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未婚メス力実践。遅寝遅起きの休日。

男性とのあり方を自分に落とし込む前は、
私はヒステリックに怒り
またはふてくされて
相手に機嫌をとってもらうのを待っていた。
まるで、私が一番なりたくなかった毒親のように。



不定期休みで、勤務時間も
帰宅時間もまちまちだ。
定時にあがれることは、ほぼない。


駐車場で待たせる日が多くなり
彼の方も状況が変わったりで
お迎えがある日はしばらくなかった。
あっても乗り換え駅とか。


婚約中とは言え未婚メス力を徹底する身として
私は、追いかけられる側のふるまいに
彼の安心電波基地局側としてのエッセンスを
少量まぶしている。

それは、彼を試しているのではなくて
厚かましい自分を封印するためと
彼に2人の関係性の距離感をはかってもらうための施策である。



「男性は誰かの役に立って初めて幸福を感じる」
と、さまざまな心理学や恋愛関係の書籍にある。
それが、お迎えを頼むことや風呂掃除や料理などの家事を任せること
家電などの購入を相談することに値するらしい。

本当にそうだ。
最初は書籍にある小さなお願いからはじめ
徐々にステップアップしていく。
一緒に住む前なら、LINEが手っ取り早いかもしれない。
私もそうだったから。

「LINEをマメにしてくれて嬉しい」
「あなたはマメで優しい気遣い屋だ」
と、相手をそう思い込ませる方式で攻めていった。

「声が聞けて嬉しい」
「あなたとの通話が好き」
「少しでも声が聞けたから、元気出た」
とか。

これを繰り返していくうちに、
習慣になっていった。
彼を頼る私。私のお願いを叶える彼、という図式だ。


LINEで信頼関係を深めることはできないし
ただの連絡手段に過ぎない。
そのことを念頭に置いた上で
会った時に全力で愉しんだ。

気付いたら、彼は先回りして
お願いを叶えてくれるようになった。
私がいいだす前に
「君が前言ってたから」
「君が好きそうだと思って」
「君のために」
と。

私は胸があたたかくなった。
例え的外れだったとしても
彼のその気持ちが嬉しくて
どんな時にも否定しなかったし、
「お返ししなくちゃ」と媚びることもしなかった。
そうすることが、二人の関係を悪くするどころか
どんどん柔らかくあたたかいものに
昇華させていくのが実感として分かった。

「どうしてあなたは」と非難せず
「私はこうしたい」と笑うことは
最大の攻撃であり、特効薬だった。



ど本命彼氏にも都合がある。
状況を見極め、お願いを控えて
彼を休ませることは大切である。

会話量でそれがわかった。私たちの場合は。
だからそういう時は、
私は黙して自分のことだけしていた。
彼を見送らず、セックスの誘いもせず
彼からのスキンシップに過剰に喜ばず。
ちょっとそっけない、くらいにするのだ。
同棲しているからなおの事、
正式なその日までは追いかけてもらう必要がある。


そうこうしていたら、珍しく彼は私を駅まで送ると言った。
私はぼさぼさ頭だった。
前日も遅かったのだ。
部屋は散らかっていた。やろうと思えば出来るし
一人暮らしの時には無理にでも綺麗にしていたけれど
同棲中にそれをすることが
どう2人に影を落とすか私は十分わかっていたのだった。


ごはん。
適当にコンビニで何か買うか、
中抜けしてと思っていたけれど
お弁当を持たせてもらっておどろく。
夜勤明けの落ちくぼんだ瞳で、
「ちゃんと食べなさい。お昼に。」
と彼は言った。

駅まで指を絡めて行ける
と思ったけれど
途中でヨドバシの配達車とすれ違い
「今日受け取らなきゃだめだから」
と言って
彼は申し訳なさそうに引き返していった。

私は、ありがとうと言って手を振ったあと
振り返らずにイヤホンを耳に押し込んだ。



駅への階段を上がる途中で
彼が追い付き、
改札まで見送ってくれることになった。
私はうれしくてにこにこしてしまう。

人波が途切れたのを彼が確認し
いってきます、を交わす。
いいなあと思う。
待っていてくれる人がいるというのは。
あんなにシャイでスキンシップをしなかった彼が
ここまで抵抗なくこうしてくれるのも。



夜。
退勤前にお弁当をかきこみ、
彼においしかったと送ると
「ちゃんとお昼に食べてほしかった」と返事があった。
私は胸が痛んだ。
ここは、彼には想像のできない現場なのだ。
昼食をとることができない、という背景を
一般常識で信じがたいだろう。当事者以外は。

雇用側の責任が大いにあるけれど
そこに勤め続けているのは私の責任でもあるので
私は気持ちだけを受け取る。ごめんね。


彼はビルの前で待っていた。
私の分のヘルメットとグローブをくくりつけて。
貴重なお休みの、時間を割いて。
疲れもふっとぶ。

どこに寄るわけでもないのに、
都内をすいすい進むバイクにまたがって
彼にぴったりくっついて帰れるのは
この上ない喜びだった。
それでそう言う。たのしい。幸せ。

「それは良かった」
と、彼は言った。


翌朝はのんびりだったけれど、
彼は私をデートへ連れ出してくれた。
やっぱり、バイクを出して。

空気圧を調べたり、
からあげを食べたり
たいやきを分けっこしたりして
PCを見に行った。
彼は店員さんをつかまえてあれこれ質問し
機種を決めてしまった。
決断するのが早い。

省スペースのためにラップトップがいいのではと言ったが
彼は「君がやりやすいようにデスクトップにしよう。
費用も抑えられる」と提案してくれ、
私は賛成した。
「キーボードは光るやつにしてね」と言うと
彼は請け合う。たのもしい。

ただ、モニタや配線の兼ね合いもあるからと言って
購入は後日、とし一旦持ち帰る。
私は彼のそういうところが好きだ。

ずっとゲーミングPCが欲しいと思っていた。
ノートではなくデスクトップがよかった。
ただ、これまでの環境下では
自分の希望は通らなかったし
そもそも置くスペースがなかった。
それで、さまざま諦めていたのだった。

彼の持つモニタと
新しく購入するモニタを
ふたつ並べてゲームをしたり、作業することになるけれど
それは私が昔描いていた「書斎」そのものであったので
私はnoteを書きながら驚く。

夢がまた、叶う。


「ずっと夢だった。またあなたに叶えてもらえる。
ありがとう。」
ラップトップをかたかたやりながら言うと
彼はあまりピンときていないようだった。

それでも、きちんと響いてるのが私には伝わる。


遅く寝て、遅く起きて。
デートをして帰ってくる。
そんな穏やかな日々は幸せだと思う。

ただ、幸せは努力をする必要がある。
目的を見間違えず、私はつづけていく。
必ずかなうと知っているから。

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