山根基世 カミュの読書ノート
19歳の頃のあの苦しさは何だったんだろう。初めての東京暮らし。三畳一間の古いアパートの部屋。トタンだったのだろうか、水を流すとドタドタ音のする小さな流しで皿を洗いながら泣いていた。理由のない焦燥感に苛まれ、もうすぐ20歳だというのに何者でもない自分が惨めで。ある日、今日自分が死んでも明日からの世の中、何も変わらないことに気づいて猛然と腹が立った。じゃあ私が生きている意味って何なのよ! と。
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