AIについての個人的見解


1.前書き

AIを利用したお絵描きツール(Midjourneyなど)に関する情報が増えてきました。私のTwitterのタイムラインにも、AIを利用した絵に関するツイートを時折見かけます。という訳で、今回のnoteはAIの話になります(なお、絵を描くAIに限定した話ではありません)。
なお、私のAIに関する興味については、以下のnoteに少し触れています(正確にはAIではなく、"知性を持った非生物"と呼べるもので、この辺りからAIに対する興味へと移っていったと思います)。

マイクル・ムアコックについて

2.AIに対する私の個人的な見解

個人的に、現在のAIはツールの範疇だと考えています。私個人の感覚ですが、チェス(チェスを引き合いに出したのは、後述する内容のためです)の場合と絵の場合で人間とAIを比較すると、最終的な出力(チェスの場合は指し手を一つに決定すること、絵の場合は完成した絵を差します。なお、念のため言うと、棋士の方と絵師の方をおとしめる意図は全くありません)を比較した場合は同じようなものが出力されますが、出力を決定するまでの過程が人間と異なるという点はチェスの場合も絵の場合も同じだと思います。そして、現在の(知性を持たない)AIはツール(PCやソフトウェア)と同じカテゴリに属すると考え、絵描きAIは最終的には受容されると思います(法的な整備なども必要になると考えられるので、どの程度の時間がかかるかは読み切れませんが、最終的にはモータリゼーションやインターネットと同じようになる可能性があると思われ、さらに文章など、絵以外の創作にAIが利用される方向に向かう可能性もあります)が、どう向き合うかには少し時間がかかると思われます。

3.先駆者の言葉から考えるAIの過去・現在・未来

今回のnoteでAIに関して語る上で、私が影響を受けた先駆者二名の言葉を引用します。一人は、元チェスプレイヤーで、1996年・1997年にディープブルー(IBM製スーパーコンピュータ)と対局したガルリ・カスパロフ氏になります(2014年に来日し、将棋の棋士として著名である羽生善治氏とチェスで対局されています。現在はロシアで民主化運動を行っている政治家であり、2022年のロシアのウクライナ侵攻にも言及した発言があります)。もう一人は、「車椅子の物理学者」として知られ、以前私が書いたnoteでも書籍を取り上げた、故・スティーブン・ホーキング博士。それぞれの著書はこちらになります。なお、どちらもAIの専門書「ではない」点は考慮願います。また、このnoteを投稿した年(2022年)から比較すると、ホーキング博士の書籍は2019年と比較的新しい書籍ですが、カスパロフ氏については書籍が2007年のものなので、少し古いという点は考慮に入れる必要があると思います。

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3-1.AIの過去と現在

カスパロフ氏に関しては、ディープブルーの対局したことが有名ですが、それ以前に、師匠であるミハイル・ボトヴィニク氏が工学者であり、AIに携わる研究をされていたことが影響していると考えられます。
また、カスパロフ氏の書籍によると、ボードゲームであるチェスはコンピューターの発明以前から人間以外に人間の棋士のように指させることが目標とされた歴史があり、実際に人間の棋士のように指すチェスプログラムのプロジェクトがディープブルーの誕生以前に既に存在していたそうです。

人間は機械を発明するが早いか、つぎのステップとしてその創造物をチェスプレーヤーに仕立てようとするようだ。機械式計算とデジタルコンピューティングの歴史を通じて、チェスはその最前線から離れることがなかった。伝説的な偉人の多くがチェスプレーヤーだった――うまかったとはかぎらない――ことが、ひとつの理由なのは間違いない。ゲーテの言葉どおり、つねに「知性の試金石」として位置づけられてきたこともそうだろう。〝思考機械〟をつくった者はほぼ例外なく、その作品が世界一敬われるゲームを習得できるか否か、ただちにテストしたのだった。
(コンピューターチェスの歴史について:ガルリ・カスパロフ)

https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000812622007.html

一九五〇年代にチェスをするコンピュータが登場したとき、科学者の大半は、まもなくこの鉄の獣があらゆる人間のプレーヤーを粉砕すると想定していた。だが五十年後、人間と機械の覇権争いはまだつづいている。
(コンピューターチェスの歴史について:ガルリ・カスパロフ)

https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000812622007.html

第六代世界チャンピオンで私の師匠でもあるミハイル・ボトヴィニクは、人生終盤の三十年をコンピュータチェスプレーヤーの開発に捧げた。単にチェスのできるコンピュータではない。そちらは比較的実現が簡単で、当時すでにめずらしくなかった。ボトヴィニクが目指したのは人間がするように指し手を創造するプログラム、真の人工棋士である。
(ミハイル・ボトヴィニク氏が目指したコンピュータチェスの構想について:ガルリ・カスパロフ)

https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000812622007.html

手短にいえば、ボトヴィニクのプロジェクトは失敗に終わった。何年ぶんもの構想書と理論モデルから人間の初心者より優秀なプログラムが生まれることはついになかったのである。(力づくのプログラムは一九七〇年代の時点でもまずまず有能なレベルにあった)。はたしてコンピュータに人間の創造性と直観をまねることなどできるだろうか? 三十年後の今日でさえ、世界選手権レベルでプレーするコンピュータは主に力づくの方法を頼りとしている。
(ミハイル・ボトヴィニク氏が目指したコンピュータチェスの構想の顛末について:ガルリ・カスパロフ)

https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000812622007.html

負け惜しみのそしりを受けるまえに認めておこう。私は負けるのが好きではない。負ける理由がわからない場合はなおさらだ。現在、件の六局を分析すれば、〈ディープ・ブルー〉が現代のプログラムより優れている点はほとんどなかったのがわかる。ただし、ほんの二、三回の鍵となる場面ではたしかに、IBMのコンピュータはめずらしく絶妙な手を指した。そんな手がどうして第一局を落としたのと同じ機械から生まれたのか、いまだに疑問である。
(〈ディープ・ブルー〉との対局について:ガルリ・カスパロフ)

https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000812622007.html

コンピュータ技術の新たな使い方を見つけ、チェスというゲームの振興を図ることへの熱意は、IBMが壮大な実験を台なしにし、〈ディープ・ブルー〉の電源プラグを引き抜いても失せることはなかった。すでに述べたように、一九九八年に私は新たな実験に取りかかった。人間と機械が戦うのではなく、両者が味方として戦うのである。 グランドマスターは経験と直観を組み合わせ、読みと研究で裏づけしてチェスをする。コンピュータは力ずくの計算と、序盤定跡の巨大データベースにアクセスする擬似研究をもとにチェスをする。
(アドバンスト・チェスについて:ガルリ・カスパロフ)

https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000812622007.html

AIの潜在的恩恵はとてつもなく大きい。AIの能力が、AIのもたらすツールで拡大されたら、どれだけのことができるかは想像もつかないほどだ。
(AIについて:スティーブン・ホーキング)

https://www.nhk-book.co.jp/pr/book/000000817732019/index.html

お二人の著書を見る限りでは、人(人類)はAIをツールとして、どのようにうまく利用するか?という考え方は共通していると感じました。また、カスパロフ氏の書籍から、1970年代の段階で単純なチェスプログラムではなく、"人間の棋士のように指す"という極めて先駆的な考え方があり、(失敗したとはいえ)その考え方を実現するためのプロジェクトが存在していたことに驚きました。

3-2.AIの未来(知性を持ったAIについて)

AIの未来のついてですが、AIが知性を持った場合、どうなるのかについては、想像もつきません。フィクションでは知性を持ったAIはいくつか出てきますが、ホーキング博士の書籍を読む限り、フィクションで出てくるような知性を持ったAIはあまり参考にならないと思います。陳腐な結論ですが、シンギュラリティが起きた時、知性を持ったAIの能力は、想像の範疇を超えてくるのではないかと思っています。

数学者のアーヴィング・グッドは、一九六五年に、人間を超える知性を持つ機械は、自らの設計を反復的に改良できることに気がついた。SF作家のヴァーナー・ヴィンジが言うところの技術的特異点(シンギュラリティ)だ。そんなテクノロジーが、金融市場で賢く立ちまわり、人間の研究者よりも優れた発明をし、人間の指導者よりも人心操作に長けていて、私たちには理解することさえできない兵器を使って人間を征服するというのも想像できないことではない。AIの短期的な影響は、誰がそれをコントロールするかにかかっており、長期的な影響は、AIはそもそもコントロール可能かどうかにかかっている。 ひとことで言えば、スーパーインテリジェントな(超知能を持つ)AIの到来は、人類に起こる最善のできごとになるか、または最悪のできごとになるだろうということだ。AIのほんとうの危険性は、それに悪意があるかどうかにではなく能力の高さにある。
(技術的特異点(シンギュラリティ)について:スティーブン・ホーキング)

https://www.nhk-book.co.jp/pr/book/000000817732019/index.html

火を使いはじめた人間は、何度も痛い目を見たのちに消火器を発明した。核兵器や合成生物学、強い人工知能〔人間のような能力や意識をそなえたAI〕といった、もっと強力なテクノロジーについては、あらかじめ計画を立てて最初からうまくいくようにしなければならない。なぜならそれは一度きりのチャンスになるかもしれないからだ。私たちの未来は、増大するテクノロジーの力と、それを利用する知恵との競争だ。知恵が確実に勝つようにしようではないか。
(スティーブン・ホーキング)

https://www.nhk-book.co.jp/pr/book/000000817732019/index.html

4.おまけ

私が若かった頃、テクノロジーの進歩が指し示す未来は、みながもっと余暇を楽しむ世界だった。しかし現実には、テクノロジーが発展するにつれてできることが増え、人はどんどん忙しくなった。都市にはすでに私たちの能力を拡張してくれる機械があふれているけれど、もしも自分が同時にふたつの場所にいることができたらどうだろう? 自動化された音声は、電話や公共のアナウンスですっかりおなじみになっている。発明家のダニエル・クラフトは、外見を複製する方法を研究中だ。問題は、アバターがどれほどの説得力を持ちうるかだ。 大規模公開オンライン講座(MOOCs)とエンタテインメントでは、対話型の個別指導が役に立ちそうだ。歳をとらず、普通ならできないような演技のできるデジタルな俳優が登場したら、すばらしいのではないだろうか。未来のアイドルは、生身の人間ではなくなるかもしれない。
(スティーブン・ホーキング)

https://www.nhk-book.co.jp/pr/book/000000817732019/index.html

5.参考資料

5-1.ガルリ・カスパロフ

ガルリ・カスパロフ

2022年ロシアのウクライナ侵攻に関する発言

ディープ・ブルー対ガルリ・カスパロフ

知性を持つ機械を恐れるな、協働せよ

ミハイル・ボトヴィニク

5-2.スティーヴン・ホーキング

スティーヴン・ホーキング


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