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GQuuuuuuXジークアクス考察❺ザクについて
「ザク」表記について
ジークアクスではザクは「ザク」と称される。「ザクⅡ」と「Ⅱ」がつかない事を疑問視する人がいるようだ。曰く「ザクⅡでないのは、原作より技術が進んでいる証左だ」と。だが少し違うと私は思う。
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そもそも論として、原作も最初の頃の表記は「ザク」と「シャア専用ザク」だった。「ザクⅡ」と呼ぶようになったのは後になってである。MSVなど後年のガンプラの影響だったと記憶している。旧ザクがあるからそちらを1番にしてザクを2番にした。型番的にはMS-05とMS−06であり、どちらかというと当時の美的感覚「カッコいい」をMS名表記という形で表現する。その程度の話だ。
因みに最初期のガンプラでは、TVのまま「シャア専用ザク」「量産型ザク」「旧型ザク」の表記である。つまりジークアクスでの表記は、一種の原点回帰なのだ。
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アニメのTV放送のタイミング(1979年4月から1980年1月)では世の中にガンプラはまだ存在していない。ガンプラ発売は1980年7月と放送終了の実に半年後である。しかもガンプラブームで巷に行き渡るまで時間を要した様だ。ガンプラですら原作たるファーストのテレビシリーズには間に合ってない。
世に有名なガンプラブームというのは、実はアニメのリアルタイムに間に合っていない。もし間に合っているとしたら、それは三部作の劇場版の方だった筈だ。ガンダムを作ったのは玩具メーカーの販促というのは歴史的な事実だが、その玩具とやらはこれである。当初はガンプラは存在しなかったからだ。
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ファーストのリアルタイム視聴世代の感覚としては、MSの呼び方というのは大体「ザクだろう」「グフだろう」「ドムだろう」という事になる。それこそが原点と、脚本家たる庵野秀明氏がそう主張しているとここは受け止めるのが無難だろう。
ジークアクスは徹底的にファーストへの原点回帰を意図しており、それは実に厄介なほどである。「ザクⅡ」の「Ⅱ」ですら付加された異物として排除するほどなのだ。
そもそもシャリア・ブルはTV版にしか出ておらず、映画版にはいない。やはり庵野秀明氏により、ファーストTVシリーズの原液注入のような試みをされていると覚悟するのが正解なのだ。自分の受けた衝撃をそのまま後世に伝えようとする。オタクとしての性でありまた本質ではないだろうか。徹底的にファーストのテレビになかったもの、後世付け加えられたものを排除する。こういう所は実に丁寧な仕事ぶりであり、驚異的な原点回帰である。
戦闘機こそMSの重要なモチーフ
実はガンダムは戦闘機をモチーフにしている。都市伝説の類と思われるかもしれないが、下記の様に並べてみると相関性があるのがお分かり頂けるだろう。
アムロ・レイ= 「零式艦上戦闘機」
カイ・シデン=「紫電改」
ハヤト・コバヤシ=一式戦闘機「隼」
リュウ・ホセイ=艦上攻撃機 「流星」
ブライト・ノア=明星? ノアの方舟?
特にカイは並べ替えているだけで字の増減がなく、かなり原型を留めている。リュウ・ホセイも1字挿入で分かりやすい。ブライト・ノアも「明星」辺りが由来だと思うが、「ノアの方舟」の「ノア」の要素がより強くなったのではないか。ホワイトベースという方舟で皆を導く役回りである。この辺りの話は推測の域を出ないし、本筋と関係ないのでひとまず置く。因みに女性キャラの命名法則、特にセイラさんは由来が結構酷いらしい。富野由悠季監督流のヒロイン作成手法なのだろう。
この戦闘機というモチーフは、分かり易くザクのデザインにも反映されている。
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印象的なザクのモノアイはまさに日の丸であり、ザクの機体色もまた日本軍の戦闘機の色である。ザクのデザインは零戦に意図的に寄せていると思う。みんなそれを明言しないのは大人の事情である。最初期の視聴者は「うわぁ、大胆なデザインだな」と感じただろう。
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ザクをはじめとするジオンの兵器類が、全体的にドイツ軍の兵器のデザインを模しているのも同意頂ける方はそれなりにいるのではないだろうか。
またここで改めて名前と型番について補足すると、「ザクⅡ」と「Ⅱ」がつくのは名前の側である。「MS-06」「MS-06S」という型番はあくまで変わっていないのである。「ザク」という名前の表記に戻して単純化した。新規層獲得の為にも物事は単純化しよう。ザクの型番など作品テーマに対する枝葉も良いところである。不要なものは削ぎ落とす。必要ならまたここから膨らませればいい。これはそれだけの話ではないのだろうか。ジークアクスbeginingに拒否反応を示す層は、ガンダム世界のこの膨らませた部分にこそ魅力を感じていた人々なのだろう。
「機動戦士」の意味
MSとは機動兵器である。なんと言ってもタイトルは「機動戦士ガンダム」ではないか。では「機動戦士」とは何だ。
コロニー落としというジオン軍の奇襲攻撃も真珠湾攻撃に着想を得ていると思われる。MSという機動兵器が旧式兵器を駆逐する。それは真珠湾攻撃で日本軍が証明した「航空主兵への転換」その物である。航空機への転換を、MSに準えて再現しようとしたのだ。真珠湾を境にして、航空機と空母の組み合わせが艦隊の新戦力となっていく。それはまさにガンダムの中でザクが果たした「MS主兵への転換」という歴史的な役割と一致するのだ。
ちなみにジークアクスは一貫して宇宙を舞台にして、ザクはコロニー内を舞う。地上戦は廃されている。劇中で描かれるザクの印象は機動兵器という形で終始一貫している。
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ザクはもはやジオンの主力兵器ではない?
かつてジオン軍にとってザクは象徴的な兵器だった。過去形である。ジークアクスでは、ガンダムこそがジオン勝利の象徴として脚光を浴びている。マチュが教室で閲覧するガンダムのネット記事も、赤い彗星がパイロットとされていた。ガンダムは完全なジオンのMSであり、勝利の立役者の扱いであった。
連邦軍は、ガンキャノンベースとされる量産型MSを「軽キャノン」と呼称しているようだ。軽キャノンはジオン軍内だけの呼び方の可能性もある。ただ、恐らくは「ガンダム」という単語は連邦内では封印されたのだ。それはV作戦奪取という、ジオンの勝利を寿ぐ文脈でしか使われなくなったのだから。謂わば、不吉さを示す忌み語となってしまった。代わりにジオンはこの名称を使いまくった。ジオンはガンダムという言葉さえも開発者で命名者である連邦から奪い取ってしまったのだ。そうなるとザクの立場は微妙である。
劇中でのザクの扱い
シャア専用ザクはガンダムに乗り換えられる
ソロモンでは爆弾の代わりに使用される
サイド6の軍警向けMSとして輸出品となる
ジャンク屋も武装解除したザクを使用している(クランバトルに流用)
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劇中でのザクの描写は、ザク下げガンダム上げで徹底している。捨てる、壊す、売り飛ばす、民間人でも使えてクランバトルで派手に壊すである。特に爆弾代わりにしちゃう辺り、その演出意図は明白に見える。ガンダムがあればザクはもう用済みなのだ。本当にそれでいいのか?
実際、戦後にザクはサイド6に輸出されている。政治的な思惑も大いに関係するが、ここで重要なのはザクはもはやジオン軍の主力兵器ではないかもしれないという点だ。どこの軍事国家が主力MSを輸出するだろうか? ガンダムの量産までは使用された。だが量産機が完成すれば用済みだ。余生はサイド6に売り飛ばされるか民間に払い下げられるかというのは、主力MSでなくなっているのなら何も矛盾しない。
作中、連邦側にザクは技術流出している。そもそもガンダム1号機と共に連邦が鹵獲し運用するザクがサラミスから出撃している。またシャアのセリフからも、ガンダムがザクの分析の上に作成されていると明示される。これは原作でもそうなのだが、解析され対策され終わった兵器のザクには未来がないのだろう。
ジオン軍の後継MSだが、原作ではザクを置き換える存在として期待されたのがゲルググである。このゲルググのキャンセルは明言されている。ザクについてもバリエーションモデルは削られ、今後主力に戻すにしても少なくともハイザック相当の機体まで性能向上させたものしか出さないだろう。
それらザクやゲルググの代わりとして、ジオン公国は一年戦争時点でガンダムベースにした量産機を開発に成功している。(ソロモン戦で緑色のジムらしき姿が見えるとされる。ペガサス級ソドンでザクが出撃するが、天井で逆さまにライフルを構えて警戒するジムスナイパーカスタムに似た機体が確認できる)そして独自のガンダム開発にさえ成功した。それがジークアクスの世界だ。
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サイコミュを搭載したガンダムの誕生を祝してか「gMS」と新たな型番がスタートしている。「赤いガンダム」はもはや「RX -78」の系譜ではない。アルファサイコミュを搭載し、ビットを使いこなす以上は当然だ。
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ガンダムの量産機といえばジムが相場だ。ジークアクス世界線でなんと呼ばれるかは分からないが、少なくともジオン公国に存在しているのは判明している。来るべき次の戦いで、ジオン公国はこのガンダム由来の量産型MSを主軸とするのだろう。或いは既にその後継機を開発済なのだろうか。