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沙慈•クロスロードという男

 初めまして。なんちゅうこったと申します。拙い文章ですが お付き合いいただければ幸いです。
 
 さて、私なんちゅうこったは最近友人と「機動戦士ガンダムダブルオー」を視聴しました。この作品は昔から大好きな作品で幼い時から何度も見返しており、総集編も含めたらもう7周はしていると思います。このアニメはロボット(モビルスーツ)やキャラクターのビジュアルがかっこいいだけにあらず壮大なテーマや人と人がわかりあうことの大切さ、人間ドラマを通してのキャラクターの成長と、魅力を上げると枚挙にいとまがありません。今回はそんな魅力的なキャラクターがたくさんいる中から「沙慈•クロスロード」という男について深く考察していきたいと思います。

以下、「機動戦士ガンダムダブルオー」の重大なネタバレを含みますのでご注意下さい。

本編ではあまり見せなかった表情

 さて、沙慈について書いていくわけですが1st-2nd序盤の彼を一言で表すと良くも悪くも「普通」の青年だと思います。世界が「ソレスタルビーイング」による武力介入によって揺れ動く中、それをどこか遠くの出来事と捉えてガールフレンドのために日々アルバイトに励む。どこにでもいる男の子って感じですよね。シリアスなダブルオーの物語の中で度々入る沙慈とルイスの日常平和パート、放送当時はこれいるか?なんていわれていたらしいですがこの頃の彼は「世界で起こっている紛争を可哀相、ひどいと思いつつもどこか無関心な我々」を投影しているような感じがしました。日本という国は国内外で争いが起こらず人々は日々平和を当たり前のように享受しています。アフリカの子供達や中東の戦争、酷い話だと思いながらも遠い、まるで別の世界の出来事のように捉えている人が多いことだと思います。沙慈というキャラクターはそういう視聴者の立場に立ったキャラなのだと私は解釈しています。

 ティエレンタオツーの暴走などに巻き込まれてソレスタルビーイングの存在を感じつつそれでも世界情勢に無頓着だった彼が「戦い」と向き合わざるを得ない出来事が起こります。ガンダムスローネによる無差別攻撃によって恋人ルイスが家族を失い、自身も片腕を失ったこと、また戦争屋アリーアルサーシェスによる姉の殺害です。1st後半の彼は怒涛の勢いで大切なものを失っていきます。特に入院しているルイスを励まそうと、彼女が欲しがっていた指輪を持ってきた時、ルイスがもうつけられないのと言ったシーンは思わず泣いてしまいました。

 そこから2ndに突入し、彼はなし崩し的にトレミーに乗船するわけですが、ソレスタルビーイングに対して強い憎しみを抱きます。彼がカタロンの基地を脱走したことで多くの命が失われた時、彼は視聴者からいわゆる「戦犯」的な扱いを受けて強く非難されていました。しかしあくまでも私の解釈ですが彼は視聴者の分身的な存在です。今まで争いとは無縁な生活を送ってきて、ある日突然大切な人々を失った状態で争いを引き起こした当事者たちに協力することができるでしょうか?2nd序盤の彼の行動は裏目に出て多くの人に迷惑をかけることが多かったのは事実ですがいきなり戦場に一般人が立たされたらと考えたら彼の行動(自分を巻き込まないでほしい)というものは至極当たり前の考えだと思います。彼は心のどこかで「戦い」という一線を越えることをためらっていたともとれます。

 沙慈の魅力的な部分は2nd後半に詰まっていると思います。引き金を引くことができず、周りに迷惑ばかりかけている自分に苛立ち刹那に半ば八つ当たりてきな行動をしていましたが、必死に戦い、世界を本気で変革しようとしているCBメンバーをみて、彼は「引き金を引けない自分」を受け入れ、敵軍にいるルイスを取り戻す「自分の戦い」に身を投じるようになります。沙慈が覚悟を決めた時はようやくかと思いましたが、戦いから逃げ出さず、自分の罪と向き合った上で刹那と共に戦場に赴く彼にはもはや自分だけが平和ならいいというかつての弱い彼の姿はありませんでした。そして、個人的に彼の好きなシーンは復讐を果たそうとアンドレイに刃を向けるピーリスを止めるところです。復讐をしても誰も喜ばない、こんなことをしていたらみんなおかしくなってどこにも行けなくなる。戦争で多くのものを失った彼がこのセリフを言えるようになるのはひとえに彼の成長の賜物でしょう。沙慈というキャラクターの優しさが強く現れたワンシーンだと思います。また、レグナントにガガが突撃した際にルイスを守るためにGNマイクロミサイルを撃ったところも、彼のルイスを助けたいという強い思いが伝わる良いシーンだと思います。最終的にルイスとわかりあうことができ、彼女を取り戻せた時は涙が止まりませんでした。
 
 結論、彼はガンダムシリーズでも屈指の成長を遂げたキャラクターだと思います。「自分にできる戦い」をまっとうする姿は我々も見習わなければなりませんね。

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