霞が関コンフィデンシャル<官界インサイドレポート>
日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。日々、官公庁を取材する記者たちが官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする。
★電撃結婚の次は?
女優・菊池桃子との結婚で霞が関を驚かせた経産省の新原(にいはら)浩朗産業政策局長(昭和59年、旧通産省入省)。全世代型社会保障改革を仕切るなど公私ともに順調のようだ。
新原氏が入省直後に指導員として世話になったのは、村上世彰氏(58年)。その後出世コースである法令審査委員を経験し、20年前には産業政策局総務課で、産業再生法の立案に従事した。当時の上司が今井尚哉首相補佐官(57年)で、この頃から寝食を忘れて役所に泊まり込む姿は有名で、今井氏も新原氏の力量を認めた。
その後は順当な官僚人生だったが、菅直人首相の秘書官を務めてからコースをそれ、厚労省、内閣官房、内閣府へと転出。だが、財務省を抑える馬車馬のような働きぶりを安倍晋三首相らに評価され、18年、約5年ぶりに経産省へ産政局長として凱旋した。
2浪して東大に入学した新原氏は入省が遅く、今年9月に60歳。官僚としては次が最後のポストだろう。普通なら産政局長は次官候補の筆頭だが、安藤久佳事務次官(58年)の後任に最有力なのは、糟谷敏秀官房長(59年)。新原氏の同期だ。糟谷氏は税制を司る企業行動課長や総括審議官、産政局長を経験するなど王道を歩む。商工族の実力者、甘利明税制調査会長の受けもよい。かたや新原氏は「組織全体のマネジメントは無理」が定評だ。
だが、糟谷氏は産業革新投資機構の人事でミソもついた。官邸としては、東京五輪と同時期に“新原次官”が誕生すれば、話題になるとの計算もある。来年、財務次官就任が確実な太田充主計局長(58年、旧大蔵省)も新原氏とは事を構えようとしない。
一方、内閣府事務次官説も浮上している。内閣府次官は「官邸直轄ポスト」で、菅義偉官房長官に近い官僚が起用されることが多い。現在の山﨑重孝次官(58年、旧自治省)も総務省の次官レースから早々に外れたが、内閣官房で皇位継承を担当し、次官の座を射止めた。山口出身で首相と親交があったのに加え、「総務省に影響力を持つ菅氏の意向も働いた」(官邸筋)という。
ただ、新原氏が山𥔎氏の後任となれば、旧経済企画庁のエースで次の次官の本命とされてきた田和宏内閣府審議官(59年)の処遇が難しくなる。内閣府審議官は次官級ポストというだけでなく、日銀との折衝窓口で格は高い。個人プレーも許容されるため、「田和次官―新原審議官の方がバランスはいい」(閣僚経験者)との見方もある。
★ポスト杉田は“非警察”
杉田和博内閣官房副長官(41年、警察庁)の後任人事に、再び耳目が集まっている。もともと杉田氏は年齢と健康を理由に、皇位継承に伴う皇室行事の1つの締め括りとなる大嘗祭の終了後に勇退したいとの強い希望を持っていた。だが、その目論見に狂いが生じているという。
霞が関には「内閣の4官」という言葉があった。内閣官房副長官下にある内閣危機管理監、内閣広報官、内閣情報官、内閣総務官の「4官」だ。内閣危機管理監と内閣情報官は警察庁、内閣総務官が総務省、内閣広報官は経産省出身者の“指定席”とされてきた。
ところが14年、安倍首相の肝煎りで内閣官房に国家安全保障局(NSS)が立ち上がったことで、官邸の力関係に変化が生じる。閣僚級の局長に就いたのは、谷内正太郎元外務次官(44年、外務省)。警察庁、経産省に加え、外務省も首相官邸の一翼を担うことになったわけだ。
官邸周辺では、NSSを盤石な組織にするためには谷内体制の長期化が不可避との見方が支配的で、谷内氏の後継も、秋葉剛男外務事務次官(57年)と目されていた。ところが後任に起用されたのは、内閣情報官だった北村滋氏(55年、警察庁)。この人事は杉田氏の退任スケジュールにも影響を与えることになる。
4官プラス国家安全保障局長という内閣官房枢要の人事が動いたことで、安倍首相も杉田氏をしばらく外せなくなったのだ。一方で、北村氏の重用には「官邸の警察支配」という声も上がり、首相は杉田氏にこう告げたという。
「杉田さんの後任は警察から採りません。了承下さい」
そこで、菅官房長官が高く評価する岡崎浩巳元総務事務次官(51年、旧自治省)が、次期副長官候補に急浮上している。ただ、菅氏は自身と近い閣僚の連続辞任などで存在感の低下も指摘され、先行きは不透明だ。五輪後の来年秋とされる次期副長官人事の動向を、霞が関は目を凝らして見守っている。
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