箱根弾丸タンデム
「眠いのわかるけど、もう中央道混むから」
5時起きでおにぎりを作った彼に手を引っ張られ、上体を起こす。
ううん、とかふうんと返事をする。
ストーブの香り。猫たちのぬくもり。
神社で授かったばかりのお守りが切れてしまった。
彼と模様が対になっているのだ。
私はがっかりした。
彼はスマホなんかにつけるからだと言い
私もそうだねと答える。ごめんなさい。
それで、もう一回授けてもらうため箱根に弾丸タンデムをすることになったのだった。
途中休憩を挟んで箱根へひとっ飛びし、
参拝を済ませた。外国人ばかりだが、平日だというのに大混雑していた。
無事、失ったお守りを授かり
私達は息つく暇なく高速へ乗った。
海老名は私の大好きなサービスエリアだ。
帰りは日も照り、あたたかくなったので穏やかな気持ちで私たちはぶらぶらする。
彼はちいさくてかわいいやつを知らなかったが、私が好きなキャラクターの見分けはつくようになった。
パンでも飲み物でもなく、キャラクター売り場へずんずん進み
「一個だけ残ってた」と、アクリルキーホルダーを私に教えてくれる。
私は値段を見て躊躇するが、
彼は「いいこやから、買ったる」とそれを手に取った。
その横の棚に、雪の妖精と呼ばれる鳥のグッズがあり
それを指さして「好きなの、選んだらいいよ。でもスマホにつけたらまた千切れるからストラップ以外ね。」
と言ってくれた。
私はスマホにつけるつもりだったので不満の声をもらすが
真剣に選んだ末にやわらかい素材の小物入れにした。白い妖精のかたちをしている。
フードコートであたたかい蕎麦を食べ、彼の握ったおにぎりをせがみ、コーヒーを飲んだ。
シマエナガやアクリルキーホルダーを袋から出して眺める。
そして最後に、クリーム入りのメロンパンを食べた。
のんびり走り、まだ明るい時間に帰宅できた。
私達は手を繋いだままラグに横になる。
ストーブの音。猫たちが集まる。
灯油販売の音で彼は飛び起き、部屋着のまま飛び出ていった。
起きた時にもまだ手を繋いでいたので、私は嬉しくなる。2時間の昼寝。
「一緒にいるとよく眠れるね。」
彼に言う。
「箱根、疲れたでしょう。お守りもキーホルダーもみんなありがとう。楽しい休みだったよ。」
彼はうん、と一言頷く。
さて、プリンでも作ろうかねと彼はのびをした。