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GQuuuuuuXジークアクス考察❸ガルマ・ザビ生存の影響力



1回目の記事

https://note.com/m_kuma3248/n/nedbdbe701ffd

2回目の記事

https://note.com/m_kuma3248/n/naefe2b47386a

本記事は第3回です。

ジークアクス世界でジオンは地球撤退

ジークアクス世界線では、ジオン軍が地球から完全撤退している。V作戦が失敗したのにも関わらず、このような軍事的或いは政治的なバランス何故発生したのだろうか?

①これはアムロ・レイ不要論ではない


「アムロがいなくても連邦は勝てた」という言説があるが、これは作中では明白な誤りである。ジークアクス世界ではジオンが勝者として君臨している。連邦は勝利していない。完璧で究極の勝利ではないが、戦勝国という前提は誰の目にも明らかだ。

②ガルマ・ザビ生存のインパクト


明記された事柄として「ガルマ・ザビの生存と私的な理由での軍の離脱」がある。これについて考察すると、考えられる影響は下記の通りだ。

ガルマ生存 ギレンの演説の未発生
ガルマ生存 デギン公王との軋轢回避
ガルマ生存 報復部隊派遣による混乱と泥沼化
ガルマ離脱 南米侵攻拠点としての北米の弱体化
ガルマ離脱 ギリシアによる支援・開発の変化

「ガルマは何故死んだ?」というギレンの演説は、シャアの「坊やだからさ」という独白で有名だ。ただこれは、ジークアクス世界では未発生である。

ガルマの死を、ギレンは演説で戦意高揚に利用した。ギレンは戦争のアクセルをベタ踏みして軍を損耗させたし、ガルマの死の政治利用を咎めたデギン公王の「ヒットラー尻尾」発言へと事態は繋がる。これが父デギンと子ギレンの深刻な父子対立を産み、デギンの謀殺に繋がるのである。そしてそれはキシリアの報復としてのギレン暗殺まで繋がる。このギレン・ザビ破滅ルートは回避され、ギレンやキシリアの健在が劇中で明らかにされている。

このような「ガルマが死んでいなければ別の歴史があった」というのは古参ガンダムオタクのあるある展開であり、今回の脚本はそれに沿って展開されたと考えて良い。

ランバ・ラルの敵討ち部隊派遣もなければ戦死もない。ガルマだけでなくその副官ダロタが生き延びたので、だいたいみんな元気である。オデッサの撤退も成功させ、ジオン軍は戦力を温存した。黒い三連星の処遇は不明だが、アムロが不在でシャアの応援があるなら生きていても不思議はない。

③そもそも地球降下作戦の目的とは?


ギレンは戦意高揚の為に演説した。つまりギレンの演説がなければジオン軍の地球降下作戦は停滞していたようである。復讐で戦火が拡大するのはよくある展開だが、そもそもの事件がなければこのような戦線拡大もなかったのだろう。

そもそも地球降下作戦とは何だったのか?

地球降下作戦の目的は、「地球の完全征服」と解釈される事も多い。それ自体は間違いとも言い難いが、初手でジャブロー陥落を目指した訳ではない。降下作戦の目的は段階的に設定されていた。北米攻略は軍事経済の要衝の確保である。そしてオデッサのある黒海コーカサス地方を制圧したのは、貴重な鉱物資源の確保の為である。

(鉱物資源の具体内容は明かされないが、小惑星帯での入手が困難なレアメタルやレアアースが目的とされる事例が近年は増えている。)

オデッサ撤退の際、原作でマ・クべは「これでジオンは10年戦える」と語った。ジークアクス世界線でもオデッサ撤退戦が発生し、シャアが活躍した事はパンフレットの年表などで判明している。

『ジオン軍は戦略目標を達成し、必要な資源を獲得した。戦争継続の筋道をつけたからこそ撤退した』ジークアクス世界はこの前提に立つと見ていい。

なお以下は余談だが、「一年で戦争が終わったから、マ・クベの大言壮語は事実に属してなかった」という指摘もある。ただグリプス戦役が8年後の0087、ハマーンのアクシズが襲来するハマーン戦争、いわゆる第一次ネオジオン戦争が9年後の0088である。途中にデラーズフリートなどジオン残党が活動し続けた点を考慮すると、10年は連邦とジオンの戦争は継続していた計算である。マ・クベのこの発言は、頭から否定もできないと言える。

④サイド6の地位協定に見られるジオンの政治力


ジークアクスではサイド6はジオン公国と同盟関係である。ザクの供与を受け、軍警という形で密かにザクという軍事力を蓄積している。

この頻繁に出る「地位協定」や「占領時代」という言葉が、宇宙におけるジオンの圧倒的優位を示している。

作中の描写を見る限り、サイド6はジオン軍の占領を受けたようだ。そして軍事的占領は比較的短期に終わり、ジオンは地位協定を結んで撤退した。旧来のジオン軍では明らかにない動きである。

デギン公王はガルマを最も愛していた。そしてガルマはジオン国民にも人気があった。推測でしかないが、ガルマの政治家転身というのはそう無理がある話ではない。それがデギンの元々の望みとも一致するからだ。デギンもまた革命家であり政治家である。軍事に専念する他の子と異なり、ガルマの政治家転身を歓迎し支援する立場なのだ。

またニューヤーク市長の娘でアースノイドのイセリナと、スペースノイドのザビ家のガルマの結婚は政治的に大きな意味を持つ。結婚は昔からある融和策であり、しかも恋愛結婚なのだ。毒ガスで全滅させたコロニーをバカスカ落としたジオンの戦争犯罪に対する悪評を覆せる程ではないにせよ、「ジオンには話せる余地のある相手もいる」ガルマはそんな立場にいるはずである。

ザビ家の強硬派を構成するのがギレンとドズルなら、穏健派を構成するのがデギンとガルマとなり得る。サイド6の独立は、恐らくそのようなジオン公国内の複数の意見が反映されていると考えられるのではないだろうか。少なくとも、ジオン公国は硬軟を使い分ける以前より巧みな対外政策を展開できている。

⑤まとめ


今回はガルマ・ザビという切り口で、ジオンの現在に至るルートを考察した。原作作中でもガルマ・ザビ演説は大きな出来事として描かれた。序盤の見せ場と言って良い。である以上、その生存した場合の影響力もまた大きなものとなったのだろう。

連邦側の事情や、より軍事的なMS開発面の要因も一定程度は存在するはずだ。その辺りは機会があれば別の記事にしたいと思う。

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