川上未映子「黄色い家」
「金銭」と「赦し」
美術史を語るとき、「黄色い家」は忘れがたい。1888年、ゴッホとゴーギャンがともに暮らしたアルルの家は、陽光を浴びると黄色に染まった。「ひまわり」を始め、ゴッホは多くの名画をここで生み出すのだが、錯乱ののち自分の耳を切り落とす事件によって破綻を迎える。
いっぽう、長編小説「黄色い家」では、疑似家族を思わせる女4人が共同生活を営む。黄色は、彼女らを翻弄する金銭のメタファー。キラキラ、チャリンチャリンと金が動くたび、スリリングな疾走感に煽られてページを繰る指が止まらない。
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