成功する投資・アンティークコインの知識を深めよう!イギリス編①
みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。
アンティークコインには歴史のロマンが詰まっているので、手のひらの上で歴史を愛でられるのもコレクションの動機になります。
アンティークコインの中で人気があるのは、やはりイギリスのコインです。今回の記事ではコインだけでなく、その背景にある歴史についても解説していくので、壮大なロマンに触れるきっかけにしていただければと思います。
ウナとライオン
コレクターに人気があるイギリスのコインの中でも、最も誉れ高いコインの一つが5ポンド金貨「ウナとライオン」です。1837年にヴィクトリア女王が即位したことを記念して、1839年に発行されたコインです。発行枚数がわずか400枚しかなく、希少性の高さからコレクションする価値も高く、高い値段で取引されている金貨です。未使用品であれば、3000万円程度で取引されることも少なくありません。
ヴィクトリア女王の即位
彼女が在位していた期間を「ヴィクトリア朝」と言い、さまざまな文学作品でも扱われる有名な時代です。産業革命によって急速に社会インフラや経済が発達し、イギリスが世界をリードした全盛期です。
「ヴィクトリア」という名前は現在ではイギリスらしい名前として定着していますが、本来はドイツ由来の名前です。ドイツの小国であったザクセン=コーブルク=ザールフェルト公国出身の母親の名前からもらい、「ヴィクトリア」がミドルネームになりました。ちなみにファーストネームは「アレクサンドリナ」で、ロシア皇帝アレクサンドル1世に由来しています。アレクサンドリナ・ヴィクトリアはロシアとドイツに由来する名前のため、当時はあまりイギリスらしさが無い名前でした。
1830年に国王のジョージ4世が崩御すると、その弟であるウィリアム4世が国王に就任します。65歳という高齢であり、次の国王にはヴィクトリアをと期待していたのですが、当時まだ彼女は11歳でした。彼女も王位を継承できる血縁でしたが、18歳の成人を迎えるまでは摂政が実権を握ることになります。ウィリアム4世にはヴィクトリアの母親に実権を握らせたくない思惑もあったようで、国王として公務を全うしました。(画像:ウィリアム4世)
1837年5月にヴィクトリアが18歳になって成人すると、6月にウィリアム4世が崩御し、ヴィクトリアが女王に即位しました。「ウナとライオン」が記念したヴィクトリア女王の即位の裏側には、こんなドラマがあったのですね。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
現在もヴィクトリア女王の名前が残る施設で重要なのが、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)です。ヴィクトリア女王とその夫であるアルバート公が基礎を築いた博物館で、圧巻のコレクションを見ることができるため、地元の人々にも観光客にも人気があります。
V&Aでは、絵画や彫刻といった美術品だけでなく、宝石や貴金属、陶磁器、ガラス工芸品、ドレスなどの衣装、アンティークの家具などを見ることができます。ここに来ると、ヴィクトリア朝のイギリスがいかに繁栄していて栄華を誇っていたのかを感じることができます。大英博物館やナショナル・ギャラリーに比べると日本では知名度が低い博物館ですが、それらに引けを取りませんし、ロンドンに言ったら一度は訪れておきたい場所です。
ウナとライオンのデザイナー、ウィリアム・ワイオン
5ポンド金貨「ウナとライオン」の人気が高い理由の一つに、ウィリアム・ワイオンというコインデザイナーが手掛けたことも挙げられます。ワイオンは1000年以上の歴史を持つイギリスの王立造幣局に務めた彫刻師の一人で、歴代のデザイナーの中でもトップクラスと言われる天才でした。
「ウナとライオン」は世界で最も美しいコインとも言われており、繊細なデザインが特徴的です。表面はヴィクトリア女王の肖像で、裏面にはウナとライオンが描かれています。ウナは18歳で即位した若きヴィクトリア女王を象徴し、ライオンはイギリスを表しているとされています。女王がイギリスを導いて時代を作ることを象徴するコインと言えるでしょう。
ワイオンが手掛けたものは他のコインも高値で取引されており、後述するスリーグレイセスも人気です。イギリスのコインを集めるなら知っておきたい重要人物なので、ワイオンの名前も覚えておきましょう。
VIGO 5ギニー金貨
アン女王時代の1703年に発行されたVIGOの5ギニー金貨は、年に1回オークションに出品されるかどうかのレアものです。肖像が描かれている表面に「VIGO」と刻まれているので、通常貨との違いを一目で判別することができます。
現存しているのは10枚か20枚といった希少価値が非常に高いコインです。アン女王時代の5ギニー金貨は他の年にも発行されていますが、VIGOは歴史的な背景も特殊なため、1枚でも1億円を超える値段で取引される代物です。
スペイン継承戦争とアン女王戦争
1701年~1715年までの間に起きたフランス・スペイン連合軍とイギリス・オランダ・オーストリア(神聖ローマ皇帝)・プロイセンなどの連合軍との戦争を「スペイン継承戦争」と言います。アン女王は1702年~1707年に在位し、この戦争の期間と重なっています。
スペイン継承戦争は、フランスのルイ14世が孫のフェリペ5世にスペイン王を継承させようとしたことに端を発しています。それに対して神聖ローマ帝国のハプスブルク家のレオポルト1世は次男をスペイン王にしようとします。他にもスペイン王室との血縁関係を理由に王位継承権を主張する者が登場し、ヨーロッパ中を巻き込む戦争となりました。
これと並行して、1702年にはイギリスとフランスがアメリカの植民地をめぐって争う「アン女王戦争」に突入します。両国の植民地戦争はその前からありましたが、フランスがアメリカのスペイン領を継承することにイギリスが反対したことで戦争となりました。
つまり、オーストリアのハプスブルク家VSフランス、アメリカの植民地をめぐるイギリスVSフランスの戦いが同時に並行していた、という状況です。
結果的に、フェリペ5世はスペイン王として認められてスペイン・ブルボン朝が始まったものの、スペインとフランスの合同は禁止され、ハプスブルク家にも利がある形で収束しました。しかし、フランスはイギリスにアメリカの植民地の一部(現在のカナダ)を奪われるなど、実質的に最も大きな利益があったのはイギリスです。その意味で、これらの戦いの勝者をイギリスと考えることもできます。
植民地の獲得は、その後のイギリスの植民地帝国としての発展の基礎となりました。スペイン継承戦争の戦場にはアン女王自らも赴き、軍を激励したこともあるそうで、強いリーダーの下で国が繁栄したのだと考えることもできるでしょう。
VIGO湾の海戦での勝利
アンティークコインのコレクターや投資家が押さえておきたいのは、1702年のVIGO(ヴィーゴ)湾での海戦です。イギリスとオランダの連合艦隊は、この海戦でスペインとフランス連合軍に勝利しました。そのとき、スペインの艦隊から持ち帰った金で作られたのが、VIGOと刻まれたコインです。金は約3キログラムしか無かったため大量にはコインを作ることはできず、たった20枚の発行となりました。
発行枚数が非常に少ないだけでなく、「イギリスが勝利を記念してスペイン艦隊から持ち帰った金で作った」という歴史を証明するコインであることも、VIGOのコインの価値を究極のものに押し上げています。億円単位で取引されるため、誰にでも勧められるコインではありませんが、オークションなどを通じて人生で一度はお目にかかってみたいコインと言えます。
まだまだイギリスについてみなさんに知っていただきたいことがたくさんあります、次回も引き続きイギリスについてお伝えしていきます!
みなさんにアンティークコインで幸あれ!
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