![同級生交歓](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15407712/rectangle_large_type_2_9a3f20d6f8bbdcb67aaea0e47d64af7c.jpeg?width=1200)
同級生交歓ーー埼玉県立秩父高校(昭和58年卒)【全文公開】
人の一生を左右するのは校風か、学歴か、友人か。意外な組み合わせ、納得の顔ぶれが並ぶ“誌上同窓会”。「文藝春秋」の名物グラビア企画です。
(右から)
噺家 林家たい平
作家 吉永南央
画家 浅見貴子
映像メディア総合研究所代表 四方田浩一
東京都千代田区 「脈 0701」(2007年)が飾られた、アマン東京ボードルームにて(撮影・深野未季)
東京から特急で78分、荒川の源流を集める秩父盆地に母校埼玉県立秩父高等学校がある。1907年創立の普通高校だ。
その美術部で、私たちは出会った。
今回、浅見さんの大作の前にて、4人としては十数年ぶりに顔を合わせた。
80年入学の私たちの時代はとても自由な校風で、校則といえば「生徒らしい服装」程度。要するに、自分で考えろ、だった。
美術部はその上をゆく。
絵に飽き足らず、映画制作に熱中する部員。美大生となっても訪れる先輩たち。何より、芸大卒で空手が日課の村井先生が自由な方で、先生のアトリエでもあった美術準備室は、部外の生徒や先生方まで集い、絵の具とコーヒーの香りに満ちていた。
当時、元気すぎて校舎2階から仲間と次々飛び下り、階下の生徒を仰天させたのは田鹿くん(たい平師匠)。校内合宿に上質な寝具を持参したいかにも機屋の娘、マイペースなアザミ(他生徒は貸布団)。キャディーのバイトで真っ黒に日焼けしていたのは冷静な四方田くん。ひ弱で欠席日数が多い上に、さらに休んで美術展へ出かけた不届き者は私。こうした中に未来の兆しが見えなくもない。思えば、否定されることなく見守られ育てられた幸福な3年間だった。
その後「算盤を弾いていては出来ない仕事」を、時期を違えて各々が選ぶことになる。落語の道で真打ちとなり、マルチな活躍。絵画の道に専念し、東山魁夷記念 日経日本画大賞を受賞。映画の道で、ギャガやキネマ旬報社の要職を経て独立。小説の道で、オール讀物推理小説新人賞を受賞。今後も平坦な道ではない。けれど、あの伸びやかな、何者でなくても愛された時代が、きっと行き先を照らしてくれる。(吉永)
【編集部よりお知らせ】
文藝春秋は、皆さんの投稿を募集しています。「#みんなの文藝春秋」で、文藝春秋に掲載された記事への感想・疑問・要望、または記事(に取り上げられたテーマ)を題材としたエッセイ、コラム、小説……などをぜひお書きください。投稿形式は「文章」であれば何でもOKです。編集部が「これは面白い!」と思った記事は、無料マガジン「#みんなの文藝春秋」に掲載させていただきます。皆さんの投稿、お待ちしています!
▼月額900円で月70本以上の『文藝春秋』最新号のコンテンツや過去記事アーカイブ、オリジナル記事が読み放題!『文藝春秋digital』の購読はこちらから!
ここから先は
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/54742002/profile_a2d1bc9047964b0b316ead227fc29140.png?fit=bounds&format=jpeg&quality=85&width=330)
文藝春秋digital
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…