沙花叉クロヱ『Hurt You』を少し解析してみる。

今日は紹介ではなく楽曲のことをちょっと考えてみようと思います。

あ、メンバー登録はこちらから。

クロヱさんはホロライブ6期生ことHoloXの一員として半年前デビューされた新人のメンバーです。ほか、ラプラス・ダークネス、博衣こより、鷹嶺ルイ、風真いろは(敬称略)を含めてコンセプトユニット/秘密結社HoloXとして活動しており、ラプラスさんとクロヱさんは人気がやや飛び出ていて半年で80万人ほどの登録者を獲得しています。ホロライブも1/1200といわれるタレント選出率です、それぞれできることもハイレベルさを求められるようになってきたのでしょうか。

ともかく、なぜ今回は人物紹介ではないのかというと、クロヱさんは自作で楽曲を現時点で3曲出されております。作曲の勉強をしてみる!とのことで私も興味がわいて追いかけてみていたのですが、結果現時点まで3曲できていて、いずれも短尺の小品ではあるのですが、私は今回出てきた3番目の曲である『Hurt You』がとても好きで、一応音楽を副業でやる身としてたまにはそれらしいことをしてみようと思いました。

・『Hurt You』

歌詞が確かメンバー限定だったかもしれないので掲載しないのですが、この前曲にあたる『耀かし(かがやかし)』は大切なものの喪失や死をテーマにしたもので、歌い方も低域を主体とした歌唱法でした。曲想など深いことはやはりメンバーの方で語られておりますのでメンバー配信を確認していただけるとありがたいのですが、今回は悲恋というか自己と他者の関係性における歪みを現しているようです。ゴシック調のテイストが前面に取り入れられており、最初のエフェクト加工でのモノラル演出(ラジオEQかも)が光ります。

コード進行で典型的なのはモチーフ(その曲の看板となる複数音のメロディパターン/リフに近いもの)である、反復の「Hurt You」と繰り返す歌詞・サビの部分です。ここはディグリーで説明しますが、Ⅱ→V→Ⅵの典型的ながらダークな進行から、ⅡおよびⅥの代用音であるⅣ#に移動し、下降してⅡに戻り、Ⅴ、Ⅵまでまた回して、もう一度その循環に繋ぐといったひたすらにメロディ同様に回転し続けるコード進行になっています。

ちなみにベースラインは基本的にコード構成音なので解説は省きます。

AメロではⅥ→Ⅱ→Ⅴ→Ⅰというクラシック音楽やネオクラなんかでよくあるコードの循環パターンを使用しています。ストリングスがそこに合わせていますね。Bメロで浮遊感のあるシンセサウンドでカタルシスへ向けてのブレイクを挟み、キックを一気に詰め込んでサビにボルテージを上げていきます。これで先のモチーフの繰り返しとなり、最後に金物系のサウンドで締めるといった感じで、派手な転調などはなく、規模感が大きい訳ではないのですが、よくまとめ上がった曲であると思います。実に作曲を始めて3曲目なら素晴らしいことです。

・ところで。

ただ、私が気になるのは、編曲とMix/Masteringを外注している点です。確かに後者は難しい領域ではあるので作曲の中でもミキシングとマスタリングはそれぞれに専門家がいるほどでもありますから、外注するのはよいのですが、例えば演出やシンセサウンド、ストリングスアレンジ、などなど、どこまでがクロヱさんの作った部分で、どこからが外注で完成された部分なのかというのは気になります。例えばですがアコースティックギターの打ち込みなんかは音源も打ち込み方も少し面倒です。ストリングスはエクスプレッション(強弱など)を表現するのが繊細です。つまり編曲というのは楽曲においてウェイトが高いんです。立場が違うので何とも言えませんが、大体作曲を始めると、まず好きな音を組み立てて、好きに編曲して、EQや音域処理・コンプなど処理系に悩まされ、そうなると音の構築にも悩まされ、マスタリングどころではないまま2Mixを作ってみたりして落胆するものなんですが、一応最初からやった人と仮定して、ここまでの完成度であると外注の割合が大きいのかなとも思います。勿論彼女たちはインフルエンサーであるので、下手な作品は出せないというのもありますが、出来たら、それも含めて成長過程を見て見たかったなとも思う次第です。クロヱさん自体優秀な頭脳をお持ちなので、習得は早いはずですから、そのあたりもいつかは期待していいのでしょうか。

・ともあれ。

彼女の音楽の影響がどこから来たのかは存じ上げませんが(最近のボカロ曲は私はちょっとわかりかねるので..)特にここ2作は非常にポップスとして聞きやすい楽曲でした。ホロライブもインフルエンスするマルチタレントを求めているのでしょうが、作曲という展開はタレントの中では少し珍しいなと思い、楽曲帰属の権利がどうなるのかという事とかを考えると、昨今のにじさんじで卒業が決まったメリッサ・キンレンカさんのことなども考えてしまうのですが、ともあれ、タレントが創るというのはクリエイティブという概念でそもそも始まっているYoutubeのあるべき姿かなとも思います。彼女の新たな曲が出るのをさっそく期待していたりする今日この頃、皆さまは如何お過ごしですか?



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