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トム・クルーズという”現役の生き様”

さて、先月5/27より公開となった『トップガン:マーヴェリック』が公開され約1週間、初週興行収入はトム史上では『宇宙戦争』『MI:6フォールアウト』越えで、映画全体で見ても『ボヘミアン・ラプソディ』などにも届かんとする歴史的ともいえるレベル。しかもあらゆるレビューサイトでハイスコアを獲得。批評家からすら良い反応を得ています。私はジャパンプレミアを見ながらこの盛況ぶりに『いや、これは公開週は混むから避けよう』とか言った癖して、27日の早朝からシネコンが開く前から待機して開くとなぜか小走りで入るとすぐさまグッズを全部買い、一番最初のIMAX公演をいつの間にか見ていましたとさ。いや、でも今はグッズ完売がいっぱいらしいですからよかったです。

note界隈でも見た方が多くなってきたのでよいぞよいぞと思いながら書いています。

マーヴェリックの感想は1万字近く書いたので以下から。

・マーヴェリックは"ロートル"と"ルーキー"に向けた映画。

世代交代っていうじゃないですか何事も。年を取ったおじんおばんは下がって、若いのが継いで行く。『昔は(特にバブル世代)バリバリだったんだぞ』と息巻いても身体は老いてしまって疲れやすくなったり、若者は『これからは俺たちの時代だよ、おっさん』ってな具合でロートルと呼ばれる世代は次世代への交代と隠居を余儀なくされていくのですが、マーヴェリックはそんなロートルへ大きなエールを送ったものと思います。私が現在アラサー、父がトム同様59歳。父と昨日酒を飲みながら電話で夜中の3時まで『トップガン談義』をしていました。私は3歳の時に他の知育アニメよりも先にトップガン(86')を見てしまい(ベッドシーンは『うわ、裸でキスしてる!』以外よく分かってなかった)、子供のころからヒーローはウルトラマン(の方が後でした)やディズニーのヒーローではなく、なんだか最初からトム・クルーズでした。そして彼が乗るF-14Aのカッコよさにしびれ、戦闘機も好きになり、いつしか父と子はセリフとシーンをそらで言えたり覚えているほどトップガンや洋画好きになったのですから、昨日の談義は終わるところを知りませんでしたね(笑)最後なんて1のビーチバレーで変なカッコよさを見せたスライダーの話で盛り上がってました。

さて、そんな親子の年代差くらいあるトムはハリウッド映画、それもアメリカ映画のスタンダードスタイルをこれでもかという位突き進んできました。デビュー作は21歳の『卒業白書』。以降トップガンなども経て『デイズ・オブ・サンダー』『カクテル』『ザ・エージェント』勿論『MIシリーズ』、しかも年を越えるごとにそのノンスタントアクションは劣るどころかよりキツいものになっています。今回だってスーパーホーネットに役者は皆搭乗しましたよね。しかも予告で観たMI:7ではなんか汽車と一緒にバイクで崖から飛び降りてました。どうなってんねや・・。彼が人間なのか甚だ疑いたくなりますが、60を迎えんとするトムは未だ現役。肉体を見れば一目瞭然。1のビーチバレーの時よりもっと引き締まった体。思わず『MI;5ローグネイション』(15')で最初にシンジケート側に捕まって上半身裸にされて吊られているシーンでも私は彼の筋肉に集中してしまい、話に集中できませんでした。聞けば1日5時間、それもメニューを替えながらのトレーニングだとか。

そして一方ルースター(マイルズ・テラー)たちを中心とした若者組。最初はマーヴェリックをちょっと舐めてかかるトップガン卒のエリートだけどルーキーたちです。最初は邪険にされるマーヴェリック。そんなルーキーたちにマーヴェリックはヴァイパーよろしく早速型破りに演習戦で楽勝に勝って見せる。『つべこべ言わずについてこい』そう背中で語ります。凄まじい難易度をハイスピードで越えていかねばならない作戦も、自身の記録をもってして成功させてみせます。ここまでまるでスポーツ映画でした。でもこれってなんだか、『マニュアル通りにやろうとして上手くいかない新人を、経験豊富なロートルが実演で売り上げを作る』現場みたいなんですよね。私自身、父の経営する販売業で社員として働いていますが、新しく来る子たちってすぐ辞めちゃうんですよね。うちの業種が特殊なのもあるのですが、みんな最初は夢や自信をもってうちにくるんです。でもお客さんも色々多種多様。途中でそれが叶わない(実際は諦めている)と知って挫折し、やめていく。そんな光景を何度も観てきました。その度、勿体ねえな、と思っては、ビルの外階段で煙草の一つも吸おうとしたら張り紙に『禁煙』だとか。時代は変わったねえ、と平成初期生まれの私ですら思います。『ローマの休日』でのヘプバーンだってカフェで煙草吸ってたのにさ!

マーヴェリックは無人機にいずれ取って代わられる空についてこう答えますよね。『でも、今じゃない』と。この言葉がマーヴェリックという映画の根幹です。86年を生きた人たちが老いても、まだ終わりじゃない。退役するには、空から降りるには早すぎる。まだマッハ10を目指していい。そしてそのキーワードに呼応するがごとく敵基地でオンボロのF-14Aが登場。それに乗り込み、最新鋭五世代機Su-57と戦い勝利する。ですが離陸時前輪は吹っ飛ぶわ弾数も何もかも無いしアナログだわ、キャノピー飛ばねえわ、もう全部旧世代だから着艦も胴体着陸。でもそれがいいんですよね。人生の後半なんてきっと胴体着陸の連続。とうの昔に前輪なんて吹っ飛んでるんです。スーパーホーネットのようにはいきません。この映画を観た4,50代以上の先達は特に背中を押されたのではないでしょうか。かつて見た青春の景色を思い出すように、あるいは、まだ自分の空を自分で区切らずに飛んでいいことに。そうです、トムはきっと自分がハリウッド映画の最前線で誰よりも危険なアクションを行い続けることで『まだまだいける』ことを示しているし、それをみんなに見せている。ロートルはそれを見て「俺たちもまだまだいける」と感じるでしょうし、若い子は『負けてらんねえ』と息巻く元気をもらえる。マーヴェリックはエンターテインメントでありながらそんな、二世代に向けた『エール』そのものの映画であり、トムの今を生きる『生き様』をあらわしているのです。

そして、盟友アイスマンが最後に声を振り絞って言いますよね。

俺とお前、どっちが最高のパイロットだった?』って。

アイスマンは劇中死没してしまいますが、彼だって病に侵されながらも現役を貫いたんです。

・彼は宇宙にだって行くだろう。

トムはNASAとも協力したとかしてないとかの話をよく聞きますが、まあそうであっても私は驚きません。彼なら宇宙に行ってまたヤバいアクションの1つ軽々撮ってくるだろう。そう思うんです。戦闘機も、F1レースカーも、商社マンも、バーテンも、スパイも、ヘリコプターもなんでもできる、なら今更宇宙に行ったって、何もびっくりしません。『トムなら行くさ』って、笑って言えます。そこに年なんて関係あるでしょうか?彼はきっと80歳になろうと、現場で戦っている気がするんです。老人になろうと、CGに甘えず、第一線をまだまだ戦い続ける、そんな永遠のヒーローを自覚も、そして無自覚にも行う気がするんです。映画がどんなにCGで誤魔化しても、誤魔化せないのは役者の生き様です。舞台にひとたび上がった役者は、その身一つで自分を表現しなければならない。その声で、その体ですべてを表現するんです。彼は役者としてプロフェッショナルですし、映画に対する熱意、映画業界の事を、嘘偽りなく誰よりも考えている役者の1人だと考えています。

だから厳しくもなる。いたずらに怒鳴りはしない。でも、自分たちの意識を高めていない仲間には本気で怒る。想っているからこそ本気でぶつかるんです。彼のプロフェッショナル精神についていけるスタッフはわずかかもしれない、でもその精鋭こそが映画業界に少なくなりつつある『本当の生き方』を提示できる映画が創れるのだと思います。

・最後に。

私は30という数字におびえていました。若いくせに、中途半端に年を食ってもいて、若すぎることもない。かといって年寄りでもない中途半端な時期です。でも、私のヒーロー、トムは昔からずっとVHSやスクリーンで教えてくれてたんですね。『自分の生き様を貫き通す』その大切さを。

今回マーヴェリックを見た後、しばらくほてりがおさまらないほど素晴らしい映像体験をしましたが、より、彼が私のヒーローで間違いないのだと確信した、そんな日でした。

皆さん『マーヴェリック』を見たなら自分の心のうちのドッグタグを見てください、きっと色褪せも錆びもしてないはずですよ。

お付き合いいただきありがとうございました。





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