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ランドスケイプ
私がえらぶ風景にはいつもあなたがいる。
あなたを感じられる、あなたといられる風景。
例えばこの、インディゴのグラデーションに深く沈み、幻想的に浮かぶイタリアの街。あなたの色に霞む街。
私をゆるやかに抱きしめている霧はあなたそのもので。
隣を歩くあなたの表情、それがいつ引き締まり、いつほぐれたのか、わたしは目を閉じていてもわかるよ。
網膜に、私の脳のいちばん中核に、色調見本みたいにファイリングされた、ゆらぐ透明な藍色。
悲しげな青のような、優しい黒のような、深く澄んだ藍色。
肩を並べたミケーレの剣の鍔鳴り。その歩みに合わせて揺れる鋭い、あなただけのリズム。協和するようにそこに4つのブーツの音が重なり、カンパネラのように石畳に反響する。
ミケーレの手はごつごつとかたく、絡めた長い指が、ひんやりと立ちこめる夕霧のなかに熱い。ミケーレの精悍でシャープなシルエットが纏う、雄麗なフォッグブルー。
こんなにも風景の中に、私はあなたを感じられるから。
あなたと歩けるイタリアの街を、私は愛する。