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ハーフエルフと音物語‐序曲‐前編1

オトワ幼少期——————極東国『東麗』————
 大陸の東端に位置する島国『東麗』。久しく独自の文化を形成してきたこの国が諸外国に対して開国したのはほんの数年前のことだった。

 その東麗の北部、農村のはずれ(民家)に男児が誕生する。
 大家族の末弟として、少年オトワはつつましく育っていった。

 父は近隣の農民をまとめる地主的立場だったが、オトワが生まれた直後腰を悪くして、長男に後を託して隠居した。
 母はオトワが生まれた直後、すぐ次の子供(双子の弟妹)を妊娠したトンデモ母ちゃんだった。すっかり弱気になった旦那を叱り飛ばし、一家をまとめる肝っ玉母ちゃんだ。
 長女はそんな母を支えて家事の全般をそつなくこなし、母をたすけた。
 長男は無口で頑固者で口より手が出る質だったが、責任感が強く、頼りになる一家の大黒柱だった。
 次男はお調子者でよく兄に冗談を言っては殴られていたが、頭の回転は速く要領もよく経済的にも精神面にも家族を励ますキレモノだった。
 次女は口数が少なく歯に衣着せない合理主義者だったが、世話焼き気質であり、よく下の兄弟の面倒を見た。
 三女は反対に空想好きで新しいもの好きで、好奇心旺盛なので、よく流行を追っては都に遊びに行った。

 オトワはというと…、体力は人並み以下で体を動かすこともあまり得意ではなく、要領よくもなかったのでよく転んでは叱られた。性格ものんびり屋で極端に明るいほうではなかった。だが面倒見がよく、困っているものを見過ごせず助けることのできる、心優しい少年だった。そんなオトワは耳はとても良かった。

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