第二ボタンのはなし
卒業シーズンも終わりましたね。
卒業生の皆さん、おめでとうございました。
今年は新型コロナウイルスの影響で大変でしたね。
さて、おばちゃんの一人語りをしちゃおうかな。
わたしが高校2年生の時、好きな先輩がいた。
スキー部で、バンドのドラムを担当していて、目は切れ長だけど優しい目をしていて、物静かだけど情熱は持っているような先輩だった。
当時はまだラインの時代じゃないので、文化祭の時に先輩にメールアドレスを聞いてたまにメールするような間柄だった。
それ以上は発展しなかったけど。
そしてついに何も発展はないまま先輩の卒業式。
先輩は地元就職をするらしい。
会う回数は減ってしまう。とても寂しい。
付き合ってください、と言う勇気はないけど最後に第二ボタンくらいは欲しいな!
第二ボタンください、とはなんとか言えそうだ。
卒業式後、スキー部の後輩たちから祝われている先輩の姿を見つけ、落ち着いた頃合いを見て駆け寄った。
先輩、卒業おめでとうございます。
ボタン、欲しいんですけど…
と、先輩の学ランをよくよく見るとすでに第一ボタンがない。誰かにあげたのだろうか。え?なんで第一ボタン?と思いながらもう一度よく見ると第二ボタン以降は全て残っている。
そして先輩は、
いいよ、どのボタンが良い?
とわたしに聞いてきた。
なんじゃそれ〜〜〜〜〜〜選べるタイプなのかよ〜〜〜〜〜〜〜
第二ボタン欲しいって言いにくくなっちゃったじゃんか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そこはさぁ、なんか感じ取ってスッと第二ボタンくれよ〜〜〜〜〜〜
ということで、わたしは第三ボタンをもらった。
あぁ、そうだよ、第二ボタンが欲しいですって言えなかったんだよ。
そもそもわたしは最初からボタンが欲しいとしか言ってないもんなぁ。第二ボタン、とは言ってないからね。だから先輩も選ばせてくれたのかしら。なんという気遣い。前向きに考えておくわ。
不思議なもんで、先輩の学ランに付いていた第三ボタンはとってもキラキラしていたのに、いざ自分の物になって自宅でまじまじと見ても全然キラキラしていなかった。ただ高校の校章が書いてある丸いボタンだ。とりあえず棚の上に置いて、それからそのボタンを手に取って見ることはなかった。
数年後、先輩は地元の女の子と結婚したとFacebookで知った。高校は違うけど、わたしと同学年の女の子。先輩が所属するバンドの追っかけをしていた子らしい。バレンタインにはクッキーを焼いてくれた、結婚記念日にはケーキを焼いてくれたという投稿を目にした。なんて可愛らしい女の子なんだろうか。そりゃ先輩もおのろけ投稿したくなるよね。お幸せに。
あのボタンは今どこに行ったのだろうか。
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