれば、派手に祝えるでしょう」

「そうだね、ナターレも大晦日(ウルティモ・デッランノ)もあるし、いいかも。でも、カルネヴァーレの2月も捨て難いし…」

「2月と言えば、アグリジェンドでアーモンドの花祭りもありますね」

 そういえばバレンタインもある。

 クラシック・カーのレース、ミッレ・ミリアや端午の節句(あちこちの空を泳ぐこいのぼりを一緒に見るのはきっと楽しい)の5月、七夕祭りやウンブリア・ジャズの7月、ヴェネツィア映画祭やサンタ・クローチェの光祭りのある9月…。

 あなたとともに過ごせるなら、きっとそれはいとしい1.2花月。

 そんなことを言い出せばきっときりがない。

 ミケーレの12花月が、やっぱり私はほしい。

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