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井伏鱒二 松茸のつくだ煮

「本日休診」「黒い雨」など多くの名作を残した井伏鱒二(1898〜1993)は、銀行員から作家へ転じた江上剛氏の師だった。

井伏鱒二 ©文藝春秋

 先生のご自宅をお訪ねしたのは昭和47年、私が早稲田大学1年生の時だ。公衆電話から、全く面識がない先生に電話をすると、直接、出られて、「今からいらっしゃい」と言って下さった。ご自宅は豪邸ではなく平屋で、格子戸に「井伏」と書かれた名刺が表札代わりに画鋲で留められていた。尋ねると「よく盗まれるんでね」と先生はおっしゃった。通された書斎の机には翻訳中のドリトル先生の本が積まれていた。

江上剛氏 ©文藝春秋

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