狐の嫁入り
幼い頃、母がよく聴かせてくれた話です。
今から60年近く前。私は4、5歳。
家に電話がなく、テレビは白黒で、ガチャガチャ回すチャンネル。冷蔵庫には大きな氷が入っていました。
隣のトトロのさつきが、お母さんの病院に連絡するため、「本家」に電話を借りに行く場面がありますが、同じ頃かもしれません。うちも何かあると大家さんに電話を借りていました。その頃の母は、30前後。
その母が、3〜4歳頃というのだから、戦前です。母は福島で生まれました。
狐の嫁入りを見たのよ。真っ暗な山の中を赤い電球みたいなのが道の両側にピカピカ光っていた。
母は、山から帰る祖母の背中の籠に背負われて、その赤い光を怖くて、でもきれいだと思って見ていたということです。
そして、もう一つ。
夜中に鶏が大騒ぎしていた。急いで鶏小屋に行くと羽と血が散乱していて、狐にやられたのがわかった。鶏小屋には赤い電球なようなものがぶら下がっていた。
これは、その話を横で聞いていた祖母です。
赤い電球のようなピカピカ光るものってなんだったのだろう?と50年たった今でも思います。私はカラスウリを見ると必ず母と祖母のその話を思い出します。
近所の人が何人か集まれば、火の玉がぐるんぐるん回りながら飛んでいた、とか、あそこの旦那さんはキツネに騙されて馬糞を食べて夜中に池で大声で笑っているのを見た、とか。キツネはヒトを騙くらかして何かいいことあったんだろうか。
明治生まれすごい!大正ロマンステキ!などと言っていたのに、最近では昭和レトロなんて言われ…。
たかだか60年。キツネ、大人しくなりましたね。白黒テレビで梅干し殿下を見ていた。月光仮面を見ていた。その私もこうしてnoteに投稿したりして、なんだかすごいぞ、と時々驚いています。