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スターは楽し マシュー・マコナヘイ|芝山幹郎
マシュー・マコナヘイ
©Billy Bennight/ZUMA Wire/共同通信イメージズ
不敵で超然として
日本ではマシュー・マコノヒーと表記されることが多いが、この人の名前の発音は「マコナヘイ」に近い。予告篇やアカデミー賞授賞式の映像を見ながら、ちょっと耳をすましてみれば気づくはずだ。修正したほうがよいと思う。
それはさておき――。
マシュー・マコナヘイは、大股の歩みを止めない。デビュー作『バッド・チューニング』(1993)で、不思議なスケールの大きさを感じさせてから、すでに30年近くが経っている。
新作『ビーチ・バム』(2019)を見ても、マコナヘイは相変わらず悠々としている。キーウェスト近辺でふらふら漂っている詩人の役だが、肌に沁みついた「のらくら感」がなんとも楽しげだ。
詩人は柄が大きくて、いつも笑っているように見える。が、薄っぺらな感じはしない。いまどき珍しいほど「放蕩」が板についていて、「馬鹿かもしれないけど、凄い人なの」という映画のなかの台詞に、思わずうなずいてしまう。
マコナヘイは、この味わいをどこで身につけたのだろうか。
『バッド・チューニング』以外に記憶している初期作品は、マサチューセッツ州ケンブリッジの小さな映画館で見た『真実の囁き』(1996)だ。
ジョン・セイルズが撮ったこの佳篇で、マコナヘイは、主人公クリス・クーパーの父親役を演じている。といっても、40年ほど前の回想場面に、保安官助手として出てくるのだ。舞台は、メキシコ国境に近いテキサス州の田舎町。
1969年にテキサス州の小さな町に生まれたマコナヘイは、当時まだ20代半ばだった。そんな若者が、悪徳保安官を演じる練達の曲者クリス・クリストファーソンを相手に、堂々の芝居を見せていた。ただしこのあと、作品との出会いに恵まれなかったこともあって、彼の姿はいったん私の視界から消える。
マコナヘイが復活したのは、十数年後のことだ。もちろん映画には出つづけていたのだが、あまり印象に残らない。それが2010年代に生き返った。
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