矢部太郎 『飛ぶ教室』のまえがき
「人生を決めた本」というより「人生を決めたまえがき」とも言えるような、まえがきから始まる本があります。僕の人生が、そのまえがきから始まる本のようになっていたならいいなと思っています。その本はエーリヒ・ケストナーの『飛ぶ教室』(高橋健二訳、岩波書店)です。ケストナー少年文学全集の1冊である『飛ぶ教室』は何度も読み返していますが、初めて読んだのは小学生の時でした。クリスマス前のドイツの寄宿学校の少年たちや先生、近くの廃車になった車両に住むおじさんなどの心の交流が描かれて、賢さと勇気、正直であることなどお説教のようですらあるお話なのですが、心にスッと入ってくる名作でお読みになった方も多いのではないかと思います。なぜ僕の心にスッと入ってきたのか? 何度も読み返してしまうのか? とにかく、まえがきが素晴らしいんです。
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