断食道場~第2章~「ちょうどいい加減を求めて」5日目 【僧侶の苦言】
雷鳴・土砂降りの朝
明け方から激しい雷鳴が響き、土砂降りの雨でした。台風でも来るのかと思うほどでした。さすがに新聞を買いに行くことも諦めました。
いつもと違う日には、いつもと違うことが起こるんだなと思った1日でした。
僧侶の苦言・・・「悲しい現実」
いつも心温まるお話や、ユーモアを交えたエピソードを語られる僧侶が、今朝は徐にこんなことを仰いました。
「この断食道場を始めて半年なります。はじめはそんなに人が来るのだろうかと半信半疑でしたが、いざ始めてみると非常に多くの方にお越しいただいて、本当に驚いています。ずっと満室に近い状態になっていることに心から感謝しています。ただ、すべてが上手くいっているわけではありません。」
何を話されるのかと思っていると、3つのエピソードを話されました。
①宿泊部屋のものを持って帰ってしまう人がいる
②近所のコンビニに行って「買い食い」している人がいる
③自分の泊まった部屋をぐちゃぐちゃにして帰ってしまう人がいる
まさに、法話の時間に僧侶が私たちに向かって苦言を呈しているのです。
少し驚いたと同時に、私は「よほど何かあったのだろうな。腹に据えかねるようなことが昨日とかにあったに違いない」と思いました。
話の内容は書くに耐えないようなことなので省略しますが、驚くようなマナーの悪さに僧侶自身が驚き、嘆き、残念に思ったということがよくわかりました。
法話の時間ですから、𠮟責口調ではありませんし、ましてや私たちに「注意を与える」ような話し方ではありません。いつもの法話と同じ口調・トーンで話されていました。強烈な「感情コントロール力」を見た気がしました。
すべてを学びに変えていくということなのだろう
僧侶はこんな形で法話を締めくくられました。
①坐禅をするから心が調うわけでもない。お経を読むからいい人間になれるわけでもない。自分の目の前の暮らし・生活・行動に向き合うことからしか始まらない。自分の身の回りにあるものすべて誰かのおかげによって作られ、用意されている。着ている服、食べるもの、寝る布団、お風呂のお湯、何をとっても自分一人ではできないのです。だから物を使うとき、行動するときに常に感謝の気持ちを大事にしましょうという仏の教えがあるのです。
②ものを持って帰ったり、コンビニで買い食いしたり、部屋を汚くしたまま帰っていく、決して法律に触れるような悪いことではありません。お金も払っているのだし、ある意味お客の自由だろうという考えもあるのかもしれません。その人を罰することなどできません。
では何がよくないのでしょうか?
それは、その行為が「次にここを訪れる人たちに影響を及ぼすから」なのです。それをした当人にはおよそ罪の意識はないでしょうし、人にどう思われるかを気にしていないことが多いものです。そうなのです、自分はどのように思われてもいいのです。本質は「後の人・次の人」に迷惑がかかるということです。
物がなくなったり、部屋が汚かったりすれば当然スタッフは、次からの対策を考えるます。ルールを作ったり、やたらと口酸っぱく注意事項が増えていくでしょう。作務衣を着てコンビニで買い食いしている姿を見た地元の人たちは「断食道場とはいっても、結局みんな適当にやっているんだな」と色眼鏡で見るようになります。一生懸命取り組んでいる人が大半なのに、ある種の嘲笑の対象になったりするのです。人間は一人で生きているわけではないのです。自分の行為は必ず人に影響を与えるものなのです。
③こういうようなことがあっていろいろ思うことはありますが、本当に悲しく・残念なのは、坐禅・読経・法話などを通じて、私たちが伝えようとしていることが、結局何もえられていない、自分たちの行いが全く力及んでいないという事実です。
まだまだ努力が足りない、やり方にも改善の余地があるのだと思います。
これをきちんと受け止めながら、前に進んでいくこと、それも大事な修行なのだと私は思います。仏の教えを説いていく、広めていくという使命はそういうことなのだと思います。ぜひ皆さんも、自分の行いが人にどのような影響を与えるかを考えてみてください。
人間らしくていいな
お坊さんのお話って、「いい話」だけど「なんか浮世離れ」しているというような印象を受けませんか?
お釈迦様がどうしたこうしたと言った法話にしても、現実社会とは違う次元の話のように思ったりすることありませんか?
私は個人的に今日の法話をとても興味深く拝聴しながら、ここに記そうと思っていました。いかにも人間臭く、現実的な話で、それをどう受け止め、いかに対処していくかというリアルな世界における「心のありよう」を説かれた気がしたのです。僧侶だって人間だもんな。
私はこういうの好きです。
まとまりのない文章になってしまいましたが、皆さんはどうお感じでしょうか?
ちょうどいい加減を求めての断食道場も残りわずかです。
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