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村山斉 物理学へと誘う物語
文・村山斉(物理学者)
私は子供の頃に喘息の持病があり、たびたび学校を休まざるを得ませんでした。家で過ごす間、親の本棚にあった面白そうな本を読んだのが、私と本との出会いです。
『鉄腕アトム』(手塚治虫 講談社)を手に取ったのは、小学校に上がる前のころでした。夢があり、科学への憧れを育んでくれた本です。いま思い返してみると、手塚治虫の先見性に驚かされます。例えばアトムの「善悪を見分けられる電子頭脳」などは、最近よく取り沙汰されるAIの倫理問題を何十年も先取りしている。ロボットを人間に使われる存在ではなく、対等なパートナーとして描いた視点も、非常に新鮮なものであったと思います。
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