小林旭回顧録 ①「裕次郎の背中」 小林旭
「その日は日活の撮影所にいて、ちょうどスタジオに向かおうとしていたところだった。俳優部の部員さんに『石原裕次郎さんが着きました』と耳打ちされて、世紀の二枚目と言われる男がどんなものか見てやろうと思ってね。
離れたところから眺めていると、車のドアが開いて、まず出てきたのは脚だ。ゴム草履を履いた素足がスッと伸びて、下には海水パンツを穿いていた。髪は坊ちゃん刈りでアロハシャツの裾を前で結んでたな。当時は『湘南の貴公子』なんて呼ばれていたらしいけど、太陽族そのままのスタイルだった。『いらっしゃいませ』って所長やみんなから出迎えられていたよ。これが噂の裕次郎かって。まあ、大したもんだった」
小林旭(84)は石原裕次郎を初めて見た日の光景をコマ送りの映像のように記憶している。
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