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GQuuuuuuXジークアクス考察❽クランバトルの真実
クランバトルにまつわる違和感
ジークアクスの後半は、クランバトルが展開されます。ここで幾つか違和感を感じた方も多いのではないでしょうか?
サイド6入港時の前座試合
マチュの出撃に妙に聞き分けのいいアンキー
シャリア・ブルが合図をするとテレビを付けるバーテン
ザクマシンガンの使用に閃光弾まで
シャリア・ブルのやばい表情
それぞれ確認してみましょう。
サイド6入港時の前座試合
ソドンのサイド6入港に際して、2機のザクが進路上に入り込みます。艦橋では「だからザクを民間に払い下げるのは反対だったんだ」という会話が展開され、クルーはイズモ管制に文句を言うよう指示されます。これだけ聞いていると「民間のジャンク屋が入り込んだんだな」というのが初見の印象でしょう。
しかしこれは、観客がクランバトルの存在を知らないから。取っ組み合いをしていたザクは、実はクランバトルの参加者です。後から振り返ると、そうだと分かるそんな構造になっています。
ちなみにこのシーンで展開されるのは、武器を持たないど付き合いです。これがジャンク屋同士の普通のクランバトルの水準だと思われます。カテゴリーなんかもあるはずですが、大抵は武器は使わずに殴り合う。クランバトルの一般的な水準は、かなり低いものなのでしょう。そりゃ、連邦を中心に元パイロットも一定数いるとはいえ、ジャンク屋が行うバトルではそうなるのでしょうね。サイド6で武器を使うのは、かなり過激な行為になる筈です。
マチュの要求に妙に聞き分けのいいアンキー
マチュとクランバトル参加条件を詰めるときのアンキーは、マチュの要求の全てを受け入れる雰囲気でした。これはマチュがクランバトルを引き受けさえすれば、アンキーの目的は達成されるからでしょう。つまり、勝敗や金銭もアンキーの目的ではないのでその点は度外視で良いのです。
でも、それは本来はどれだけありえない常識外れの事でしょうか。それはカネバン有限公司の他のメンバーの発言が証明しています。となるとアンキーの目的は、実戦に近い環境でマチュとGQuuuuuuXをテストすると事しか考えられません。
「ジェジーでも動かせなかったんだぞ」というセリフに代表されるように、カネバン有限公司で最優秀なパイロットはジェジーなのでしょう。実際、彼はザクを隠す役目を仰せつかっています。しかし、そんな彼でもオメガサイコミュのGQuuuuuuXは動かせませんでした。それはつまり、マチュが特別であるという明白な証拠をアンキーに示しているのです。
NT能力を有するエグゼべ少尉でも無理なので、ある意味当然ではあるのですが。事情を知らないカネバン組は、アンキーの反応が何もかも全て予想外で驚かされっぱなしだったに違いありません。
前回取り上げたようにアンキーが実はジオンのスパイなら?
サイコミュについての知識をアンキーが有しているという前提に立つ場合、アンキーの「よく動かせたね」というコメントの受け止めが変わります。単にマチュがMSを操縦してのけただけでなく、NTとしての能力を発揮したとアンキーだけが気がついているのです。
そうと気づいていてGQuuuuuuXにマチュを乗せたクランバトルを仕掛けたと考える場合、他のシーンの見方も変わります。どこの馬の骨ともわからない相棒を連れてくるのを了承するのも、それが赤いガンダムの可能性が極めて高いと察知していたからでしょう。そしてGQuuuuuuXと赤いガンダムのクランバトル参戦こそ、彼らの目的に適っている訳です。
一般にニュータイプの存在は余り知られていないと考えられます。アンキー以外のカネバン組は多分わかっていません。マチュを普通の女子高生と見るか、或いはニュータイプとして見るかで周囲の受け止めがまるで変わるのですね。本当にニュータイプなら、これくらいは問題なくやれるはず。アンキーだけがそんな前提に立って、クランバトル出場の話を進めているのです。
シャリア・ブルが合図をするとテレビを点けるバーテン
酒場でのシーンでは流れるようなテンポに誤魔化されますが、エグザべ少尉を伴い席に座っているシャリア・ブルが電話を受けます。通話の後でバーテンに合図すると、バーテンがテレビを付けてクランバトルの試合中継が始まります。
これは極めて異常なシーンです。
そもそもテレビのチャンネルって複数あるのが当たり前です。合図して以心伝心でポンと目的のチャンネルとはなりません。「クランバトルを映してくれ」くらいのセリフが必要です。それが全くないというのは、この酒場自体がジオンの諜報組織の拠点だからでしょう。
電話の内容は「GQuuuuuuXと赤いガンダムがクランバトルに出るという報告」で間違いないでしょう。前後の状況を考えると、連絡してきたのはアンキーです。これについては、前回詳しく取り上げています。
エグザべ君は酒場をジオンの拠点と知ってか知らずか機密に類する事を口にしますが、シャリア・ブルがその会話に応じるのもあの酒場は安全地帯であると知っているからなのです。例えるなら、ソドン艦内と同じ空気感ですね。
カウンターのバーテンは誰が連絡してきたか、これから何が行われるかまで把握しています。知っているからこそ、あの放送の中継をパッとつけられたのです。予め、電源をいれれば目的のチャンネルが流れるように用意されていたのは言うまでもありません。
ザクマシンガンの使用に閃光手榴弾まで
マチュとシュウジの対戦相手は、MAV戦術に忠実な上にザク・マシンガンに加えて閃光手榴弾まで持ち込んでいます。しかも戦術は、突撃機動軍の教本通り。現役の軍人かどうかはともかく、間違いなく実戦経験のあるジオンの元正規パイロットを用意しています。これ、完全に仕込みですよね。
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これはサイド6の入港時にちら見せした、通常のクランバトルの内容を大きく逸脱してます。そして銃の使用に、アンキーもシャリア・ブルも全く焦る様子を見せません。それこそ、彼らがこのマッチングを仕掛けた側という証拠ではないでしょうか。全てが偶然ではなく予め用意された必然であり、彼らの想定した実戦に近い試練の場なのです。
閃光弾まで用意させたのは、目が見えなくても戦えるか確認する意図があるのでしょう。NTとサイコミュの組み合わせなら、目が見えないこのハンディでだってやれちゃうはずなのですから。
マチュ「鉄砲なんて聞いてない!」
ジェジー「うちは貧乏クランだからな。」
観客はジェジーの反応で違和感を吸収され、この状況に妙に納得させられます。が、軍人相手になんとかしちゃうのはそもそも異常事態です。それでも、観客はクランバトルという舞台装置に誤魔化されます。
サイコミュを搭載したガンダムとそれを動かせるNTの組み合わせなら、出来て当たり前ではあります。仕掛けた大人の側は、その認識でこの試練を仕掛けています。もし当てが外れてもあくまでも舞台はクランバトル、頭部破壊だけならマチュやシュウジにちょっとした恐怖心を得るだけで済むはずです。彼らが実力も才能もなくMSを乗り回すお子様だった場合なら、それくらいの罰を与えるのは妥当かもしれません。
「ジオンの最新鋭機を持ち出した子どもにお灸をすえてくれ。但し機体には傷をつけるな。」
それくらいのオーダーでジオンのパイロットを手配したのではないでしょうか?
上記のやりとりはあくまで私の推測ですが、劇中ではこんな会話が交わされています。「危険です。もし、ゼクノヴァを起こしたら」そう問われたシャリア・ブルはこう返します。「それを確かめるためにここに来たのです。」シャリア・ブルの目的は、ここに端的に表現されています。
観戦するシャリア・ブルのやばい表情
大人達は、限りなく実戦に近いスタイルで2機のガンダムの性能評価を行うつもりです。何も知らないいジェジーやエグザベ少尉が解説役となることで、映画の観客は誤魔化されます。しかし実際には彼らの解説で明らかになるよりも、もっと薄汚れた目的の為にこのクランバトルの試合は用意されています。試合を見守っているのは、子供を軍事利用しようとする薄汚れた大人達が値踏みする冷徹な視線なのです。
ここではエグザべ少尉やジェジーは、むしろ純粋で穢れを知らない癒やし役とも言える存在です。観客はジェジーの口ぶりに「本気で心配して悪いやつじゃないんだな」と思うはず。実際に彼らは戦争を知らないであろう世代で、至極真っ当な人間達なのです。
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だからこそ映画の観客は、真っ当な人間の物の見方に引きずられてしまいます。それが、クランバトルの試合事情を見誤る構造として機能しているのです。
それに気がつくと、ジェジーというのは彼のペットと同じでかなり愛すべき存在だと分かります。ポメラニアンズというチーム名はジェジーのペットが由来ですが、彼の純粋でまともなところが監督や脚本家に愛されているが故のネーミングなのでしょう。
よく吠えるペットの犬と、よく吠えるジェジー。この二つは限りなく近しい愛すべきものとして描写されています。(最初は何故あんなチーム名なのか全くの謎でしたが・・・)
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エグザべ少尉はマチュの試合ぶりを「一方的に圧されている」と評します。そこをシャリア・ブルは「操縦の難しいGQuuuuuuXで1発も被弾していない」と返すのです。GQuuuuuuXの試合ぶりを見て、シャリア・ブルはマチュを本物だと確信しています。
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物語的にはこれは重大な意味を持ちます。
赤いガンダムとアルファドライブ
赤いガンダムの操縦者
GQuuuuuuXとオメガドライブ
オメガドライブの適合者
シャリア・ブルは公私にわたり赤いガンダムとシャアを追い求めてきた人物です。そして今、ゼクノヴァの謎に至る手がかりがようやく得られた訳です。このチャンスを、シャリア・ブルが利用しないわけがありません。
5年間で恐らくは初の手がかり。それは世を韜晦して生きてきたシャリア・ブルを本気にさせるのには十分でしょう。かくして、GQuuuuuuXの物語が幕を開ける事になるのです。