<今落ち着いてJクラブの経営について考える①・・・・「コロナによって起きている危機」と「経営そのもののあり方の問題」を 混同してはいけない>

(はじめに)
いよいよGWが始まります。
元来出不精の私は、GWは大体家にこもって飲むか本読んでいるかの生活をしているので「外出自粛・ステイホーム週間」と言われても違和感なく過ごせそうです。
ウォーキングとストレッチだけは欠かさないようにしたいと思っています。

(今こそJクラブの経営を考え直すとき)
Jリーグ再開のめどが立たない中、クラブの経営状況について危惧する声が上がっています。
「入場料」という大きな収入源を失っているのですから、それは当然のことだと思います。
今シーズン終了後には多くのクラブが「赤字転落」するでしょうし、実質的な債務超過クラブも発生することでしょう。(さまざまな財務施策によって、形式上回避はするでしょうが・・・)

私は「今こそJクラブの経営の根本を見直すとき」だと思っています。
その際注意しなければいけないのが、「コロナ禍」と「コロナ以前からの経営問題・課題」をごちゃごちゃにしてはいけないということです。
今回のことで、クラブの経営基盤がいかに脆弱であるかが露呈しています。(うちのクラブに限ったことではありません)
企業として本来あるべき姿の経営を実現するために、全速力で見直し・改革を図るべきだと思っています。ある意味大チャンスだととらえたいと思っています!!

(私の感じていた違和感)
私は、Jクラブ経営者育成コースで学んだ際にいくつかの違和感を感じていました。
当時の私はJクラブの経営に関わったことがなかったので、理解不足だった面も多々あったと思います。
それでも、「いくらなんでも、それはおかしいだろう」と思うことがたくさんありました。

多くのクラブ関係者が口をそろえて話されていたことの中で
以下の4点は特に「大きな違和感」として残っていました。

①Jクラブは、利益を追求している企業ではない。多大な利益を出すよりも、優秀な選手獲得などに支出し魅力的なチーム作りをしたほうが良い。
②「チームの勝敗」に関わらずファン・サポーターから応援してもらえるクラブ経営を目指すべきである。
③「地域密着」を理念とする以上、ホームタウンを重視すべきであり、スポンサー・ファン開拓も原則として地域限定・重視で行うべきである。
④クラブ従業員(フロント・スタッフ)の給与水準や労働環境の課題は、収益力の低いクラブにおいてはある意味仕方のない問題である。

「株式会社」なのに「株式会社」でないような感じがしてなりませんでした。

(Jクラブ経営を最低限「普通の企業」と同レベルに変化させるために)
実際に4年間クラブ経営に携わり、私がもった違和感は「正しかった」と確信しました。
これまで「定説」のように言われていたクラブ経営の基本指針は「間違っている」と自信をもって言えるようになりました。

何が間違っているのか、どう変えなければいけないのか、少なくとも私はどう取り組むかについて、2回に分けて記したいと思います。

①「利益と内部留保」で企業の経営基盤を確立させる
クラブが私企業である以上「利益成長」は当然のことであり、その利益を「次なる投資」と「万が一への備え」のために「内部留保」していくことが企業経営にとって絶対的に必要です。
ここを無視して、利益を最小限にとどめ選手獲得にすべてつぎ込んでしまうことは経営として間違っていると言わざるを得ません。(自転車操業になってしまう理由がここにあります。)

この信念に基づき、改めて明言します。
予算および経営計画の中に「利益成長目標」を明確に掲げ、(分かりやすく言えば、「年率○○%アップ」とか「◇◇年連続増益」などの目標設定)
それに向けたアクションプランを作成し、経営基盤を確固たるものにしていきたいと思います。
内部留保を厚くすること、手元キャッシュをきちんと持っておくという「基本のき」に立ち返るのです。

そして、もう一つ避けて通れない経営課題があります。それは「甘えの構造」からの脱却です。
経営者だけではありません。スタッフ全体で受け止めるべき極めて重要な事柄です。

では、Jクラブの経営は何に甘えているのでしょうか?
それは、リーグと自治体です。
今回も「クラブの危機」に対してリーグは「救済策・案」を検討し始めてくれています。それはそれでありがたいことです。
自治体も様々な形で援助・支援をしてくれています。これも本当に感謝しなければなりません。
感謝をするのは当然のことです。しかし甘えてはいけないのです。
リーグへの甘えは「護送船団方式」への依存ですし、自治体からの支援は「税金」ですから。
「企業としての自立」に真正面から向き合わなければいけないのです。

世の中の全ての企業が苦境に立たされている中で、「誰かが助けてくれる」という発想は捨てなければいけません。
補助金事業やスタジアム使用料の減免措置など、すでに私たちは色々な形で優遇されています。
その恩恵にあずかり続けることで、自然と芽生えてしまった「甘えの構造」からの脱却は、これからスポーツビジネスが一産業として成長していくためには必須要件だと考えます。

②試合がなくても存続できるクラブ=事業・収益の多角化への挑戦を加速する

「勝敗に関係なく応援してもらえる」に越したことはないと思います。それを否定はしません。
ただ、ここでハッキリしておかねばならないことは、それは「提供者(クラブ)の言い分」であるということです。
自分自身に問うてみて、「ずっと弱いもの・負けているもの」を応援し続けるだろうか?私の答えはNoです。
もちろん地元チームには熱狂的なファン・サポーターがいますから、ある程度の顧客獲得は可能です。(本当にありがたいことです。)
しかし、そこで止まっていては大きな市場を獲得することはできません。
スポーツクラブ経営者が「最も重要なコンテンツ」の充実から目を背けてはいけないと思うのです。
「チームを強く・魅力的にするために、①事業を拡大し②利益を出し③投資・拡大再生産を目指す」と明言して経営していきたいと思います。

そして、そのことに加え今回のコロナで突き付けられていることは「試合がなくても存続できる経営」を確立させなければいけないということです。
つまり、事業・収益の多角化の必要性が求められていると言うことです。
(感染症に限らず、自然災害、テロなど試合ができない事態は今後いつでも起きうるのですから。)

この課題に対しては2つの取り組みをしていこうと思います。
まず一つは、これまで力を入れてきたスタジアムグルメの充実や、華やかなイベントによるファン・サポーター満足度向上施策を一段階レベルアップして、「コストから収益化へ・事業化へ」転換していくこです。
さらには「無観客試合」でも収益の出る仕組みの徹底的研究です。(ネット中継時の様々な課金の仕掛がこれにあたります)
これまで、スタグルやイベントを引っ張ってきたリーダーが中心となって、「事業化・採算性」への意識&スキル改革に取り組んでいくことで必ず実現できることだと思います。(他クラブの事例や、取組をどんどん真似し、協働して、より良いものにしていくことで、十分可能です。「同業に学ぶ」は極めて重要なセオリーです。)

もう一つの取り組みは、「サッカーと直接関係ない」収益源・マネタイズの確立です。
そのためには「複数の角度からクラブ・アセットの見直し」を行うことから始めなければいけません。
幸いにして私たちは「トリニータマーケティング」という別会社を作っています。
これはまさに「サッカーとは関係ない領域でのビジネス化」にチャレンジする組織です。(2年半前からの取組が今になって効いてきています。)
形態は違えど、すでにそのような取り組みを始めているクラブもいくつかあります。(ガイナーレ鳥取の「芝生事業」はその一例といえます。)
大企業の後ろ盾のないクラブにとって「収益源の多角化」は命綱になってくると思っています。

このNoteでも何度か触れている「ソーシャルアクション・サイト」「スポーツ×人材領域」「デジタルマーケティング・コンサルティング」などは
すでに取り組みが始まり、少しずつマネタイズの方向性も見えてきています。
スピード感あるチャレンジができるように、社内部門ではなく別会社にして取り組んできている成果が出つつあります。
まるでスタートアップ・ベンチャーのような空気もありますから、優秀な人材が集まってきています。(「事業は人なり」ですから、人材採用が可能となる組織形態を作ることが、事業成功における必要条件となります。)
「小さく生んで大きく育てる」「着眼大局 着手小局」の基本に忠実に、種をまき続けていきたいと思います。


これからどのような形でコロナが終息し、リーグが再開するのかは全く想像がつきませんが、今私たちは経営において非常に多くのことを学んでいると言えます。これを機会に徹底して過去の悪習を断ち切ることで、必ず成果に結びつけることができます。
今までより、より良い未来につなげていきたいと思います。(Build Better Beforeです。)

③④の項目について、明日掲載いたします。

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