読書会を経由したマルチ商法。人を騙す構造と手口を知った
私は社会人1年目の頃、渋谷で行われた、とあるSNSマーケティングの勉強会に参加しました。その帰りに声をかけられて知り合った、友人が一人いました。
その友人の誘いで「読書会」というイベントに通うようになったのですが、実はその読書会の参加者ほとんどが、マルチ商法(ネットワークビジネス)のグルでした。
約1年間一緒に勉強し、たまに遊びにも行った友人が、「子ネズミ」として自分を騙そう(=マルチの仲間にしよう)としていたんです。。。
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直前まで気付かない自分もかなりアホですが、マルチの運営手法がかなりシステマチックでした。
自分の経験をさらけ出すことで、騙されてしまう人が一人でも減ればと思い筆を執ります。
「読書会」の中身
冒頭で紹介した「読書会」ですが、参加費500円で下記を行う形式でした。
・(土)の朝、公民館の一室に20~30人が集まる
・【仕切り役】の女性が、読書会の趣旨を説明する
・卓が3つほど分かれ、【自己紹介】と【世間話】を一人3分くらいで行う
・【読んだ本の紹介タイム】が一人5分ほど与えられ、スピーチする
最初の趣旨の説明では、仕切り役の女性が【自分が新卒当時、いかに視野が狭かったか】【この読書会で専門以外の知識を得たのか】【今はスピンアウトして自分がこのリーダーを務めている】といった趣旨の解説をしていました。
共感するところはあるけど、かなりマンネリだったので、いつも本の内容の整理か鼻くそをほじるかしてました。
気になったのは、【仕切り役】の人とは、何となく仲の良い【常連メンバー】がいて、その常連メンバーが新規の方を次々呼んできているようでした。私が「友人」に招かれたときのように。
「課題図書」があった
ポイントになるのは【課題図書】が紹介されていたこと。
著者の方に迷惑になりそうなのでタイトルは伏せますが、なんというか、ウダツの上がらない「社畜マインド(働かされている、将来の目標がなくただ何となく生きている)」の人に刺さるような本が中心でした。
【初級:生産的に働くとは?】
【中級①:100年時代のキャリアとは?】
【中級②:なぜ少子高齢化の日本は危険なのか?】
【上級:テクノロジーを理解できているか?】
ざっくり表現すると、こんな感じで10冊くらい挙げられていたかな?
私はあくまで自分のアウトプットのために、業務に関係のあるマーケティングの本を中心に紹介していっていたので、この【課題図書】10冊読み切るまでだいぶゆっくりでした。
ここで気になったのは、読書会の最後に【アンケート】があり、読んだ課題図書にチェックをつけて参加費と一緒に提出するという作業。
この時は「参加者の傾向見て、会のPDCA回したいのかな?」とか、ノンキなこと思っていました。
「勉強会」や「ゲーム会」というスピンオフも
「読書会」メンバーは、午前に本の紹介を終えると、午後は「勉強会」や「ゲーム会」に参加していました。
私は何かと理由をつけて1年間よくサボっていたのですが(笑)、2年目になって通う頻度を増やしました。
「勉強会」では先ほどの【仕切り役】の人や、【仕切り役】が当初参加していた「読書会」の初期メンバーが講師となって、読書会の内容をより深めた話しをする場となっていました。
ex. 100年時代系の本を読む(読書会) → 将来の夢をステージ毎に書き出して、優先度を割り振ってみる(勉強会)
こちらは、皮肉にも割と勉強になりました(笑)。
ただ、他の参加者のうち「受け身」な思考のひとが多くて嫌でした。学びを本当に本業や複業で生かせているのか?と、常々思っていました。
【仕切り役】や【初期メンバー】は30歳前後で重鎮気取りだし、それを聞く25歳前後の参加者もなんかヘコヘコしている。異様な雰囲気でした。
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他にもロバート・キヨサキの本が5冊提示され(一部は「読書会の課題図書」でも重複)、投資を疑似的に体感する「キャッシュフローゲーム」会、通称「ゲーム会」もありました。
友人含め、先ほどの【常連メンバー】と、都度来る新入りメンバーとで卓を囲み、私は10回ほどプレイしました。
この「ゲーム会」には、初心者の卓に経済に詳しい【先生役】の方がいらっしゃって、手とり足とり教えてくれます。
ゲーム内の様々な所得の違う職業を経験することが推奨され、不労所得が総支出を超えるようにどうやって資産を増やすか、(株買って不動産買って、売却して、より高い不動産買って…みたいな)疑似体験できました。
おそらくこの「ゲーム会」は、「読書会」と同様、マルチ商法メンバー候補を拾う「受け皿コンテンツ」になっていたかと思います。
ついにその日がやって来た
「読書課題」を熟し、「ゲーム会」の参加回数も増え、読書会後に「友人」や【仕切り役】の人とランチに行く機会が2,3回ありました。
すると【仕切り役】の人が言いました。
今週末、私の師事する【あの人】が来て、勉強会してくれるよ。あの人の勉強会は間違いないから。小東さんなら、きっと受け入れてもらえるよ。
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2月某日。私は晴れて【あの人】こと、50歳を超えた敏腕(?)経営者の勉強会に参加。
「コイツァやべえ」と思い、全員と縁を切ることを覚悟しました。
・マルチレベルマーケティング(トップダウンで自分以外の人の手によっても利益が生み出される仕組み)なら、経済的自由が手に入る!
・ダイレクトセリングなら中抜きされないから、粗利率が高い!
・肝心な商材はこの化粧品だ! アメリカで特許をとった素晴らしい企業だから安心だぞ!(雑誌と研究論文を渡される)
こ、こんなビジネスの片棒を担がせるために、友人は1年間をかけて私に読書やゲームをさせていたなんて!!
その日の帰り道、珍しく【仕切り役】が付いてきて、私にこう言いました。
家族の人には相談しない方が良い。自分だけで判断しよう!
このあと、LINEぜんぶ切った。自分だけの判断で。
まとめ:マルチ商法の組織構造と手口
ちょっと長くなってしまいましたが、まとめると下記です。
・「読書会」や「ゲーム会」という形態をとって、人生をより良くしたい・現状を変えたい人を誘い込んでくる
・【あの人】から【仕切り役】、【常連メンバー】まで売上ノルマをこなすためチームぐるみで仲良くすり寄ってくる
・課題図書やイベントの参加回数を記録し、点数付けするといった、マルチメンバー化するフローができあがっている
・「怪しい」と思ったら、速攻で逃げてOK
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ある意味で、私は彼らを利用して自分の学びたいこと学び、抜け出すことができました。
ただ、あの「読書会」には、普段残業ばかりで本当に疲弊している人や、思考停止で自分の将来のことを一切考えられてない人も来ていました。
そんな人たちが、【あの人】や【仕切り役】、【常連メンバー】に搾取されてしまうことを考えると、本当に胸が苦しい。
先日見たアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」で主人公の仲間がこう言っていた。
吐き気を催す邪悪とは、何も知らぬ未知なる者を利用することだ。自分の利益だけのために利用することだ。
ブチャラティ、、ほんとその通りだよ。
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