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筒美京平 愚痴めいたお手紙 太田裕美 100周年記念企画「100年の100人」
「また逢う日まで」「魅せられて」「サザエさん」——。作曲家の筒美京平(1940~2020)は、数多の名曲、ヒット曲を残した。最も多く作品の提供を受けた女性歌手が、太田裕美氏だ。/文・太田裕美(歌手)
太田さん
お会いするたびに、あれほど緊張した方はいません。感性が研ぎ澄まされていて、こちらの心に隙があると、そこを突かれて「しっかりやりなさい」と言われそうなんです。実際に言われることはないのですが、いつもピシッとした気持ちにさせてくださる方でした。
音楽に対して真摯でプロフェッショナルで、常にアンテナを張り巡らせていました。仕事を離れてお食事をする機会も多かったのですが、世間話をしながらも必ず「最近、どんな音楽が好き? 誰の歌を聴いてるの?」という質問がありました。
私が1982年に仕事をお休みしてニューヨークで充電していた間も、お手紙をやり取りしていました。亡くなったあとに読み返していたら、先生がぼやいている手紙が見つかりました。ちょうどコンピューターサウンドが出てきた頃で、「音楽も時代が変わってきた」と、愚痴めいたことが書いてあったんです。時代の流れの中で、葛藤があった時期だったのかもしれません。そのくらい、流行に敏感でいらしたのでしょう。
筒美京平
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