見出し画像

静観すること

休日。
久しぶりにこちらからラインしてみる。
遠く離れた次男と2、3回ほどのやりとり。


転職したばかりの息子は、昨日、無事に給料日を迎えた。仕事終わりに先輩方と飲みにも行ったらしい。

これで、ちょっとひと安心。


『今日付けで退職しました』と、短いラインが送られてきたのは昨年の秋。

一瞬、読み間違えたのかと思ったが、だんだん胸の辺りがキューッてなるのを感じた。
あまりにも突然すぎて…

わずか一行のラインに込められた、
息子の今を
自分なりに受け止めようとした。
駆けつけようかと、
一瞬、頭をよぎったが、
それは違うな、、、とすぐ思い直した。

まずは食べることに困らないようにとお米を送ってみたり。
沈み込んでいないだろうかと
勝手に気を揉んでみたり。

何かしてないと、こっちが落ち着かない。

当の本人は、次の職場を探すでもなく、お金はあるから大丈夫だよ…って。
しばらくの間、失業手当と貯金をやりくりしながら生活を続けた。

時折、息子から送られてくるラインの画像は、向こうの方に小さく見える富士山だったり、目の前に広がる由比ヶ浜だったり。
時にはある日の晩ご飯だったり。

息子の周りには心地よい時間だけが流れていた。元気だよ〜っていうメッセージが伝わってきた。

ようやく重い腰をあげたのは、桜の開花頃。

転職活動を始めて間もなく、最終面接まで漕ぎ着けたらしい…と連絡をくれたのは、本人からではなく、お兄ちゃんから。進捗状況は、お姉ちゃんから連絡をもらっていたので、ごく自然な流れだった。

末っ子の特権というのだろうか…みんなほっとけないのだ。
むしろ三人が繋がっていることの方が嬉しかった。

本人から連絡をもらったのは、内定が出た日。

数日後、化粧箱に入ったお酒が送られてきた。
いつもありがとう、、、と印刷されたメッセージカードも添えて。

らしくないことをするなぁ…と、
嬉しい反面、本人には言わないけど、そんなことにお金を使ってる場合じゃないでしょ…って、、、思ってしまった。

お礼のメッセージをラインで送ったら、
「初めてネットショッピングをしてみたよ」
と、あっけらかんとした返事が返ってきた。クレカでする初めての買い物だったらしい。

給料日を迎える頃には、貯金も残りわずかとなっていた…にも関わらず、そんなスリリングな生活を送っているのに悲壮感などは微塵も感じられない。

実際、少しお金を振り込もうとしたけど、断られた。
そこだけは譲らなかった。


後で、なんて失礼なことをしようとしたんだろう…と後悔した。
こっちが早く楽になりたかっただけだ…

静観するのも結構エネルギーを使うもの。そんなことを今回の出来事で知る。

きっと、親の見てないところで必死だったに違いない。子どもとしてのプライドもあるだろうし…

離れていて良かった…とつくづく思う。
余計なお節介を焼かなくて済むし、
全てが見えない分、相手を思いやれる。
想いが強すぎても鬱陶しいし、その加減が難しいのだけど。

もし、子どもの立場だったら…と、置き換えるとわかりやすいのだろう。

自分だったら確かに過剰な援助は、まっぴらごめんだ。

自分の力で生きていくって大変だけど、素晴らしい。
息子は今、それを実感している。


今週末、息子からU-NEXTで配信中の映画を勧められた。レンタルしたから観てみて〜と連絡をくれた。

洋画・・・アクアマン/失われた王国


夕食後、夫と視聴していたが、30分も経たないうちに隣で寝息を立て始めた。
まあ、このままそっとしておこう。

静観するのも、余計なお節介はしないことも学んだばかりだ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

















いいなと思ったら応援しよう!