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言葉にならないときには
少し前の話。
ふと目に留まったWeb記事にこんなことが書いてあった。
・ヘアドネーションは本当に生きやすい社会を作っているのか?
・一生懸命髪を伸ばして、『私はヘアドネーションをしました。いいことをした』は本質的な解決ではない
・『善意』が無意識のバイアスをひろめているのかもしれない
その時、私は2年半かけて伸ばした髪を切るという個人的にはちょっとしたイベントを控えていて少しウキウキしていた。しかしこの記事を読んで冷や水を浴びせられた気持ちになった。それは、正にこれから自分がやろうとしていることをなんだか否定されたような気になったからだ。
内容が気になり早速図書館で予約をした。
そして本が手元に届いたのは髪を切ったあとだった。
「31cm」というタイトルの本にはヘアドネーションに関する基本的な情報、活動に関わる4つのカテゴリーに分類される人たち「レシピエント(とその家族)」「ドナー」「美容師」「医療者」へのインタビューが掲載されており、最後にはNPO法人ジャーダック理事の方々の想いも綴られていた。
そもそもウィッグが必要な状況とはどんなもなのか、ウィッグを受け取ってからの生活とは、レシピエント本人や家族の気持ち、レシピエントの周りの人達の反応、ドナーの気持ちやヘアドネーションに対するスタンス、ヘアドネーションが果たす役割と現状、マイノリティが本当に生きやすい社会とは、無意識のマウンティングなどなど。ヘアドネーションに関して肯定的な意見も否定的な意見も盛り込まれており様々な視点に触れることのできる一冊。
せっかくこの本に出会ったのだから感じたことを言語化したいと思った。しかし、うまくまとまらなかった。
どんどん思考が拡散して色んな思いが浮かんできては消えていく。自分の視点も行ったり来たりでグラグラしっぱなし。そしてなんだかちょっとモヤモヤする…。
それでも何とか感じたことや思いを言葉にしたいとしばらく格闘した。しかし、全然まとまらなかった。
そこで、ふと思い立ち一旦言葉にするのを手放すことにした。
たぶん、今はまだ言葉にならないときなのだろう。
そして、近くにあったカードを眺めていると、この2枚に目が止まった。
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カードを見ていると不思議と拡散が収まり気づけば自己との対話へ。まだきれいな言葉にはなっていないけれど、心が感じていること反応していることに少し近づけた。
『言葉にならないときには、言葉から離れる』
そんなアプローチも時にはありなのかもしれない。