見出し画像

大相撲新風録 髙安|佐藤祥子

大相撲_高安

髙安(茨城県土浦市出身、田子ノ浦部屋、31歳)

届かなかった悲願。恩返しの日はいつ?

大相撲春場所は、主役の座を照ノ富士に奪われた。一時は序二段まで番付を落としていた元大関照ノ富士が、3度目の賜杯を抱き、21場所ぶりに大関復帰を決める快挙を成し遂げたのだ。

12日目までは、同じく元大関の髙安が“主役”だったはず。昨年春場所で前頭に番付を落とすものの、十一月場所からは三役に復帰。両横綱不在の場所が続き、三大関の成績も安定しないなか、小結髙安が狙うは“悲願の初優勝”だった。

この春場所での髙安は、8日目に照ノ富士に圧勝し、単独トップに躍り出ていた。誰もが「初優勝の可能性大」とみていたのだが、13日目、気鋭の若隆景に黒星を喫し、14日目には小兵の翔猿に翻弄され、連敗。迎えた千秋楽、碧山との相星決戦を制すれば優勝決定巴戦の可能性があったものの、碧山にあっさりと叩かれ土が付く。手が届き掛けた初賜杯を逃した無念は、如何ばかりか――リモート取材ブースに髙安の姿はなく、その肉声は届かなかった。

思えば15歳の入門時から兄弟子・稀勢の里(元横綱 現荒磯親方)の背中を追い掛けてきた。2017年初場所、稀勢の里が悲願の初優勝を果たした瞬間、支度部屋に響き渡る声で、「よっしゃー!」と叫んだ髙安。涙を溢れさせ、弟弟子はこんな思いを吐露していた。

ここから先は

372字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…