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藤崎彩織 ねじねじ録|#4 笑う担当編集者
デビュー小説『ふたご』が直木賞候補となり、その文筆活動にも注目が集まる「SEKAI NO OWARI」Saoriこと藤崎彩織さん。日常の様々な出来事やバンドメンバーとの交流、そして今の社会に対して思うことなどを綴ります。
Photo by Takuya Nagamine
■藤崎彩織
1986年大阪府生まれ。2010年、突如音楽シーンに現れ、圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感で「セカオワ現象」と呼ばれるほどの認知を得た4人組バンド「SEKAI NO OWARI」ではSaoriとしてピアノ演奏を担当。研ぎ澄まされた感性を最大限に生かした演奏はデビュー以来絶大な支持を得ている。初小説『ふたご』が直木賞の候補になるなど、その文筆活動にも注目が集まっている。他の著書に『読書間奏文』がある。
笑う担当編集者
新曲の締め切りに追いかけられながらエッセイの原稿を編集者に送ったら、
「題材自体は面白いのだけど、正直、今回はちょっと流して書いてしまっているかなと思いました笑」
というメールが返ってきて、思わず二度見した。
担当編集者は、私の書いた文章に対して時々辛口の意見も言ってくれる。だから内容自体は通常通りなのだけれど、気になったのは文末についている「笑」の部分。こんなにもの言いたげな「笑」のつけ方があるだろうか。まるで、
「題材一点突破の原稿で、構成を大して考えてないのが丸分かりですね。芸能人だからって、何を書いても喜ばれるとでも思ってます?」
と言いたいのが透けて見えるようだと思った。怖すぎる。担当編集者の引きつった笑顔と表情のない魚のような目、頭についている漫画みたいな怒りマークが容易に想像出来た。
彼は作家としての私の人生に併走してくれている人で、デビュー小説「ふたご」と、読書にまつわるエッセイ「読書間奏文」を一緒に作ってくれた。彼の仕事と直接関係のない、依頼された掌編やコラムなどにも毎回意見をくれている。
メールの受信フォルダには千件近いやりとりが残っているし、何度も一緒にご飯を食べたし、旅行にも行ったし、私の家族やバンドメンバーとも仲良しだ。
数千匹程のめだか達と一人で暮らしていて(やっぱり編集者なんて仕事についてる人は変わっているんだと思われるかもしれないけれど、そんな人は彼しかいない)、ことあるごとに魚の話をしている彼に分けて貰っためだかを、我が家で大切に育ててもいる。
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